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エッセイとショートショートと―あちこち話が飛びますが

だってそう思うんだもん

2008-09-28 09:03:52 | エッセイ
 
 精神医学やら脳科学の世界では有名な話のようだが、こういうのがあるそうだ。
 同じような犯罪を繰り返す男の動作がぎこちなかったことから脳を調べたら、大きな腫瘍が見つかった。それを取り除いたところ、犯罪性癖が消えてなくなったため、男は無罪になったとのこと。彼が起こしたように見えた犯罪は、彼の脳腫瘍が起こしていたということだ。

 もし仮に、動作がぎこちなくなるほど脳腫瘍が大きくなく、見逃されていたとすれば、男は、彼自身の罪として厳罰に処せられたことだろう。
 腫瘍という、外科的な異常がない場合はどうだろう。たとえば脳内物質の代謝異常によって、反社会的あるいは非倫理的な行動を起こすことだってあるだろう。その場合、彼はやはり無罪となり得るのか。
 これはまあ極端な例であるが、個人の性癖・言動において、どこまでが本人の責任なのか、というのはなかなか線引きが難しいのではないかと思う。
 死刑になることは間違いないようだが、かのオウム真理教の教祖だって、脳に異常でもあるのかもしれない。

 よく、「あいつまたあんなこと言ってる」とか「どうしていつもそういう風に物事を考えるかねえ」とかいう場面は、誰しも経験あると思う。でもでも、頭の所有者であるその人がそう思うんだから、それはその人の勝手。
 もちろん反社会的な考えは改めてもらいたいものだが、脳外科手術でもして性格を変えるのも変な話だし、人の考え方を変えるっていうのは、何ていうか、不遜な行為のような気がする。
 生物の多様性、というと大袈裟になってしまうが、突拍子もない考えも、世の中ないといけないように思う。それはおそらく、神様も受け入れてくれる〈許容範囲〉であるに違いない。

 今回の何とかいう国土交通大臣の“失言”騒ぎにしても、本人がそう思うんだから仕方ない。まあ大臣になったことで気が大きくなってしまったのか、言わなくてもいいことまで言ってしまったようだが。
 ただ、発言は全体の流れの中で判断しないといけないようにも思う。その部分だけクローズアップするとおかしな意見でも、全体を通せば筋の通った話、というのもあるはずだから。逆に言うと、どんな話でも、ある一部を取り出せば奇妙な意見にもなり得るのだし。
 来年始まる裁判員制度でも、こういったことを考慮に入れないといけないだろう。

 本当に増えているのかよくわからないのだが、秋葉原のような事件を起こす人間というのが増えているとすれば、おそらく、テレビやモバイルなど、虚の世界(画面)にずっと接しているのが良くないように思っている。少なくとも、平面ばかり眺めていると、脳が感じるべき立体感、つまり現実感を希薄にするのではないかと。
 この辺り、どうなんだろう。もし他の惑星の進化した生物がいたとしたら、聞いてみたいものだ。テレ(tele)ビジョン(vision)、つまり遠くに映像を飛ばす技術というのは文明が進めばおそらく必ず出てくるものだし、それは普通、平面上に表示されるものだから。

 ちょっと話が飛びすぎましたが、虫の音聞きながらこんなこと考えていました。まさか僕の脳には腫瘍はないと思いますが。
 

〔写真は、富士山頂からの夕焼け〕

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ストレスに効く眼球運動

2008-09-21 09:31:45 | こころ
 
 僕も時々あるんだけど、イヤなことが頭から離れなくて、寝つきが悪かったり、せっかくの休日を鬱々と過ごしてしまったりすることがある。ものすごく損をしたようで、週明けにも気分的な疲れを引きずることになる。
 きょう話をするのは〈眼球運動〉といって、そういう不快な気分やストレス、さらにはPTSD(心的外傷後ストレス障害)にも効くというもの。武藤清栄という臨床心理士の通信教育テキスト『職場のメンタルヘルス・マネジメントコース』(日本能率協会)から引用させてもらう。

〔Aさん:不快な気持ちの人  Bさん:眼球運動の補助者〕
 1.Aさんは目をつぶり不快な体験を思い出す(ツラいだろうけど、その時の状況・気分をできるだけリアルに)。数十秒その気分を思い出したあと、パッと目を開ける。
 2.BさんはAさんの顔の前30cmのところに人差し指を立てておき、左右に40cmの幅で平行に動かす。Aさんはその指を、顔を動かさないように目でしっかり追う。この20往復(後半10往復は少々速めに)を1セットとし、数セット行なう。
 3.1セット終わるたびに、Aさんは目をつぶって深呼吸をゆっくりと5回ほど行なう。なお、後のセットではさらに指を速く動かすが、Aさんがそれをしっかり追えるほど効果は高い。
 4.Aさんは両手を組んで思いきり頭の上に持っていき、伸びをして終わる。

