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エッセイとショートショートと―あちこち話が飛びますが

ヘッドハンターに会う

2009-05-31 08:57:37 | エッセイ
 自慢めいて聞こえるかもしれない。とあるヘッドハントからお誘いがあり、興味半分もあって会ってみた、という話。

 ある日、聞いたこともないような会社から手紙。何回かこういう手紙はもらったことはあるが、封筒にしろ宛名書き(手書きだった)にしろ、高級感を感じさせるもの。
 ネットで調べたところ、まともなヘッドハンティング会社で、話もそう悪くなさそうなので、駅前の喫茶店でちょっと会ってみることにした。ただし、おそらくお断わりしますよ、という前提で。

 その話というのは、或るメーカーの役員候補に、というもの。どこでどう調べたのか分からないけど、そんな話が自分に来ること自体が不思議だったので、そのワケを知りたいというのが、会ってみようと思った最大の理由。
 聞いてみると、どうも同業他社のOBなんかから(それも複数)、僕の名前が出たらしい。業界の仕事は少しは手掛けたことはあるが、さほど目立ったことやったわけでもなく、これは意外だった。(どこで誰に見られているか、分からないものだ)

 さて相手のヘッドハンターだが、思ったよりも若く、40代前半。ごく普通のサラリーマンにしか見えないものの、言葉を選んで話すなど、慎重そうではあった。おべんちゃらを使うなどの、いわゆる「営業タイプ」でもなかった。

 まあ僕自身、バリバリ仕事するようなタイプでもないし、非常に重い話だったし(メーカー名はもちろん伏せたまま)、やはり断わらざるを得なかった。それは相手も分かったようで、特に強く勧めることもなく、世間話みたいな話をして終わった次第。
 ただ後日お断わりのメールを入れたのに、返事も何もなし。もらったのは名刺だけだし、ヘタに返信なんかすると、秘密裏に動いている人間としては何かマズいものがあるのだろう。そう言えば、怖い感じはもちろんなかったが、用心深そうなところは確かにあった。(向こうがこちらを見ている分、こちらも相手を見ている。当たり前だけど)

 今回会ったことで、僕の情報はまたヘッドハントの世界に流れることだろう。「彼は大したことない」などと。よってお誘いの手紙も今後は減るかもしれないが、それはそれで。
 でも良かったのは、自分の将来を考えるキッカケにはなったこと。

 …こういう話は会社の人間には当然、話をすることはできないものだ。とは言っても少々自慢したい気持ちもあって、ここに書き連ねているところ。
 ところで裁判員に選ばれた人も、ブログで思いを吐き出したい場合もあるだろう。それって、守秘義務の点から、許されることなのかなあ。

 

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「天国と地獄」

2009-05-24 08:26:10 | ショートショート
 強毒性の、いわゆる新型インフルエンザが猛威を振るい、人類が絶滅の危機に瀕していた時のこと。

 国民は政府の怠慢に文句を言い、
 政府は官僚たちの意見のせいにし、
 官僚は専門家の見解に難癖を付け、
 専門家は国際機関の対応に不満を漏らし、
 その機関は発生国の初動のまずさを指摘し、
 当該国は当該国で、国民の衛生意識の低さを嘆き、
 …と、誰もが他人のせいにしてばかりいるのだった。

 またその間も、
 マスコミは騒ぎ立て、
 商売人はうまいこと儲け、
 詐欺のグループは新たな騙しの手口を考え出していくのであった。

 そんな中、ごくごくわずかな、ほんのひと握りの人たちだけは、他人のせいにすることなく、不平不満も言わず思わず、そこまで長らえてこれたこと、また、便利で平和な時代に生きることができたことに感謝しつつ、黄泉の世界へと旅立ったのである。
 そして彼らだけが、天国に召されたのだという。

