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エッセイとショートショートと―あちこち話が飛びますが

「メシア再臨」

2008-06-29 09:06:29 | ショートショート
 メシア・・・救世主ともいう。この世を救うため、天から遣わされし者のことである。
 そのメシアが、21世紀の日本、そう、この国に再び遣わされたのだ。

 それは大都会の中心部に近い静かな公園。初夏の爽やかな日差しの下、木々の緑が美しく生い茂り、メシアにふさわしい再臨場所であった。
 降り立ったメシア、まずは近くを歩いてみることにした。小鳥たちがさえずり、そよぐ風が頬に触れて心地よい。
 ふと、青い物が目に入った。木の陰に隠れるように、四角く形作られている。公園の中にしては、やや場違いな感じのするものであった。
 近付いて入り口らしき所から中を覗くと、ツンとすえた臭いとともに、ヒゲ面の男がのっそりと体をもたげてきた。
「何か用ですかい?」
「いや、この青いのは何かと思いまして」
「あ? わしの家じゃよ。あんた、わしらのこと知らんのか?」
「どうしてこんな家に住んでいるのですか…」

 以下のやりとりは省略するが、ホームレスというものを初めて目にするメシアは、その境遇にいたく心を痛められた。そして彼らの生活の足しになるよう、あちこちのゴミ置き場から、あるいはコンビニの裏から、使えそうな器具やら賞味期限切れ弁当やらを、こっそりまたは店の人に事情を話したりして、運び込んでくることになったのである。
 メシア自身も宿無し状態であるから、自然、そのまま同じ所に寝起きすることになった。

 さらにメシアは、公園内はもちろん、街中至る所に落ちているゴミを目にしては、またも心を痛めるのであった。
 そこで袋を担いでは、街中の片隅にまで入り込んで、あるいは川辺に降りて、紙クズからプラスチックゴミ、缶やらPETボトルやらを、拾い集めるのであった。大きな袋はすぐ一杯になり、それは延々と終わることなく続いたのである。

 かくして、来る日も来る日も、ホームレスたちのために駆けずり回り、ゴミ拾いのために這い回るメシアであった。
 地上に降り立ってからもう何年も経つのに、マスコミに取り上げられることはもちろん、表の世界に出てくることさえないのであった。
 ただ、接した人間たちはみな、その穏やかで慈悲深い人柄には一様に心を奪われたという。


 Copyright(c) shinob_2005

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ナンセンス スタヂアム 4

2008-06-22 09:12:28 | 言葉/ナンセンス
 
 カタい話が続いたんで、ばかばかしい言葉あそびを。

・紫外線、市街戦

・宇宙線 艦ヤマト

・霊界通信教育

・武者士(ムサシ)

・I scream ”ice cream!”(僕は「アイスクリーム!」と叫ぶ)

・パクパク、ピクピク、プクプク、ペコペコ、ポコポコ

・アラブのアブラ、イラクのイクラ

・楢崎正ゴー ルキーパー

・稲尾和久井映見城美枝子門真人見絹枝

・アグネス・チャンちゃん、ジャック・タチたち、ハルウララら

・トラ・トラ・トラ! スマトラトラ

 

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もしも時間が止まったら

2008-06-15 08:53:20 | 科学/考察
 
 これまたとっくに終わってしまったんだけど、ドラマ『ロス:タイム:ライフ』を見ながら、も一つ別のことを考えていた。それは、もし時間が止まったら、ということ。
 ドラマの中では時間は止まるわけではなく(ピストルの弾やナイフは、じりじりと主人公の方へ向かって来ている)、そこが主題でもないのだが、ヤボを承知でちょっとまとめておく。

 まずは、時間が止まるということと、動きが止まるということを分けて考えないといけない。
 宇宙人に光線を浴びせられて「か、体が動かない!」というような場合、それはいわば“マクロ的”に止まっているだけであって、心臓なり意識なりは動いているので、時間が止まっているわけではない。
 時間が止まって、血液の流れから細胞の動きから、完全に止まってしまったとしよう。すると、そこで固定されているわけだから、仮に柔らかい所を触ったとしても、弾力性はなくカチカチのはずである。いや、分子の動きがないわけだから、熱というものが発生しない。すると、体全体が絶対零度になってしまうことになる。
 絶対零度になった物質がどうなるのかってことはよくわからないんだけれど、おそらく、体積が最小になってしまうに違いない。また原子核の周りを回っている電子が止まったら、原子自体、つぶれてしまうような気もする。(ミクロの世界では時間は存在しない、という話もあるようだが)