 なお、これは2人で行なうものだが、効果は落ちるものの、1人でもできるそうだ。

 そもそも、なぜこれでストレスが解消できるかと言うと…。
 ストレスを抱えている人、自分を見失っている人は、目がうつろというか視線が定まらないというか、今の目の前の現実に向き合えていない。「目は心の鏡」と言うように、この運動をすることで視線を安定させ、情緒を司る前頭葉を落ち着かせる、ということのようだ。

 ところで、悪いイメージがなくなったとしても現状が変わるわけではない、と思う人もいるかもしれない。それはその通りだろう。でも、いいイメージになれば、現状を打開するための知恵も生まれやすくなるというもの。少なくとも、要らないイメージに支配されている時間が少なくなる分、自分らしく快適に過ごす時間が増えるのは間違いのないところ。
 ヤな上司や取引先の顔や声がこびりついてたまらない方、はたまた昔のトラウマに悩まされている方、簡単にできますので、良かったらやってみて下さい。
 もちろん、重い症状の方は、専門医にかかられることをお勧めします。中には、この眼球運動で治療してくれるお医者さんもいるかもしれません。

 ストレスを解消する方法は、呼吸法とか他にもたっくさんありますが、あまり知られていないようですので、紹介しておきます。

〔写真は、ご存知『20世紀少年』より。感じが何となくこの眼球運動に似ているもので〕

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「落ちるケータイ」

2008-09-14 09:29:02 | ショートショート
 海と橋の見える、とあるマンションの最上階。下の階で5世帯分に当たる面積を、ここでは1人の男が占有している。いわばセレブ。バルコニーも広々ととられており、観葉植物がほどよく配置されている。
 その一角に、木目も鮮やかな円形のテーブルとロッキングチェア。そして今、そこに住んでいる男がうたた寝をしている。テーブルの上には、シルバーのケータイ。

 マナーモードになっていたケータイが、唸り始めた。
「ンー、ンー、ンー、ンー、…」
 しかし熟睡している男の意識には上らない。
「ンー、ンー、ンー、ンー、…」

 やがて、その振動によりテーブルからずり落ちたケータイは、ちょうど男の膝に当たってバルコニーの縁に。
「ンー、ンー、ンー、ンー、…」
 それでも鳴り続けるケータイは、縁から徐々に動いていってついには下の方へ。落ちている間も鳴り続ける。
「ンー、ンー、ンー、ンー、…」

 幸い、真下の街路樹で一度バウンドしたあと中2階にあるパン屋のサンシェードに引っ掛かるが、しばらくするとそこからも落ちてすぐ下の歩道橋へ。
「ンー、ンー、ンー、ンー、…」
 人ごみの中、哀れケータイは見向きもされずに通行人の蹴飛ばされるところとなり、ちょうど下を走り抜けたトラック荷台のコンテナの上へと。
「ンー、ンー、ンー、ンー、…」

 ケータイはトラックに乗ったまま港に到着し、そのままコンテナごと貨物船へ。デッキの上にコンテナ、そのまた上に小さなケータイ。
「ンー、ンー、ンー、ンー、…」
 出港した船は、太平洋を南へ進む。震えることをやめないケータイは、コンテナの上を滑り、デッキの上を滑り、やがて海の中へ。
「ンー、ンー、ンー、ンー、…」
 ちょうどそこは、世界一深いと言われる海溝。深く深く沈みながらも、ケータイは依然として鳴ることをやめようとはしない。
「ンー、ンー、ンー、ンー、…」


 ついでながら、あなたの頭の中でも、きっと鳴り続けている、はず。
「ンー、ンー、ンー、ンー、…」


 Copyright(c) shinob_2005

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見・伸・着・息

2008-09-07 11:27:05 | エッセイ
 
 カンフーの一種に、音楽に合わせて体を動かす〈リズミック・カンフー〉というのがあって、その特徴というかツボというか、4つのポイントがあるそうだ。

 見・・・視線を定めることで精神を安定させ、集中力を養う。(確かに、目がキョロキョロしてたりどんよりしてたら変だよね)
 伸・・・体を自然に伸ばし美しい姿勢を身につける。(武道の達人は、決まって姿勢がいいものだ)
 着・・・安定した下半身と動きを目指す。(浮ついてなく、どっしりと)
 息・・・呼吸をトレーニングする。(吐く息をゆっくりと長く)

 これ見てると、座禅とか瞑想にも通ずるところがあるように思う。目を半眼にし、姿勢を正し、臍下丹田に氣を鎮め、ゆっくりとした呼吸をする、という。精神統一というか心身の健康のやり方はいろいろあれど、基本となるものは同じなのではないかって気がする。
 そういった方面の本やビデオはたくさん出ているし、興味のある方はやってみるといい。僕もこういうの大好きで、気功や合気道も少しカジっているし、たまに瞑想なんかも。気分が落ち着かない時なんか、いいと思う。

 ところで、リズミック・カンフーとは直接関係ないけれど、〈眼球運動〉という、ストレスやPTSD(心的外傷後ストレス障害)にもいいという方法を教わりました。資料がどっかにあったと思いますので、また紹介したいと思います。
 

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