 ほんに、天国の門をくぐるのは、ラクダが針の穴を通るがごとし…。


 Copyright(c) shinob_2005

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『シャキーン!』はスゴい

2009-05-17 08:19:54 | エッセイ
 
 朝何となく目にしたことはあるけど、連休中(5月4日)に特集をやっていたので見たら、これがまた面白くて。NHK教育でやっている『シャキーン!』である。

 朝7時から15分間、数分ずつのコーナーが続いていくもの。指や目のエクササイズに始まり、小学生活のちょっとしたトラブルを描いた「おべとも学園」、丸太に書かれた同じ文章を兄弟がそれぞれ区切って、違う意味にしてしまう「どこ切る兄弟」などなど(たとえば「映画館できました」と「エイが噛んできました」)。
 あと、ものうげなマリオネットが、ギターを弾きながら世の中の不条理というか、きちんとした正解などないということを歌う「答えはない」も脱力感あって、いい。
 突飛な考えには多少慣れているつもりだが、思いもよらないものが次々と出てきて、その発想の豊富さに驚いている。子供はもちろん、大人が見ても面白いと思うので、是非! 

 そんな早く起きられない、という人には、水曜夜7時25分から『シャキーン! ザ・ナイト』(通称「夜シャキ」)というのもやっているから、まずはこちらからでも。(もちろん録画しても可)
 「子供番組だとナメてたら、ヤケドするぜ!」とナイトジュモクさんが言うけれど、確かにそう。
 小学1年生で習う漢字80字を全部使った歌なんかもあるから、小学校低学年あたりを対象にしているようだが、なかなかバカにできない。そうそうたるクリエイターたちが、知恵を絞っているに違いない。

 特に気になっているのが「るるるの歌」といって、「はえる」とか「こまる」とか、「る」で終わる言葉だけで歌にしているコーナー。かわいそうなオオカミ男が出てくるシュールなもので、一度見たら忘れられなくなるはず。あるいはYouTubeでも見られるのかもしれない。
 受信料払うかどうかは別として、こんなに面白いものを見ないテはない。暗いニュースを見るより、朝はこんな番組の方がいいんじゃないかと思う。(ウチは今、全員で見ています)
 なお、教育テレビと言えば『ピタゴラスイッチ』が有名だが、これがどちらかというと理系なのに対し、『シャキーン!』は文系と言える。ひょっとしたら、後世に残る子供番組になるんじゃないかと、ひそかに思っているところ。それくらいスゴいんで。

 も一つ。TBS系で月曜夜11時半からやっている『飛び出せ!科学くん』というのもなかなか。ココリコの田中君としょこたん(中川翔子)が出ており、地味ながら、科学好きにはたまらないものがある。こちらも良かったら。
 

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新宮・太地・湯の峰温泉(続き)

2009-05-10 08:47:58 | 
 
 太地から新宮に戻る電車の中でまたもその小学生たちに遭遇し、「うわっ、またおった!」とビックリされた次第。普通列車が1時間にせいぜい1本で、しかも2両編成のせいもある。(電車やバスが頻繁に出ているわけではないので、初めての方はご注意を)

 さて新宮からバスに揺られて熊野本宮大社へ。1時間ほど山に入るのだが、右手に見える熊野川はゆったりとしたもの。本宮もそれほど山奥という感じはしなかったが、歴史を感じさせる、いい雰囲気の場所だった。速玉大社もそうだが「日本第一大霊験所」とかで、しっかりお願い(というよりお礼)をしておいた。

 2日目の宿はその近くの湯の峰温泉。ちょうどいいバスがなかったため歩くことにしたのだが、普通の道なりに行くとえらく大回りになるようで、その辺で聞いて、間の大日山を越える「大日越(だいにちごえ)」というのをやった。
 足には多少自信はあるのでこれに挑戦したのだが、いや大変だった。先が読めないせいもあるが、上りは肉体的にも精神的にもキツかった。いい天気が続いていたので足元悪くなかったことと、ケモノやハチに遭遇しなかったのは幸いだったが、峠にたどり着いた時はホントにホッとした。
 そうそう、この道は〈熊野古道〉の一つらしい。ドキドキワクワクするってんで、駅前に「クマの鼓動」なんていうポスターがあったけど、確かにドキドキしてしまった。途中誰にも会わなかったし、あまり人は使わないのかもしれない。
 それでも、道のり2.2kmで小一時間はかかると言われていたところ、40分で湯の峰に着けた。(どんなもんだい、と思っていたら、あとで古傷のヒザが痛くなってしまって。イテテ…)