 と、ここまで考えて、わかる人にはわかると思うが、その、止まってから絶対零度になるまでの〈時間〉というものが必要になってくる。つまり、冷えてしまって凍りつくか崩れ落ちるかの〈時間〉自体が止まっているのだから、そうなるヒマもないってことにもなる。
 もう一つ。たとえば自分の方は動けて(つまり時間が動いているわけだが)、その「止まった時間」内にある誰かの体なら体を触ろうとする時、どこから時間が止まっていてどこから動いているのかの境目をつけることも難しいということ。
 触った時、それが一瞬であっても、触られた方は「触られた時間」というものが必要になる。だから、触られた方は時間が「止まっている」ということにはならなくなる。

 そういうふうに考えてくると、時間の止まっている物とそうでない物とは、同じ時空間(次元)に存在し得ないんじゃないかってことになる。簡単に言うと、一瞬を切り取って「止まって」いる状態の写真と、現実世界との差、といったものになるのだろう。
 SFでよくあるように、周りの人間だけ止まっていて自分だけ動ける、というような場合、周りの空気はどうなっているんだろう、という問題もある。空気も動かないと、自分が身動きとれないことになる。とすると、止まっている人の鼻の中の空気は動いているのか止まっているのか、ってことになる。

 僕らの生きている世界の時間は、おそらく連続的に動いているのだろうとは思うが、どこかで止まっているのかもしれない。しかしそれを見極められるのは別次元からでないと無理だろうから、僕らからすれば動き続けている、としか言いようがない。
 もし時間が止まったとしたら、時間ゼロなので、存在自体なくなってしまうようにも思う。
 とは言いつつも、時間が止まった場合、光はどのように見えるのだろうか、重力の影響はどうなるのだろうか、という素朴な疑問もある。まあいずれにせよ、それを〈観察〉するための〈時間〉が必要なのだが。

 これは昔から気になっていた命題。広瀬正という人の『タイムマシンのつくり方』という本も参考になるから、こういうの好きな人は是非。特に「化石の街」は。
 あもう一つ。時間とは直接関係はないけれど、『神様のパズル』という映画もなかなか面白かった。

 今回は、また一段と小難しくなってしまいました。
 

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比較の問題③(米大統領選ほか)

2008-06-08 08:49:32 | 時事
 
 アメリカ大統領選の民主党候補に、オバマ氏が選ばれた。初の黒人大統領の誕生に一歩近付いたわけだが、アメリカ社会がそれを“許す”ほど成熟しているかどうか。若者に人気のオバマ氏ながら、トップはやはり白人でないと、というふうな雰囲気もまだまだあるに違いない。おそらく僅差で、マケイン氏が勝つんじゃないかと思う。

 ところで、オバマ氏とマケイン氏、人種の違いや考えの違いはもちろんあるんだろうけれど、民主党と共和党の違い、というがイマイチよくわからない。
 きちんとした比較一覧表がどっかにあるのだろうし、ことはそう単純ではないだろうが、個人的には次のようなイメージがある。
   民主党   共和党
   革 新      保 守
   穏 健      強 硬
   反 戦      好 戦
   銃反対      銃容認
   中絶容認     中絶反対
   プロテスタント  カトリック
   若年層      高年層
   都 会      地 方
 候補者個人の人種だとか徴兵歴だとかも大事だろうけれど、政権を任せるのだから、それぞれの政党の主義主張もわかるようにしとかないと。いや、アメリカの人は重々わかっているのかもしれないが。

