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エッセイとショートショートと―あちこち話が飛びますが

「ブログ殺人事件」

2006-06-25 09:13:58 | ショートショート
「…あのー、もう一度聞きますけど、この写真、本当にあなたですか? 息子さんか誰かのじゃ…」
「僕です。さっきも言ったとおり」
「でも、だいぶ雰囲気違うんですけど。んーと、おなかは出てるし、頭はその…、だいぶ薄くなっていらっしゃるようだし」
「そりゃまあ、20年以上前のことですから、少しは変わっているかもしれませんね」
「少しどころじゃありません。おまけにダサ…じゃなくてごっついメガネかけてるし、全然イメージ違います」
「まあ、その頃は老眼はまだ出てなかったからね」
「ちょっとでも、ひどいと思いませんか、若い頃の写真をブログに載せるなんて」
「いやでも、ちゃんと僕は40過ぎだって言っているわけですから。それにどう見たって、ちょっといい、この写真はハタチ前後のものだってわかるでしょう」
「そりゃそうですけどぉ、今と全然違う写真を使うなんて、見る方にすれば、だまされたようなもんじゃないですか」
「全然ったって。目元なんか、少しシワが増えたとはいえ、昔と変わっていないと思うんだけどなあ」
「ひどいです。書いてることは難しくてよくわからないけど、写真見るとその、なんか素敵だなって思って、こうしてはるばるやって来たっていうのに。女の方からメールするなんて、勇気がいるもんなんですよ」
「はるばるったって、電車で2,3時間じゃないですか。それに、あれほど念を押したでしょ、『おじさんですけどいいですか』って」
「そりゃそうなんですけど、こんなに違うなんて、思いもしませんでした。少し考えればわかることでした。私もバカでした」
「いや大違いだと言うんなら謝るけど、悪気があって老けたわけじゃないんだからさ」
「当たり前です。好きで年取る人なんていません」
「でしょう? だから、イメージ違うのは仕方ない」
「そうじゃなくてぇ。年取るんなら何て言うか、カッコ良くと言うのか、素敵な紳士の方を想像していたんですけどぉ。もう、ゲンメツです」
「幻滅するのは勝手だけど、僕のその…年のとり方にまで文句言う筋合いはないんじゃない?」
「ないです。ないんですけども、何ていうのか、カッコ悪すぎます。これじゃ、ただのスケベ親父です。どうりであっさりと会ってくれると思ったわ」
「おいおいそれはひどいじゃないか。僕だって好きでこんなになっちゃったわけじゃない」
「好きでなったと言われても仕方ないと思います。何だかだらしなさ過ぎます。ハゲ頭の上にぶくぶくと太って、運動か何かやってるんですか?」
「そりゃまあ仕事も忙しいし、なかなかね。でも〈ハゲ〉は失礼でしょう」
「ハゲはハゲでしょ。事実を言って何が悪いんですか」
「いや、失礼というもんだ」
「それに、写真見ると180はありそうなのに、身長、私とあんまり変わらないじゃないですか」
「いやそれは、たまたま撮ってもらったのが妹だから、下から見上げた格好になっただけで…」
「たまたま? でもそんな写真を載せれば、見た人は背が高い人だって思うでしょう」
「これも悪気があってやったわけじゃないんだからさあ。許せる範囲だと思うけどなあ」
「許せません。本当にあなたの写真なんですか? 実物とはだいぶ違うんですけど。デジカメで細工でもしたんじゃないですか?」
「君もしつこいな。確かに僕だ、20年以上前のね」
「サギです。写真写りの一番いいのを選んだに違いありません」
「そりゃカッコ悪く写っているのよりも、カッコ良く写っているのを載せるのが普通でしょ。自分のブログなんだから」
「もういいです。こんなの、大事に持ち歩いていたのがバカらしくなりました。あげます」
「あげますったって要らないよ、自分の写真。それにね、君、さっきから僕の見た目をひどく言うけれども、自分はどうなの」
「あー、そんなこと言われるとは思わなかった。ひどい。女性の容姿を悪く言うなんて」
「だって中身のことは何も触れずに見た目のことばかり言うんだもの」
「もちろん中身も大切です。でも見た目も、やはり大切なんです。それが、それが、予想とこんなに違うなんて」
「違うってなら悪いけど、見た目、見た目って言うんなら自分の顔も見てから言うべきだよなー」
「あーまた人の容姿のこと言ったー。もー許せない。キーッ!」

