Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

野分前の雑草天国

2013-09-17 14:02:44 | その他
日曜の朝に当直夜勤が明けた時間には、台風18号の前触れみたいな熱帯性スコールが叩きつけるように襲ってきた。座間への帰宅ルートとして好んでいる伊勢原の田舎道は道路の冠水がひどい個所があることを思い出して、藤沢の奥地、用田方面に向かう平塚・厚木線の国道129号沿いの戸田橋信号へ向かうことにした。ところが二車線がきれいに舗装整備された新道の行く手をパトカーが阻んでいて、冠水のために迂回せよという規制を行っている。しょうがないから上落合という倉庫エリアを抜けようと思ったら、雨はますます鬱憤を晴らすような降り方になってワイパーが効かない状態になってきた。一日のある一瞬で一カ月の雨量になるという、集中豪雨地域のことを思い出した。視界がましな通い慣れている国道246へ戻ることにした。246もアップダウンの起伏が激しい悪路面が多く所々が水溜りを作っている。

しかし愛甲石田の駅を過ぎる頃に雨は小降りになってきた。午後にはYさんの西麻布スタジオにて新型スピーカーの補足修正バージョンを聞いて品評する約束をしてしまっている。難儀な一日を迎えそうな予感がしていたが、東の空は晴れ間さえ見せている。六本木、明治屋の中で合流する桜井さんとの約束も重なっているので、変更はしないで向かうことに決める。台風18号の上陸は翌16日という予報のせいか?日曜日の都心も人気は少ない。重く湿った空気は台風が近いことを予感させるが、晴れ渡った青空が嘘みたいだ。Yさんのスピーカーはガラスのサブバッフルが1枚追加されていた。片方だけで合計4枚だ。左右ペアで8枚という威容を誇っている。音の発信源になるユニットが格納されたガラス板と同じ面積のガラス板を放射ウイングの効果にて音場を深めて、拡大を図っている様子である。箱というものがスピーカーの病巣でガンだということでYさんは一貫して箱を駆逐してきた。箱に代わるものとしてガラスが採用されたのだが、4枚をセットして、それを屏風のように立て懸けるリスニング環境を可能にする住宅はそうそうあるものではない。20畳以上の空間でフィット可能なフォルムだ。ここが市販計画を意図しているYさんの最大ネックだと思う。そのことはともかくとして4枚効果の印象はどうだろうか?アナログの超ベテラン桜井さんもオーディオの既製品では有数に散財を重ねた人である。その桜井さんにとって自作系の趣味人とはコンタクトの機会はなかなかない。そうした人の忌憚ない意見も聞いてみたいということで同行してもらった。

持参のCD、ユーチューブみたいなデジタル音源をランダムにかけまくる1時間半になった。桜井さんの評では古い時代のボーカル再生音のリアリティが特によかったとのことだった。コモドア時代だろうか。ビリー・ホリディが声に艶も溜も兼備していた1940年代から50年代初頭の歌に感心したみたいだった。自分はやはり持参比較のできるサージ・チャロフという酔っ払いのバリトンサックス吹きの入魂の1曲「WHATS NEW」(1955年「BOSTON BLOW-UP」)に感激する。サイドメンのピアノ弾きレイ・サンティッシはやはりボストン派で後年はバークリー音大の教師になってしまうが、ドナルド・バードの「ビーコンヒルズ」でもWASP的珠玉ピアノを聞かせている。平凡スピーカーで聞くとこの人のセンシビティは軟弱に輪郭を失ってしまうことが多い。Yさんの新作スピーカーではトニー・ベネットがビル・エバンスと共演しているアルバムもそうだが、ピアノの再現性とボーカル再生が特筆的によくなってきた。その分、失われるものもあって、4枚増強ガラスのせいで音場の奥ゆきが広がっていく反面、高域のクラッシュシンバルのざわめくような浮遊感はなくなって奥に位置している。因みに3枚に分離すると、全ての音が腰高になって喧騒になってくる。よい解決案があれば誰もオーディオで苦労することはないのだが。Yさんの苦労もしばらくは時間がかかりそうである。



台風到来の二日前に小田急線線路の北に位置した雑草の川べり道を歩いた。なぎ倒される前の萱系の草、すすき等を新規購入の安ものコンデジNIKON P310に納めてみた。レンズがF1.8というだけが長所だが、あのコンデジの古い入魂作ペンタックス、オプティオ750Zの甘みを湛えた画像にはやっぱり及ばないものだと痛感する。

八王子の昭和風

2013-09-10 21:59:39 | その他
そろそろ秋めいてきて部屋の明かりを一部だけ整頓しそこなっていることが気になっていた。秋空と夜勤なき連休の解放感に誘われて散歩のついでに明かりのグッズもついでに調達することにした。至近には町田の東急ハンズがあるが、その整頓した画一性が気にくわない。そこでもう少し奥地の八王子で目的を果たすことにした。八王子には街中に小河さんという八王子の生字引みたいな友人がいる。

その小河さんに照明器具の光量を調節するコントローラと220ボルトの電球を在庫している小売店がないか?と電話する。答えはすぐ返ってきた。横山町に「エジソン商会」があって、そこなら在庫があるという。それではお茶でもして、ヨドバシカメラで最新デジタルトレンドの視察、それから目的の品物を調達する。時間が余ったら旧ムラウチ電気とハードオフの複合リユースショップでも覗くことで八王子へと電車で向かう。小河さんと相棒の三好君とは駅の北口に近い昭和遺風を色濃く残している「布屋ベーカリー」という小さなパン屋さんの奥にあるカフェパーラーでしばし懇談することになった。

