Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

母の気晴らし

2011-06-26 14:04:34 | その他
母親が入っている施設へ面会に出かける。老いて体の機能などに
不備がある人が収容されていて、寝たきりの人、骨折や脳梗塞の
後遺症でクルマ椅子を余儀なくされている人を多く見かける中で
、母親は健常者に近いレベルの健康体である。骨折した足のリハ
ビリを習慣にする他は認知障害もないから、病者集団への心理的
適応は厄介なものがあるようだ。さる高名な評論家が何か不具合
があってこうした老人健康関連施設へ入所した時の噂話を耳にし
たことがあった。老人集団生活を統率する若い福祉看護者にかか
れば高名な評論家もただの一般人に匿名化した「おじいちゃん」
の「だれそれさん」だ。

この「おじいちやん」がどんなにワグナーの音楽に通暁していて
ヘレニズム文化に精通していてもそんなことはおかまいなし。
本日の娯楽の合唱課題曲が「夕焼け小焼け」だったら、「おじい
ちゃん、皆と一緒に歌いましよ」と参加を強いられるのが、こう
した施設の暮らしである。抵抗しても始まらない、仕方なく同調
して小声で歌ったふりでもするしかないだろう。その高名な評論
家がどのように適応したのかは、さだかでないが、わが身だって
若いつもりでいるが、相貌は「おじいちゃん」だ。近未来にこの
ような事例に出会うことも必至で集団生活への恐怖心も覚える。
施設に入所したおかげでベニー・グリーンやピート・マリンベルニ
のピアノが日常生活から剥奪されたらどうしょう!そんな悩みを
抱えこむ自分のような団塊老人もきっと増えてゆく時代だと思う。

母親は施設の退屈しのぎに、なにか文化指導時間に絵手紙風の
趣味をもち始めたらしい。絵心がなくても心があれば絵は書ける
ものと激励する。
面会室で「アヤメ」の時候にイメージした絵筆を訥々と走らせて
いる。あいさつ文の相手が誰に向けたのか訊ねたら、答えは体の
変調に苦しむ孫娘に向けた練習の文面と云っている。
89歳の施設生活はまだまだ続きそうな気配である。


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