さて、ラノベばっかですいませんの第1021回は、
タイトル:ストライク・ザ・ブラッド1 聖者の右腕
著者:三雲岳斗
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃文庫(初版:'11)
であります。
雰囲気とか、そういうのと似た感じで時折、匂いを感じることがある。
今回のは巻頭にあるカラーイラストと、そこに紹介されている文章を見て、「とある魔術の禁書目録」に似た匂いを感じて、初っぱなからかなりげんなりした。
とは言え、ストーリーまで似た匂いを感じるわけではないので、読み進めてはみたけれど……。
さて、ストーリーは、
『見習いの剣巫である姫柊雪菜は、所属する獅子王機関の長老である三聖に呼び出されていた。
そこで簡単な実力を試され、三聖の意図するところがわからない雪菜は、わけがわからないまま、第四真祖の存在を知らされる。
「一切の血族同胞を持たない、唯一孤高にして最強の吸血鬼」――それが第四真祖だった。
だが、他の真祖とは異なるその存在は、名前は知られていながらも都市伝説の類だと思っていた雪菜は、しかし三聖から第四真祖が実在することを教えられ、一枚の写真を見せられる。
そこに写っていたのは暁古城という男子高校生のもので、ごくふつうの高校生にしか見えない。
だが、その暁古城が第四真祖であり、雪菜はその監視役――場合によっては抹殺することを命じられる。
一方、自分の生活の裏でそんなことがあったことなと露知らぬ古城は、ファミレスの一角で友人の藍羽浅葱と矢瀬基樹とともに追試の勉強をしていた。
欠席がちで試験にも来ていなかった古城にとって追試は仕方がないのだが、夏休みも終わり間近、九教科の追試に体育のハーフマラソンの追試が待っているとなればやる気も起きない。
しかし、それでも時間は無情に過ぎていく。
勉強を教えてもらっている浅葱は、バイトがあると席を立ち、ちゃっかりと隣で浅葱の宿題を移していた基樹も用が済んだとばかりに帰って行ってしまう。
勉強を教えてもらう浅葱がいなければ、これ以上ファミレスにいても仕方がないので、古城もファミレスを後にしようとしたとき、古城は夕陽を背にしたギターケースを持った少女を見かける。
その少女こそ、姫柊雪菜――古城と雪菜の運命の邂逅だった。』
表紙の返しにある作品紹介には「学園アクションファンタジー」とあるけれど、まんまだね。
良くも悪くも普通の学園アクションファンタジーで目立った特徴もなければ、変わった設定とかもない。
設定については、最初に書いたとおり、「とある魔術の禁書目録」の匂いがするのだが、まぁ、これは後述。
ストーリーは古城の監視役に選ばれた雪菜が、あらすじのとおり接触し、ついでに古城の住むマンションの隣にまで引っ越してくると言う徹底ぶりで監視を続ける中、吸血鬼や獣人などの魔族が襲われる事件が発生し、それに首を突っ込むことになった雪菜と古城が、事件の首謀者であるオイスタッハと戦うハメになり、そしてオイスタッハの真の目的を知り、それをふたりで阻止することになる、と言うもの。
ストーリー自体はまぁまぁまとまっているほうかな。
言葉にできない違和感があるのだが、これは分析型の相方なんかが読むとしっかり説明してくれそうなのだが、感性派の私にはちょいと無理。
まぁ、ややマイナスの要素にはなるものの、そこまで気にするほどでもないのでラノベとしては許容範囲としておこう。
キャラも悪くはない。
特に性格や個性、行動原理に問題があるわけではないので、キャラ立ちはしているほうだろう。
ただ、これと言って目立つキャラがいるわけでもなく、ここでも普通さ加減が際立っているのだが……。
文章については、最初、無意味な傍点ルビがあって、これがまた続くのかと思ってげんなりしたものだが、これは最初だけでその後は三点リーダーの多用も少なく、ラノベとしては作法を逸脱しない比較的まともな文章だと言える。
相方がかなりボロクソに言っていたので、どうかと思っていたが、ストーリー、キャラ、文章ともにまともでこれはかなり意外ではあった。
マイナス面も少なく、良くも悪くも普通であることを除けば、悪いところが見当たらなさそうなラノベなのだが、上述のとおり、禁書臭が漂うのが難点だろうか。
邪推と言えばそれまでだが、その邪推をあくまでするとすれば、たとえば、
舞台となる魔族も生活する人口浮島「絃神市」。魔族も生活を保障され、その魔族の研究を行う研究機関や企業が集う街→禁書目録で言う「学園都市」
超人的な肉体を誇る獣人や吸血鬼など→能力者
獅子王機関→統括理事会
オイスタッハと言った祓魔師→まんま禁書に出てくる魔術師
同じくオイスタッハが装備する肉体強化などを行う装備→禁書目録で出てくる霊装
など、禁書目録の設定をアレンジしただけのものにしか見えない設定が多数出てくる。
キャラも終章で基樹が古城を監視する本来のスパイであることなど、友人でありながらスパイであると言うところなどは禁書目録の土御門に似たところがある。