 スピード社の水着だと好記録が出るということで、話題になっている。でもこれ、着けてる選手には当然ながらメーカー名は知らされているはず。
 つまり、「スピード社の水着だ」という、暗示効果は考慮されているんだろうか。薬の世界では、プラセボ効果の確認といって、本物の薬剤と偽薬(ただのデンプンなど)とを、それぞれわからないようにして患者に投与するという試験がある。「痛みが収まった」など、偽薬でも効果のある場合があるから、その分を差し引かないと、本物の薬剤の効果はわからない。
 たとえば実力の拮抗した2人の選手がいたとして、A選手には「スピード社の水着です」と言って他社の水着を着せ、B選手には「他社の水着です」と言ってスピード社の水着を着せたとする。暗示の効果で、A選手が勝ってしまうかもしれない。
 だから嘘でもいいから、日本人競泳選手には全員「スピード社の水着です」と言ってやれば、それだけでいい記録が出るのかも。(もちろん冗談)

 ちょっと前に、消費者金融の会社が「金利下げました」とか宣伝していたけれど、下げる前の金利を言わないと、どれくらい下がったんだかわからない。40%が18%になったのと、20%が18%になったのとでは、意味合いが全然違うのだし。
 とはいえ、銀行預金の利率がコンマ数%という時代に、18%なんて高すぎるよなー、といつも思ってしまう。まあ利用することはないんだけど。

 大統領選に話を戻すと、赤やら青やら、プラカードやら風船やら派手で賑やかだ。アメリカにとって、4年に1度のお祭りみたいなものなんだろう。
 それにしても、現職なのに、ブッシュ氏の影の薄いこと。
  

 〔写真は「毎日jp」より〕

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憲法について

2008-06-01 10:21:42 | エッセイ
 
 格差社会ということで、憲法第25条第1項〈生存権〉というのが、最近よく話題になる。
 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」というもの。憲法記念日はとっくに過ぎてしまったが、きょうは憲法について、ちょっと書いてみたい。

 その第2項には「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とある。僕は薬関係の仕事についているから、ここに書かれている国の義務(つまり管理)の下、国民の健康的な生活のために医薬品の製造販売をしている、ということになる。まあこれは、医療機関や薬局、各種福祉施設で働く人たちも同じわけだが。
 この第25条の下には医療法とか薬事法とか食品衛生法とかがぶら下がっていて、その下にまた何とかいう規則など、だんだんと細かくなっていくのだが、やはり大元は憲法である。

 各規則は守らなければならない、それは法律に書いてあるから。その法律は守らなければならない、それは憲法に書いてあるから。ではその憲法を守らなければならないことは、憲法第98条に「国の最高法規」と書いておくしかない。何かを規定しようとすれば、上位の法規が要る。そうすると延々と上位法規が必要になってくるわけで、キリがなくなってしまう。
 これはまあ、「いくら完全な概念であっても、その概念の中だけで考える限り、完全とは言えない」というゲーデルの〈不完全性定理〉にも似た考え方になるのだが…ちょっと小難しくなってしまった。
 だから、とりあえず憲法というものを一番上ということで文書上は留めておかざるを得ない。(大元、ということでまず制定した、という方が正確なのだが)

 で、憲法の上を考えると、それはもう〈イメージ〉しかないだろう。この場合、公布当時の米国・GHQの「日本はこうあってほしい」という思惑であり、当時の日本政府の「日本はこうありたい」という意思であるに違いない。
 だから、たとえば第9条をどう解釈するか、どうするのか、といったところで意見が分かれるのは、当たり前と言えば当たり前の話。
 もっと言うと、ここにこう書いてあるから、だけではなく、前後のつながりとか全体的なニュアンスとか、そういったことも考えないと、正確なところは摑めないんじゃないかと思う。まあこれは、憲法に限らないんだけれど。

 また話が逸れる。旧約聖書の冒頭に「はじめに言葉ありき」とあるけれども、その前にはやはり「言葉を発したい」とか「光があってほしい」という、想いというのか〈イメージ〉があったはず。意思のないところには言葉も発生しないはずだから。
 そうそう、その昔、仕事を早く切り上げて家に帰ろう、という「GHQ(Go home quickly)運動」というのがあったそうだが、それと米国・GHQとの関係が、イマイチよくわからない。ただのモジリなのか。

 さて、年収200万以下で生活せざるを得ない人たちにとって、上記条文のような権利が満たされているかどうか、というのは、切実な問題であろう。それこそ費用さえあれば、「憲法違反だ!」と裁判を起こすことになるのかもしれない。
 

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