(この物語は、フィクションです)


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都会の超能力者

2006-06-18 09:10:33 | エッセイ

 テレビの『キスイヤ!』だったか、人のオーラが見えるという女の子が出てきたことがある。人によって違う色だそうだが、黄色や緑のオーラが体の周りに見えるのだという。確かその子は沖縄の子だったと思うが、『トリック』に出てくる「かみぬうり」みたいに、沖縄にはそういう系統の子が多いのかもしれない。(余談だが、仲間由紀恵さんは素敵だよね)

 まあそういう人ってのはごくまれなのだとは思うが、都会だと、数としては結構いるに違いない。人混みの中、すれ違うたびにそんな人たちから「あ、この人は…」と判断されているのかと思うと、オチオチのん気に歩いてもいられないって気がする。
 これまた余談だが、最近読んだ池波正太郎の『男の作法』(新潮文庫)に、一人で旅をすると、まったく知らない人からの扱いで、自分がどういう人間であるかがわかる、といったことが書かれていた。なかなかの観察である。(これはいい本だから、是非!)

 確かに“カンの強い子”というのはいるもので、それはちょっと目がつり上がった感じの、そう、奈良美智が描くような女の子は、そういうタイプだ。
 かくいう僕だって皆さんだって、オーラまでは見えなくとも、これまでの経験から、会う人がどういう人かっていうのは、だいたいのところわかる。そうでないとやって行けないわけだが、それはそれで“超能力”と言えないこともない。
 それと、年取った人たちってのは経験豊富だから、若い者の性格なんか、すぐにわかってしまうのかもしれない。そう考えると、ちと怖いような気もする。

 もちろん人を観る、という以外にも超能力はあるわけで、自分としてはどちらかというと予知的なものの方があるような気がするが、これはコジツケでどうにでもなるものだから。
 一つ言えるのは、感覚を研ぎ澄ましておけば、“未来からの声”も聞けるのではないかということ。夢みたいな話だけど。
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世界のお祭り W杯

2006-06-11 09:12:56 | サッカー
 開会式・・・オリンピックの時もそうだが、無事に式典が行なわれているのを見ると、何だかホロッとしてしまう。少なくともそこだけは、平穏だから。ジョルジーニョやブランなど、懐かしい面々が出てきたのも嬉しい。彼らのおかげで過去の大会は盛り上がったのだし、また今回も、名もないスタッフやボランティアの尽力があっただろうと思う。
 開幕戦「ドイツ対コスタリカ」・・・2得点のクローゼ(体が重そう)やワンチョペも素晴らしいが、ドイツ主将のシュナイダーをほめたい。相変わらず精力的に動き回って、多くのチャンスを作り出していたから。

 翌日に再放送はあるし、録画することもできるのだが、やはり試合はナマで見たい。ナマで見る/見ないで結果が変わるわけではないが、“その場”に居たいのだ。
 でも考えてみれば、真夜中でもナマで見られるだけいいか。時差が逆なら、昼間に試合が行なわれるわけだから、そう毎日は見られない。
 ところで、ピッチやベンチに居る人間は当然試合に影響を与えるだろうが、スタンドで、あるいはテレビで応援する人間はどこまで試合に影響を及ぼすのだろうか、とよく考える。遠く離れてはいても、それはまったくのゼロではないだろう。極端な話、日本でテレビ応援するのが1人もいないとしたら、選手の士気は落ちてしまうに違いない。僕らの応援、ppmあるいはppbのオーダーかもしれないが、影響はあるだろう。

