Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

花も団子もある一万歩

2013-04-01 22:05:15 | その他
月が変わった。4月1日はトーシローさんと急に約束して中目黒駅で落ち合うことになった。三日続いた寒気は少し和らいできた。ちょうどよい散歩日和になっている。都心の桜名所として定着した目黒川の散り際の桜を見物しながら、ついでに川沿いの路地にある新潮流な道具屋でも冷やかそうという目論見で一致する。こちらは買う目的などないのだが、ただ退屈しないで歩ければそれでよい。目黒区・青葉台にあたる昔の付近の面影を知るものとしては驚きの変貌だ。カフェ、ブティック、雑貨、ビストロ、等の店がやたらに増えている。人の流れはすぐ上手にある代官山とつながって独自な商圏を作ったことが久しぶりの訪問でわかった。横浜・トーシローさんの行動半径の広がりに驚く。この付近はアンティーク家具、新物雑貨、衣類などがフュージョンしている販売店が多いが、そこの若い店主の何人かとも顔見知りのようだ。世代を超えた皮製バッグ等趣味雑貨についての受け答えが楽しそうである。

桜のせいか、川べりのカフェは平日なのに満員状態の店が多い。トーシローさんがたまに寄る店に案内された。ここも甘味とケーキ、ヘルシーフード類がフュージョンした一軒家カフェだ。店名を「AOYA NEXTDOOR」という。昭和30年代風の老朽化した山の手小市民風の家をあまり改装しないで使っている。店舗前に設置された看板も面白い。書体はほのぼのと幼稚だ。このような一軒家改造カフェの類は京都などでは腐るほどあるが、あちらは培って重ねてきた伝統意識の肌理を隅々まで細かく磨きこんだ店舗が多い。こちらはそのまま現代の東京的ウルトラハイパー要素が接木されているせいか、どこかざっくりと荒れたレトロ感とイノセンスが重なっている。京都系が無意識を疎外させているのに対して、東京系一軒家は意識を疎外させていることに気づく人はいるだろうか?
さしずめ前商売時にPA音響で訪問していた有名女子大学の学園祭の廊下がそのまま屋外へ引越ししてきた感がしてどこかその間抜け感の温度に癒される 。トーシローさんは「わらび餅」当方は「生麩餡団子」とコーヒーというこの店風珍妙な組み合わせを楽しむ。

ここを基点に菅刈陸橋、松見坂、駒場、代沢、太子堂、までの記憶チップにマーカーされているポイントを今度はこちらの案内で歩き回る。トーシローさんは松見坂近くの格調あふれる、骨董洋家具店の店内に吊る下がった鋳物と厚ガラスの組み合わさった照明具に足止めされた。イギリスあたりの工場で使っていた古いものだ。値段も立派だが、大型業務器具フェチのトーシローさんのことだからこれを本気で自室へ持ち込むという行動に出るのかもしれない。かって足繁く通った東北菜館の消息を骨董店にて尋ねてみたが、どうやら1年前くらいに閉店してしまったようだ。狭い店だったが、ここは青菜の空芯菜をシンプルに炒めたものと、水餃子が美味かった。残念である。

代沢にある「月光堂」は健在ながら店は靴や衣類のガラクタ品がいっぱいで荒れている。ジャズCDの棚も無くなってしまった。昔、このお店でアトランティックの黒ラベル時代の好きなテナー奏者ウオーン・マッシュのモノラルLPを掘り出した嬉しい思い出がある。それでも埃だらけの棚に埋没してあったデミタスカップに目も手も動いてしまう。白磁に淡い空色の化粧掛けの色模様が素晴らしい。その上には乱舞する草花が細密に描かれている。多用しないピンクや黄のワンポイントな色乗せがこのカップに麗しい華やぎを与えている。皿裏の銘はコバルトの英文字で「FUNNY 1960」とある。これを500円で買って更に太子堂付近に進んできたら、茶沢通りの少し手前に小さな骨董店がある。

いつも休みの店だ。珍しく開いていて店主がクルマから荷物を降ろしているから覗かせていただく。天井のレールに小さなヨーロッパ製色絵ガラスのシェードがぶら下っていて目をひく。ベージュや青の配色が珍しい。模様から推測すると北欧のランプかもしれない。値段を質問したら5000円との答えが返ってきた。金具の銅製ステイだけでも3000円の価値はする。6畳間の音楽王国になっている部屋に付いていた蛍光灯が嫌でしょうがない。これをぶら下げると部屋は暗くなって機能性がなくなってしまう。ジレンマだ。しかし在庫のあるアンティークシェードを三つくらい点灯できるように工事でもすれば音楽王国の欠点は一挙に解決する。今度は小型フェチの自分が足止めにあってしまった。下北沢付近の骨董値段設定ならば、18000円は間違いなくするであろう品質である。これを買うことに決めて新聞紙で包んでもらう。

これまでの歩行はすでに一万歩を超えている。疲れを癒そうと近くのサミットストアへトーシローさんを案内する。ここは横浜へ戻る途中にクルマを止めてよく夕餉の材料を買ったスーパーだ。怪訝顔のトーシローさんをパン屋の休憩コーナーに案内する。お目当て品があった。揚げもので身体には悪いが、歩いているからいいだろうということでコーヒーとこれを奢る。揚げパンの名称は「黒糖かりんとう饅頭」だ。カラリとしたサクサク感と小豆餡の絡み具合が、トーシローさんには受けること間違いないと踏んでいた。図星だ。甘党のトーシローさんは勢いにのってもう一つ食べたくなったらしい。レジへ飛んで行った。歩きにも飽きた。本日の臨時散歩の圧巻は掘り出し品のこのシェードということにして、バスで程近い夕刻の下北沢を訪問することになった。

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