Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

雨降りの音

2011-05-11 10:59:19 | JAZZ
やはり風が吹き荒れたあと昨日の午後から雨が降ってきた。
先週に裏の空き地へお義理程度に苗を植えておいたトマト
、カボチャ、ピーマンにとっては干天の慈雨だろう。
震災から二ヶ月目の朝、朝食は夕べ残してあったジャガイモ
、玉葱の味噌汁をスープ代わりに、庭に生え残っていた楽京
を引き抜いたミニ球根に金山寺味噌を和える。
トースト1枚とコーヒーというシゾフレニーなメニューにも
些細な幸せを感じる。ついでにおまじないみたいに毎日三粒
づつ齧る紫蘇風味のニンニクも思い出して胃に納める。

電話をしてくるドクターSさんとしばしの会話はジャズLP
の話題が8割を占めるが、東北震災後の世相も絡んでくる。
金満パワーエリートを地で行くHさんが、みちのくの別荘へ
向かう地震の当日、新幹線に閉じ込められたらしい。
同じ時期に地震停止した新幹線からすぐ降ろせと、掛け合った
天下の朝日新聞社員の話もどこかで読んでいたから二人で笑う。
どちらも札束や権威がひとかけらも通用しない事態があって
よい勉強になったでしょう。我々なら全然平気だね!と悪口の
快感に浸る。Sさんのことだから話はGWに早朝から御茶ノ水
ディスクユニオンで並んで買ったというビバリー・ケニーの
オリジナルLPの入手苦労話にも及ぶ。
始発バスが走っていない時間に丸の内線の「南阿佐ヶ谷」駅
まで徒歩で乗り継いだ放出セールへの着番は一位だったとの
こと。
いつもの結論「素封家に美音響かず」というSさんの警句は
貧窮生活の渦中に生きる自分には用がないが、思い当たるフシ
も多い。生きていた頃の安原顕さんと寺島靖国さんがよく会話
中に身も蓋もない「オーディオはカネだ!」と強弁するのを
目撃したがこれも逆説的真理を語っているのかもしれない。
煙る雨を眺めていたら我が非素封家オーディオが愛しくなった。
この春先にいちばんよく聴いたビル・エバンストリオの63年
にカリフォルニアのシェリー・マンズホールのライブCDだ。
どういうわけか今朝は脳裡に昔馴染んだドド・ママローサが弾く
「カッテージ・フォー・セール」のイントロメロディーが浮ん
でくるが、CDが見つからない。
そこでビル・エバンスが紡ぎだす「イズント・イッツ・ロマン
ティック(ロマンティックじゃない!)」の登場だ。
雨降りの音、窓辺を彩る鬼アザミ、ラリー・バンカーの舞い立つ
ワイヤーブラシもやはり五月にふさわしい。