さて、第1023回は、
タイトル:吸血鬼のおしごと
著者:鈴木鈴
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'02)
であります。
本を読むのはたいてい帰りの電車の中です。
そして読む速度は、おもしろいかおもしろくないかで顕著に変わってきます。
この作品はと言うと……かな~り読み進めるのに苦労しました。
でもこの作品、第8回電撃ゲーム大賞選考委員奨励賞受賞作なんですねぇ。
さて、そのストーリーはと言うと……
『ところはローマ。神学校に通うレレナは、叔父でもあるガゼット大司教に呼ばれて中央礼拝堂に来ていた。
そこでガゼット大司教から語られたのは、日本行きの言葉。日本人を母に持つハーフであるレレナは日本語がぺらぺらなので選ばれたと言うこともあるのだが、レレナはそこにクルセイダルと言う重要な任務の匂いを感じ取って日本行きを決める。
ところ変わって日本。東京都内にある何の変哲もなく、特徴らしい特徴もないのが特徴のベッドタウン湯ヶ崎町。
そんな町でツキ(黒猫)は、ボスとして君臨しつつも主人である月島亮史を叩き起こすところであった。
月島亮史――職業フリーター、種族吸血鬼。
日光がダメで、にんにくがダメで、十字架がダメで……いわゆるまんま吸血鬼の亮史は、日の出ている日中生活できないため、夜のアルバイトをしながら、血液パックの血を飲み、ついでに普通の人間のようにも食事をしながら、また使い魔のツキとともに何とか平穏に暮らしていた。
そんな亮史が住む廃屋同然の洋館に現れたのは幽霊だった。
顔半分がえぐれてしまったままの状態で現れた幽霊は、「痛い、苦しい」と訴えるが、亮史は幽霊の何たるかを知っていたため、その訴えを取り除くことができた。
……できたのはいいのだが、雪村舞と名乗ったその幽霊は、あろうことか亮史にまとわりつき、亮史の住む洋館にほとんど押しかけ同然で居着いてしまったのだ。
さて、ところ変わらず、湯ヶ崎町の某所。
レレナは目的地である教会を探して迷子になっていた。地図を見て、案内板を見て、場所を特定できたのはいいけれど、そこは空き地で教会などない。
途方に暮れたレレナは、寂しさのあまり、たまたま見つけた黒猫に縋るようにして黒猫を追いかけ――それはツキだったのだが――幽霊に続いて亮史の洋館に転がり込んでしまう。
ツキの忠告も聞かず、舞とレレナを受け入れてしまう亮史。
平穏な生活に珍客が訪れたものの、平穏な日々はそのままだったはずの湯ヶ崎町で事件が起きる。駅の看板に女性のバラバラ死体が杭で打ち付けられると言う残忍な事件だった。
その人間離れした事件の犯人を、亮史は吸血鬼の使い魔が、さらに吸血行為によって行ったために生まれた「亡者」のものと看破するが亡者は人を食らうものと関心を向けない。
しかし、その亡者にレレナがさらわれる事態となって……』
いやぁ、読むのに苦労しました(笑)
ちょうどこの前に読んだ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」がそれなりにさくさく読めたのに対して、こちらはなかなか読み進めませんでした。
と言うことで、はっきり言って、おもしろくなかったです、はい。
これが最終選考まで残って、奨励賞を受賞したのが不思議なくらいです。
私が下読みさんなら、1次選考自体、通しませんね、これ。
まずストーリーですが、ほぼあらすじのとおりです。
ただ、視点移動が頻繁です。ちゃんと視点移動の際に、段落を区切ってわかりやすくしている点はいいのですが、目的も行動原理も異なるキャラたちの視点移動が頻繁なので、かなり流れを阻害しています。
ストーリー展開も穏やかと言えば聞こえはいいですが、だらだらしているだけで、おもしろみの微片もありません。
終盤でレレナがさらわれたことで、アクションシーンが出てきますが、盛り上がりに欠けますし、表現下手なのでわかりにくいことこの上ありません。
一応今後に続く伏線を張っていますが、こうも漫然とだらだらしたストーリー展開でおもしろみもなければ、いくら伏線を張ったところで興味のわきようがありません。
