Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

桜井邸の晩夏

2013-09-04 18:15:35 | その他
夜勤明けの休日になった日曜日も猛暑が続いて閉口するが、いつもつるんでいる友人を誘って荻窪のドクター桜井邸をジャズ訪問する。四季に一回の訪問である。この日は乗り継ぎのタイミングよく、湘南新宿ライン、総武線三鷹行き電車を利用して荻窪へは横浜から1時間の所要で到着する。旧荻窪団地(現シャレール荻窪)のある荻窪一丁目付近は緑地保存もなされていて古い東京の木陰のありがたさを切実に体感できる地域だ。遊歩道の木立ではまだ衰えることがない「ミンミン蝉」が大合唱している。

桜井邸では素晴らしく香りの浮き立つ中国製プレミアムジャスミン茶や信州直火焙煎コーヒー、ケーキ等のもてなしを受けて日暮れ時までの3時間を合流した3名の友とジャズタイムで洒落こむ。お目当てはレス・ブラウン楽団のシンガーとして、ドリス・デイのあとを継いだルーシー・アン・ポークが1曲だけ歌っている貴重なDVD画像を拝見させてもらうこと。そしてJBLパラゴンによる特別濃い口な再生音でハリー・アレンのニューヨークテーマ集めいたバラードや躍進途上にあるバーバラ・リカの歌ものCDを、近くにセットしたイギリスKEFの小型スピーカー、LS-50と聴き比べするという贅沢も混じっている。

確か前回の訪問から数カ月を経ているが、パラゴン周りのアメリカンテイスト演出の徹底はシンプルに変貌を遂げている。例のバディー・リー少年人形は各種コスチュームに彩られて5体が揃ったようである。マイクに向かう黒人シンガーの人形に隣接する横目づかいのやんちゃなバディー・リー人形の佇まいは、還暦を過ぎてもオーディオなどのやんちゃを繰り返すドクター桜井氏の児戯的な初心を象徴しているみたいで、よい趣味的和みを部屋にもたらしているようだ。アナログプレーヤーの現役品が8台、CDプレーヤーが4台、スピーカーが5ペアー、いつもながらモノの物量氾濫に幻惑されてしまう部屋にいて、パラゴンと現代収録CDという絶妙の相性をもたらすマッチング、モノラルLPとUREI-811、同軸2ウエイスピカーの強面なジャズ胆力、この二系統の再生音を自分の知る限りにおける東京近在最高水準の音として氏のオーディオ営為を支持している。

9月を迎えてまだまだこの猛暑に呪われるのかなと嘆じながら北側の窓辺にひっそりと間歇的に花を咲かせる芙蓉の花びらを眺めて、コーヒーを入れる。専用庭では紫式部の実がすっかり、色づいてきた。これも悪戯半分に丹波テイストの壺に挿してみることにした。夏と秋が混在するような時期だが、1988年に出版された中川一政、最晩年の岩彩画集をめくる。蝉、金魚、百合、柿、魚など、小さな歌心を感じるものがテーマである。好きなように赴くままの筆致が躍動して弾けている。これも児戯だなと思う。


桜井邸の毒を緩和するように、フィッシャー製アンプ、バイタボックス12インチといういつものプアな主観主義路線で珍しくもアコーディオンジャズをBGMとする。richard galliano のfrench touch(1998DREYFUS JAZZ)、このアルバムにはジャン・フランソア・ジェニクラークという現代人の心拍に近い硬質な魅了音を放つベース奏者がリズムを守っている。今日の空みたいな晩夏を流れ行く雲のような柔らかな音色のアコーディオンとのマッチングが素敵だ。ビル・エバンスでおなじみの「you must believe in spring」でも聞き流していたら台風の余波によるにわか雨が襲ってきた。

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