 湯の峰は日本最古の温泉らしく、水路沿いに旅館・民宿が10数件並ぶ、静かなところ。その中でも建物が古くてシブそうだった「くらや」という民宿へ。
 汗かいたあとの温泉そしてビールの嬉しかったこと。あとシカ肉のお刺身もウマかった。なお温泉は、多少硫黄のにおいがし、ふわふわした白い湯の華もたくさん。
 この「くらや」さん、チョーヤ梅酒のCM(工藤夕貴)で以前使われたことがあるそうで、ほとんど貸切り状態だったこともあり、そのCMで使われた部屋に泊まることができた。確かに、窓からの景色は風情のあるものだった。(これだから旅はやめられない)

 翌日はバスや電車を乗り継ぎ、ひたすら自宅へ。途中新宮駅で「くじら弁当」を昼用に、「めはり寿司」を土産用に買って、と。いずれも、とてもおいしかった。なお「くじら弁当」は、予約しといた方が無難、かも。

 和歌山は、ほかにも潮岬や白浜、それに高野山と、行ってみたい所がまだまだあるので、いつかまた。

 〔写真は、ヒイヒイ言いながら登った大日越の道〕

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新宮・太地・湯の峰温泉

2009-05-03 08:51:58 | 
 
 29日からの休みを利用して、和歌山へひとり旅。新宮(しんぐう)、太地(たいじ)、湯の峰温泉と回ってきました。
 紀勢本線も多気(たき)を過ぎると、熊野の山々と熊野灘。天気も良く、海・山・空ともに青々してて、ずいぶん癒されたのでした。(この熊野の山は、あとでヒイヒイ言いながら歩くことになる)

 特にファンというわけではないけれど、亡くなった中上健次氏の故郷が新宮。その中上氏もよく行っていたという「やきとり三味」へ。串盛合せや鶏の刺身にビールで2000円弱。
 きれいなおカミさんや気のいい兄さんから、中上氏は編集者などとよく来ていて、はやり豪快な人だったことを教えてもらった。

 少し飲み足りないのでブラブラしてたら、どこかのお寺の前にしゃれたクラブがあり(たしか「山」という名前)、焼酎のお湯割りなど。カウンター越しに、そこの姉さんと「ひとり旅はいいよー」なんて話をしていた。
 その姉さんに新宮みやげは何がいいか尋ねたところ、「香梅堂」という菓子処の〈鈴焼〉を勧められ、翌日買って帰ったらこれがまたウマくて。

 泊まったビジネスホテル(サンシャイン)の近くには銭湯があり、もの凄く久しぶりに銭湯に入ることもできた。

 次の日は早くから市内観光。ヤタガラス(日本サッカー協会のシンボルでもある)で有名な熊野速玉大社、2200年前にこの地にやって来たという中国人を祀った徐福公園と回ったあと、捕鯨で有名な太地へ。
 40代以上の人なら懐かしいだろうと思うけど、鯨の竜田揚げというのが昔の給食にあって、今はもうほとんど食べられない。それが本場・太地にはあるというので、行ったわけ。
 「くじら家」という店で、その竜田揚げ定食を。1780円と少々値は張ったが、ウマかったし、懐かしかった。

 その近くの「くじらの博物館」へも。なかなか見応えがあったし、クジラショーも楽しませてもらった。ジャンプなんかはよくあるけれど、クジラの鼻先に人間が足を乗せ、そのまま水上を滑走するというのは、僕は初めて見た。子供みたいに喜んでしまった。
 何て言うのか、インストラクターの兄さん姉さんが、凛々しくてカッコ良かったし。

 なお、いずれも初めての土地なので、ご存知『るるぶ/南紀 伊勢 志摩』を持って行った。「やきとり三味」も「くじら家」も、それで調べていたもの。

 そうそう、新宮から太地への電車の中で、遠足行きらしい地元の小学生がウジャッと乗り込んできて、「どこ行くの?」なんて話をしていたら、「おっちゃんイケメンや」「そや、イケメンや」と言われてしまった。子供は無邪気でいいな、と思いつつ「はいはい、ありがとね」と。    【つづく】

 〔写真は「くじら家」前の南国情緒あふれる道路〕

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