Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

雨のLP

2011-11-20 10:54:49 | JAZZ
終日の雨降り、それも時雨というより嵐みたいに山で跳ね返った風が吹き荒れる。

トーレンスのベルトプレーヤーTD-150をまもなく持ち主のHさんへ返す関係で、自分が持っていた西独ELAC社のMIRA CHORDというオートマティックプレーヤーを物置から取り出す。これはアームも角パイプで二十才台に一時在籍したことのある輸入代理店T社が扱っていた西独DUAL製と同じようなパーツ構成だ。軽いのに堅牢で集約性が高い。デザインを眺めていると同じドイツのVW製のカラベルという商用ワゴンや初期のゴルフみたいな見切りのよい質実剛健なモダニズムと同じ香りが漂ってくるから不思議である。テスターでチェックするとLRのチャンネルともに信号は生きているのに、どこか接触がおかしいみたいだ。こうした器物から醸すヌメリとか乾きの喩えを具象的に了解しあえる関係で思い浮かぶ友人と言えばHさんしかいない。Hさんに安いアメリカ製のバリレラ針をつけて調整してもらおうとクルマで持ち込む。その場では即の調整は無理だが、12月18日に行うささやかなイベントまでに間に合うようにお願いして夜半に「サイゼリア」の空疎空間でポツリポツリ貧窮オーディ界の世情分析を交換する。
帰宅後はクリスマスに関連したジャズ曲を物色する。その途中で現れた10インチ(25センチLP)盤に寄り道を強いられる曲が潜んでいたのだ。ディック・ヘイムズの英国デッカ盤である。いつもは30cmLPの「Little White Lies」にぞっこんでその中の「この春はちょっぴり遅いよ」が最高曲なのだが、これに匹敵する曲である。昔、ソニー・ロリンズやマーサ・ティルトンのキャピトル録音で好きになった「How there Things Grolla Mocca」というこの懐古的なメロディーがアイルランドの歌だとは勉強不足で知らなかった。どこかアメリカのフォークソング風叙情を感じていたものだから、てっきりアメリカ産と思い込んでいた。12インチのディック・ヘイムズを鳴らすことでは、水を得た魚のようなデッカの顔ナシコーナー型スピーカーのことだ。
デッカの由緒正しい50年代中期のサウンドを甘く豊かに再生してくれる。同じクリスマス曲探しに寄り道したアメリカコロンビア盤のミッシェル・ルグラン10インチも悪くはないが、音の寄り添い具合がやっぱり違うことに気がつく。しばらくデッカの古LPを捜したいが、足元をみると趣味にさけない形而下の現実が待っている。