 もひとつところで、世界で一番面白いスポーツはサッカーだろうか。個人的には野球が一番知的なスポーツだと思っているが、ルールが単純なだけ、サッカーの方がわかりやすくて人気があるのだろう。さらに面白いスポーツだって、考えれば出来るかもしれない。
 話は飛躍する。ワールドカップは地球上の話だが、どこかの星でも、同じような世界大会が開かれているのだろうか。手足が2本ずつ、というのは生物として合理的な本数だから、サッカーみたいな競技は、他の惑星でも行なわれている/いた可能性は高い。
 アニメやゲームでありそうな話だが、異星人同士の対決というのもあっていい。ただし、体格や体力の差は、日本人と外国人のそれとは、比較にならないほど大きいだろう。たとえばネコみたいな生物から進化した異星人なら、ものすごく俊敏だろうし。その前に、会場の重力をどうするか、という問題もある。

 …現実に戻ろう。日本はあすオーストラリアと。勝ち負けはともかく、「ほー、日本というのはいいサッカーをする」あるいは「日本人はただの頭でっかちではないんだ」と世界に思わせれば。テレビの前で、ppbながら応援したい。
 そうそう、W杯を2年ごとに、という案もあるそうだが、反対! こんな楽しいお祭り、4年に1度がちょうどいい。

PS.サッカーを題材に面白半分で書いたショートショートを去年載せていますので、良かったらどうぞ。
http://blog.goo.ne.jp/shinob_2005/d/20050213
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若い子と“デート”

2006-06-04 09:05:42 | 女の子
 たまには色めいた話を。

 仕事で知り合った20代の女の子(丸の内のOL)と、ひょんなことから、どっか飲み行くか、という話になった(人生、こんなこともあっていいか)。別の日に待ち合わせをして、汐留の『和食えん』へ。ここはシティセンタービル42階にあって、夜景がとてもきれいな所だ。
http://r.gnavi.co.jp/g620603/
 先輩と後輩、といった感じでもちろん仕事の話も多かったが、連休中にどこそこへ行っただの、こんなクイズ知っているかだの、他愛のない話も。若い女の子と2人で食事なんて久しぶりだったけど、難しい話も軽い話もできる子だったので、非常に話しやすかった(男女関係なく、こうでなくちゃいけない)。ただこちらも男だから、それなりのことは考えたが、特にナニするというわけでもなく、また行こうか、ということで終わった。
 そのあとも仕事で何回か電話やメールのやりとりをしており、こちらもまんざらではないし、あちらもその時だけでコリゴリ、というわけでもなさそうだ。まあうまく使われているのかもしれないが、それはそれでいい。
 ただ、ずいぶん年下とは言え、異性の話し相手というのは貴重だ。男同士ではなかなか出てこない発想というのもあるだろうし、何より、世界が拡がるのはいい。色恋に発展するかどうかはともかく、こういう関係は大事にしたい。

 話は変わるが、この間からブログアドバンスというのを始めた。どのページが読まれているのかがわかるのだが、新規の記事より、むしろ過去の記事の方が多く読まれているのは意外であった。
 その中で、去年の6月26日に書いた「里中李生氏について」は、毎日のように読まれている。どうやら、検索結果で上位にランクされているからのようで、たとえばGoogleで「里中李生」と検索すると、15番目くらいに出てくる。氏のホームページは別格としても、本の宣伝サイトがたくさんヒットする中、一個人のブログが上位に位置するというのは、すごいことらしい(ちょっとだけ自慢しておきます。もちろん皆さんのおかげですが)。
http://blog.goo.ne.jp/shinob_2005/m/200506
 里中氏には、男の生き方、そして女の子との付き合い方も、本を通じて教わっており、今回の“デート”でも心構えとさせてもらっている。

 今は次の店を考えているところだが、何か進展があれば、この場でまた紹介することになるかも。何もなければ、そのままポシャッたと思って下さい。
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