Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

手紙魔

2012-07-02 14:39:10 | その他
7月を迎えると近くの薮の方からコジュケイ、キジバト、ホトトギスのさえずりが聞こえてくる。時々は俳句歳時記で「老鶯」と詠われる夏鶯の鳴き声等も混じってくる。
これまでは中国産のカゴ抜け鳥として野鳥の分類には属していないガビチョウの即興めいたオートマティズム風囀りが、春から初夏をめぐる山里近辺の天下だったが、梅雨空を這うようにつたわってくる在来鳥の個性や哀感を含んだ音調に耳を傾けるているとようやく日本らしい夏が来たことを実感する。

先日、街にあるありふれたリサイクルショップで見つけたクロだか焦げ茶だか釉薬の識別がつかいない湯呑茶碗でしばらく煎茶を楽しませてもらう。高台は土をみせたままで風情がいいが、ロクロ挽きのダイナミズムの盛り上がりに欠けるアマチュア陶芸品の類だがなぜか惹かれるものがある。

これを見ていると口辺にかかる釉薬のぼかし気味な垂れ具合、信楽土独特な石ハゼの突起を含んだ野趣もそこそこに溢れていて蕎麦ちょことしても使えそうだと店員がつけたいい加減な二百円価格を思い出してほくそえむ。
そうこうして雨模様から晴天に反転する時間を楽しんでいたら、一通の手紙がポストに投げ込まれた。
90歳になる母親からの手紙で、いつもながらの鉛筆書きで段落も改行も粗雑な手紙だが、ものへの反応や反射が自分に酷似していることを今更ながら痛感する内容だ。

7月は関東圏の習俗では新盆が控えている。母は退屈な施設の生活から少しでも自由になりたいらしい。新盆の頃に息子の住む家に1泊外出したいらしい。

「この前は可愛い水羊羹をいただきました。おいしかったです。タオルケットもありがとう。毎晩それで寝ています。
私は7月にお盆をしたいからね、新ちゃんの都合をみて1泊外出頼んでください。ナマスも作ってあげたいし、ひろこさんとおじいさん(亡妻と亡父のこと)のお盆飾りを作るから茄子と胡瓜を100円ずつ買っておいてください。笹の葉に飾る物を二枝分一生懸命に作ってます。可愛いものができそうで、泊まれたら笹の葉っぱは自分で取りに行きます。全食無しの外出先食事で申し込んでね。またトーストパンにコーヒー、スイカ、目玉焼きが食べたいです。ミッチャンが来てくれてね。またケンカして帰っていきました。そのときに切手を2枚くれたので、手紙を出しました。。。。。。」
繰言の多い母親だけど手紙を読む限り言葉への感覚はまだ失っていないみたいで安堵する。
しかし、母がこのまま施設で老いを重ねるうちに自分の老境も加速することを考えると安堵と不安が紙一重であることを痛感せざるをえない心境になってしまう。

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