キャラもまったく魅力を感じません。
表紙折り返しの解説文には「魅力的なキャラクター達が大活躍!」とありますが、このお話のどこに「魅力的」で「大活躍!」と呼べるキャラがいるのか、不思議なくらいです。
あえて挙げるとすれば亮史の使い魔であるツキくらいでしょうか。
と言うか、主人公のはずの亮史がだらしなさすぎて相対的にツキのキャラが際立っているだけ、と言うだけかもしれません。
舞、レレナのヒロイン群にも魅力をまったく感じません。
舞は最初の悲劇的な様子から一変して元気いっぱいのキャラになりますが、ただそれだけですし、レレナもこの一冊だけでは目的も見えず、ただ巻き込まれただけの子でしかありません。
解説文に惹かれて手に取ると完全にバカを見るキャラたちです。
ただ、いい点を挙げるとすれば文章でしょうか。
視点移動が頻繁なのはすでに書きましたが、突然視点が変わることもなく、ちゃんと段落を区切っているので、視点移動で混乱することはあまりありません。
無用な傍点ルビや三点リーダーなどの多用もありませんので、作法自体は比較的まともな部類に入ります。
ですが、最近、作法にはうるさくなくなったので、これがプラス点になるかと言えば、そうとも言えません。
好感は持てますが、それだけですね。
肝心のストーリー、キャラにまったく魅力を感じないのでプラス点としては微々たるものです。
と言うわけで総評ですが、あえて言を加えることもなく、落第決定。
まぁ、まだ第8回で、ゲーム大賞の時代ですし、今のようにレベルの高い作品が多数応募されてきているころではないので、こういう作品が出てくるのも仕方がないのかもしれませんが、ホントにおもしろくありませんでした。
ラノベ以外にも多数読んでて、おもしろくないのは途中で挫折するのがほとんどだったりして、及第評価が多かったのですが、久々に文句なく落第決定なのは久しぶりですね(笑)
――【つれづれナビ!】――
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タイトル:吸血鬼のおしごと
著者:鈴木鈴
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'02)
であります。
本を読むのはたいてい帰りの電車の中です。
そして読む速度は、おもしろいかおもしろくないかで顕著に変わってきます。
この作品はと言うと……かな~り読み進めるのに苦労しました。
でもこの作品、第8回電撃ゲーム大賞選考委員奨励賞受賞作なんですねぇ。
さて、そのストーリーはと言うと……
『ところはローマ。神学校に通うレレナは、叔父でもあるガゼット大司教に呼ばれて中央礼拝堂に来ていた。
そこでガゼット大司教から語られたのは、日本行きの言葉。日本人を母に持つハーフであるレレナは日本語がぺらぺらなので選ばれたと言うこともあるのだが、レレナはそこにクルセイダルと言う重要な任務の匂いを感じ取って日本行きを決める。
ところ変わって日本。東京都内にある何の変哲もなく、特徴らしい特徴もないのが特徴のベッドタウン湯ヶ崎町。
そんな町でツキ(黒猫)は、ボスとして君臨しつつも主人である月島亮史を叩き起こすところであった。
月島亮史――職業フリーター、種族吸血鬼。
日光がダメで、にんにくがダメで、十字架がダメで……いわゆるまんま吸血鬼の亮史は、日の出ている日中生活できないため、夜のアルバイトをしながら、血液パックの血を飲み、ついでに普通の人間のようにも食事をしながら、また使い魔のツキとともに何とか平穏に暮らしていた。
そんな亮史が住む廃屋同然の洋館に現れたのは幽霊だった。
顔半分がえぐれてしまったままの状態で現れた幽霊は、「痛い、苦しい」と訴えるが、亮史は幽霊の何たるかを知っていたため、その訴えを取り除くことができた。
……できたのはいいのだが、雪村舞と名乗ったその幽霊は、あろうことか亮史にまとわりつき、亮史の住む洋館にほとんど押しかけ同然で居着いてしまったのだ。
さて、ところ変わらず、湯ヶ崎町の某所。
