Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

金木犀と秋の午前

2011-10-04 10:42:59 | JAZZ
伊勢原市の大きな行事の一つで名高い道灌祭りに出店したがあまりに少ない売り上げに落胆する。後期のつげ義春に登場する石売りや骨董カメラ売りに臨時変身して失敗するマンガ家主人公の話をわが身に重ねて苦笑する。こういう時には夕食を小田急グループが駅近くで展開する「箱根そば」などで食べると惨めさが相乗化するので、妹夫婦と伊勢原で一、二を争う美味い蕎麦店「越峠(「こえど」と読む)」に向かう。煮穴子丼と蕎麦のセットで1200円!ここは野菜、魚貝類の天麩羅類の揚げ方がとても美味いが本日は煮穴子に魅せられてしまう。妹の方は低価格で数をこなせるオンナものの靴下、ストール類をたくさん仕入れた目論見があたった。新規開店の宣伝効果もあったしごきげんな様子。食事を終えて勘定払いに暗算が脳裡をよぎる。二日目の売り上げ9700円から食事代金1200円を引くと残りは8500円だ。割り勘代を支払おうとする矢先に売り上げの多かった妹夫婦が、臨時出店を誘った労いで奢ると言い出し困惑するも従うことにして立ちっぱなしの二日間がようやく終わった。

一夜明けた翌日も秋晴れの天気になった。窓を開け放って乾いた空気を入れると、庭の西側にある3メートル以上はある金木犀の大木方向から花の芳香が風に乗ってくる。
菜園の脇で風にそよいでいるコスモスをお気に入りの灰釉花瓶に差し替える。紫式部の実もそろそろ終わりそう。金田湾に近い山里で夢窯を主宰する黒田千里さんが作った信楽タイプの砧壷、これには紫式部が場所を得ること限りない風情である。卓上を掃除して活け替えした地面の草木を愛でていたらついでに音楽も欲しくなった。

チェット・ベイカーが1962年にイタリア・ローマで録音したセッションの海賊盤というか私家盤風のプアーなCDジャケットを取り出して曲を一瞥する。デッカのコーナースピーカーを大きめに鳴らす為に低音が肥大気味なフィッシャー製プリメインアンプのトーンコントロールを絞ることにする。いつもの2曲目「These Foolish Things(思い出の種)」という苦いバラードをこよなく愛していてその次は「Over The Rainbow(虹の彼方に)と曲順も自己流である。冴え冴えとしたチェットのトランペットは何処までも憂鬱なのに明るい香気で覆われていてその二面性を湛えた塩梅は天の賦与したものに違いない。脇でギターを弾くルネ・トマのギター音力の深さも改めて知る。ここから興に乗ってベツレヘムの1枚ものボーカル、ポーラ・キャッスル、テリー・モレル、ヘレン・カーなどを次々に取り出して聴いていたらいつの間にかお昼になっていた。