大横町の織物工場跡地で瀟洒なイギリスアンティックショップを経営していた塩見さんの消息を訊いてみた。塩見さんは、無店舗のまま骨董商をしていて青山の骨董通りのアンティックフェアー風定期イベントを仕切っていて健在との報を聞いて安心する。オーディオもアンティックの業界もこの10年という歳月はまるで津波にあったように総崩れ状態だ。F3000等の自動車レースなどにも接触していて、水陸両用六輪車のインポーターまでしていたクルママニアの小河さんの口から、若者の自動車離れ現象を肯定するような意見や自動車の減少を歓迎するエコロジカルな転向意識を垣間見るのは以外だった。そういえばこの両名のグループでF3クラスのマカオグランプリにツアーしたのは、はるかに15年以上前のことである。クライアントのオートテックが発行するタブロイド新聞を毎月編集していた時期があった。ラッツエンバーガー・スコット組のBMW Mー3が超スピードでマンダリンホテルの前を周回するときの騒然とした光景、わき立つ歓声や台湾人雑誌記者との着順応答を巡る会話をふと思い出す。

「布屋」でお茶して「エジソン商会」で目的物を買ってから、古めな気風から抜けきれない写真館や金物道具店の残っている横山町の商店街を浅川にかかる大和田橋までそぞろ歩く。大和田橋を越えれば夕暮れ散策最後の目的地はすぐである。南多摩高校付近の甲州街道の沿道は、あと二カ月もしたら銀杏並木が黄色く色づく時期がやってくる。大和田橋から仰いだ西の空には秋の雲が流れている。浅川の川面に跳ねるオイカワの銀鱗を眺めていたら、今日の昭和風散歩がいいものに思える気分になっていた。

桜井邸の晩夏

2013-09-04 18:15:35 | その他
夜勤明けの休日になった日曜日も猛暑が続いて閉口するが、いつもつるんでいる友人を誘って荻窪のドクター桜井邸をジャズ訪問する。四季に一回の訪問である。この日は乗り継ぎのタイミングよく、湘南新宿ライン、総武線三鷹行き電車を利用して荻窪へは横浜から1時間の所要で到着する。旧荻窪団地(現シャレール荻窪)のある荻窪一丁目付近は緑地保存もなされていて古い東京の木陰のありがたさを切実に体感できる地域だ。遊歩道の木立ではまだ衰えることがない「ミンミン蝉」が大合唱している。

桜井邸では素晴らしく香りの浮き立つ中国製プレミアムジャスミン茶や信州直火焙煎コーヒー、ケーキ等のもてなしを受けて日暮れ時までの3時間を合流した3名の友とジャズタイムで洒落こむ。お目当てはレス・ブラウン楽団のシンガーとして、ドリス・デイのあとを継いだルーシー・アン・ポークが1曲だけ歌っている貴重なDVD画像を拝見させてもらうこと。そしてJBLパラゴンによる特別濃い口な再生音でハリー・アレンのニューヨークテーマ集めいたバラードや躍進途上にあるバーバラ・リカの歌ものCDを、近くにセットしたイギリスKEFの小型スピーカー、LS-50と聴き比べするという贅沢も混じっている。

確か前回の訪問から数カ月を経ているが、パラゴン周りのアメリカンテイスト演出の徹底はシンプルに変貌を遂げている。例のバディー・リー少年人形は各種コスチュームに彩られて5体が揃ったようである。マイクに向かう黒人シンガーの人形に隣接する横目づかいのやんちゃなバディー・リー人形の佇まいは、還暦を過ぎてもオーディオなどのやんちゃを繰り返すドクター桜井氏の児戯的な初心を象徴しているみたいで、よい趣味的和みを部屋にもたらしているようだ。アナログプレーヤーの現役品が8台、CDプレーヤーが4台、スピーカーが5ペアー、いつもながらモノの物量氾濫に幻惑されてしまう部屋にいて、パラゴンと現代収録CDという絶妙の相性をもたらすマッチング、モノラルLPとUREI-811、同軸2ウエイスピカーの強面なジャズ胆力、この二系統の再生音を自分の知る限りにおける東京近在最高水準の音として氏のオーディオ営為を支持している。

9月を迎えてまだまだこの猛暑に呪われるのかなと嘆じながら北側の窓辺にひっそりと間歇的に花を咲かせる芙蓉の花びらを眺めて、コーヒーを入れる。専用庭では紫式部の実がすっかり、色づいてきた。これも悪戯半分に丹波テイストの壺に挿してみることにした。夏と秋が混在するような時期だが、1988年に出版された中川一政、最晩年の岩彩画集をめくる。蝉、金魚、百合、柿、魚など、小さな歌心を感じるものがテーマである。好きなように赴くままの筆致が躍動して弾けている。これも児戯だなと思う。


桜井邸の毒を緩和するように、フィッシャー製アンプ、バイタボックス12インチといういつものプアな主観主義路線で珍しくもアコーディオンジャズをBGMとする。richard galliano のfrench touch(1998DREYFUS JAZZ)、このアルバムにはジャン・フランソア・ジェニクラークという現代人の心拍に近い硬質な魅了音を放つベース奏者がリズムを守っている。今日の空みたいな晩夏を流れ行く雲のような柔らかな音色のアコーディオンとのマッチングが素敵だ。ビル・エバンスでおなじみの「you must believe in spring」でも聞き流していたら台風の余波によるにわか雨が襲ってきた。