レレナは目的地である教会を探して迷子になっていた。地図を見て、案内板を見て、場所を特定できたのはいいけれど、そこは空き地で教会などない。
途方に暮れたレレナは、寂しさのあまり、たまたま見つけた黒猫に縋るようにして黒猫を追いかけ――それはツキだったのだが――幽霊に続いて亮史の洋館に転がり込んでしまう。
ツキの忠告も聞かず、舞とレレナを受け入れてしまう亮史。
平穏な生活に珍客が訪れたものの、平穏な日々はそのままだったはずの湯ヶ崎町で事件が起きる。駅の看板に女性のバラバラ死体が杭で打ち付けられると言う残忍な事件だった。
その人間離れした事件の犯人を、亮史は吸血鬼の使い魔が、さらに吸血行為によって行ったために生まれた「亡者」のものと看破するが亡者は人を食らうものと関心を向けない。
しかし、その亡者にレレナがさらわれる事態となって……』
いやぁ、読むのに苦労しました(笑)
ちょうどこの前に読んだ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」がそれなりにさくさく読めたのに対して、こちらはなかなか読み進めませんでした。
と言うことで、はっきり言って、おもしろくなかったです、はい。
これが最終選考まで残って、奨励賞を受賞したのが不思議なくらいです。
私が下読みさんなら、1次選考自体、通しませんね、これ。
まずストーリーですが、ほぼあらすじのとおりです。
ただ、視点移動が頻繁です。ちゃんと視点移動の際に、段落を区切ってわかりやすくしている点はいいのですが、目的も行動原理も異なるキャラたちの視点移動が頻繁なので、かなり流れを阻害しています。
ストーリー展開も穏やかと言えば聞こえはいいですが、だらだらしているだけで、おもしろみの微片もありません。
終盤でレレナがさらわれたことで、アクションシーンが出てきますが、盛り上がりに欠けますし、表現下手なのでわかりにくいことこの上ありません。
一応今後に続く伏線を張っていますが、こうも漫然とだらだらしたストーリー展開でおもしろみもなければ、いくら伏線を張ったところで興味のわきようがありません。
キャラもまったく魅力を感じません。
表紙折り返しの解説文には「魅力的なキャラクター達が大活躍!」とありますが、このお話のどこに「魅力的」で「大活躍!」と呼べるキャラがいるのか、不思議なくらいです。
あえて挙げるとすれば亮史の使い魔であるツキくらいでしょうか。
と言うか、主人公のはずの亮史がだらしなさすぎて相対的にツキのキャラが際立っているだけ、と言うだけかもしれません。
舞、レレナのヒロイン群にも魅力をまったく感じません。
舞は最初の悲劇的な様子から一変して元気いっぱいのキャラになりますが、ただそれだけですし、レレナもこの一冊だけでは目的も見えず、ただ巻き込まれただけの子でしかありません。
解説文に惹かれて手に取ると完全にバカを見るキャラたちです。
ただ、いい点を挙げるとすれば文章でしょうか。
視点移動が頻繁なのはすでに書きましたが、突然視点が変わることもなく、ちゃんと段落を区切っているので、視点移動で混乱することはあまりありません。
無用な傍点ルビや三点リーダーなどの多用もありませんので、作法自体は比較的まともな部類に入ります。
ですが、最近、作法にはうるさくなくなったので、これがプラス点になるかと言えば、そうとも言えません。
好感は持てますが、それだけですね。
肝心のストーリー、キャラにまったく魅力を感じないのでプラス点としては微々たるものです。
と言うわけで総評ですが、あえて言を加えることもなく、落第決定。
まぁ、まだ第8回で、ゲーム大賞の時代ですし、今のようにレベルの高い作品が多数応募されてきているころではないので、こういう作品が出てくるのも仕方がないのかもしれませんが、ホントにおもしろくありませんでした。
ラノベ以外にも多数読んでて、おもしろくないのは途中で挫折するのがほとんどだったりして、及第評価が多かったのですが、久々に文句なく落第決定なのは久しぶりですね(笑)
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