Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

走る蒼

2011-08-05 10:26:32 | その他
先日、茶会記オーナーの福地氏より案内された四谷・荒木町の一軒家カフェ「百舌の蔵」で横目で眺めた伊万里の新旧混じった器を思いだす。それらの日本的で精密な呉須の絵柄はどれも立派だが、なにかが足りないなと心の中で反芻していた。そこで数年まえに新宿の大京町の一角で更地となっていた場所で自分が掘り起こした江戸前期の呉須の破片を取り出して眺めてみる。
何度も繰り返した江戸市中の大火、戦時の空襲、などを経て何時の間に地中に埋没した、染付け初期の食器類の破片である。ビルの再建築が始まるまでの一年が掘り出すチャンスだった。
かっては新宿御苑に隣接する地域で相応な格というべきか、録を食む武家の屋敷が連なっていた町だ。地面を重機で均した跡地を眺めていたら妙な閃きがおこった。
話は逸れるが渋谷の桜丘町時代によくエスプレッソを飲みに寄っていたジャズ喫茶「メアリージェーン」があった。ここのF氏も新旧の陶磁器が好きでよく色々な骨董話をしたものだ。
新橋の浜離宮に隣接する再開発が始まった頃、メアリーの常連客がバイトで発掘仕事をしていたらしい。全く知らない人だがそのエリアに該当する加賀の前田家屋敷付近から出土した数個の磁器のカケラを見せてもらい羨ましいと思ったことがある。呉須の色味も控え目な茶器だった。そんな見聞があってから新宿の一角で同じような破片を自分が掘り出すなんてことは、夢にも思っていなかった。

これは伊万里系の好きな人に好きなだけあげて、残った破片は隠匿するお宝として仕舞ってある。「百舌の蔵」にある伊万里手の多くと、我が破片の違いがなんとなく分った。それは絵筆の走りの違いといったものだろう。立派な格調を誇る鍋島や伊万里手の尺皿と我が破片の茶碗、高台の裾に長方形に繰り返す手描きになる悪戯っぽい図柄、この破調ぶりは江戸というよりも桃山に近い躍動である。いつも陶器をみて感ずることだが、時代を遡れば遡るほど、巧緻を超えたスピードや躍動にめぐり合えることだ。

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1 コメント

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此れは素晴らしい! (山下亭)
2011-08-06 07:24:42
私も一度は、この様な陶磁器の破片を掘り出す機会が廻って来ない物かと夢見て居ります。

骨董市などで良く眼にするのですが、何故かお金を出して買う気は無いのです。

やはりこの様なものは、自分の手で土の中から拾いたい物ですね。
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