気にしなければいいじゃないかと言う向きもあるかもしれないが、禁書目録を読んだことがある人ならば――ラノベではかなり人気のあるシリーズなのでラノベ好きなら読んだことない人のほうが少ないのでないかと思うが――やはり、この設定に似た匂いを感じる人は多いのではないだろうか。
完全なオリジナルを作ることは到底無理なので、何かしらの作品に似た部分が出てしまうのは仕方がないとは言え、ここまで似た匂いを振りまいていると、二番煎じという感が拭えない。
と言うわけで、それなりに悪い点はないながらも、この禁書目録臭がしてしまうと言う点がマイナスになって落第と言ったところだろうか。
もっとも、これがなくても普通の学園アクションファンタジーなので、及第以上の評価をすることはできないのだが……。
――【つれづれナビ!】――
◆ 『ライトノベル一覧表(その1)』へ
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タイトル:ストライク・ザ・ブラッド1 聖者の右腕
著者:三雲岳斗
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃文庫(初版:'11)
であります。
雰囲気とか、そういうのと似た感じで時折、匂いを感じることがある。
今回のは巻頭にあるカラーイラストと、そこに紹介されている文章を見て、「とある魔術の禁書目録」に似た匂いを感じて、初っぱなからかなりげんなりした。
とは言え、ストーリーまで似た匂いを感じるわけではないので、読み進めてはみたけれど……。
さて、ストーリーは、
『見習いの剣巫である姫柊雪菜は、所属する獅子王機関の長老である三聖に呼び出されていた。
そこで簡単な実力を試され、三聖の意図するところがわからない雪菜は、わけがわからないまま、第四真祖の存在を知らされる。
「一切の血族同胞を持たない、唯一孤高にして最強の吸血鬼」――それが第四真祖だった。
だが、他の真祖とは異なるその存在は、名前は知られていながらも都市伝説の類だと思っていた雪菜は、しかし三聖から第四真祖が実在することを教えられ、一枚の写真を見せられる。
そこに写っていたのは暁古城という男子高校生のもので、ごくふつうの高校生にしか見えない。
だが、その暁古城が第四真祖であり、雪菜はその監視役――場合によっては抹殺することを命じられる。
一方、自分の生活の裏でそんなことがあったことなと露知らぬ古城は、ファミレスの一角で友人の藍羽浅葱と矢瀬基樹とともに追試の勉強をしていた。
欠席がちで試験にも来ていなかった古城にとって追試は仕方がないのだが、夏休みも終わり間近、九教科の追試に体育のハーフマラソンの追試が待っているとなればやる気も起きない。
しかし、それでも時間は無情に過ぎていく。
勉強を教えてもらっている浅葱は、バイトがあると席を立ち、ちゃっかりと隣で浅葱の宿題を移していた基樹も用が済んだとばかりに帰って行ってしまう。
勉強を教えてもらう浅葱がいなければ、これ以上ファミレスにいても仕方がないので、古城もファミレスを後にしようとしたとき、古城は夕陽を背にしたギターケースを持った少女を見かける。
その少女こそ、姫柊雪菜――古城と雪菜の運命の邂逅だった。』
表紙の返しにある作品紹介には「学園アクションファンタジー」とあるけれど、まんまだね。
良くも悪くも普通の学園アクションファンタジーで目立った特徴もなければ、変わった設定とかもない。
設定については、最初に書いたとおり、「とある魔術の禁書目録」の匂いがするのだが、まぁ、これは後述。
ストーリーは古城の監視役に選ばれた雪菜が、あらすじのとおり接触し、ついでに古城の住むマンションの隣にまで引っ越してくると言う徹底ぶりで監視を続ける中、吸血鬼や獣人などの魔族が襲われる事件が発生し、それに首を突っ込むことになった雪菜と古城が、事件の首謀者であるオイスタッハと戦うハメになり、そしてオイスタッハの真の目的を知り、それをふたりで阻止することになる、と言うもの。
ストーリー自体はまぁまぁまとまっているほうかな。
言葉にできない違和感があるのだが、これは分析型の相方なんかが読むとしっかり説明してくれそうなのだが、感性派の私にはちょいと無理。
まぁ、ややマイナスの要素にはなるものの、そこまで気にするほどでもないのでラノベとしては許容範囲としておこう。
キャラも悪くはない。
特に性格や個性、行動原理に問題があるわけではないので、キャラ立ちはしているほうだろう。
ただ、これと言って目立つキャラがいるわけでもなく、ここでも普通さ加減が際立っているのだが……。
文章については、最初、無意味な傍点ルビがあって、これがまた続くのかと思ってげんなりしたものだが、これは最初だけでその後は三点リーダーの多用も少なく、ラノベとしては作法を逸脱しない比較的まともな文章だと言える。
相方がかなりボロクソに言っていたので、どうかと思っていたが、ストーリー、キャラ、文章ともにまともでこれはかなり意外ではあった。
マイナス面も少なく、良くも悪くも普通であることを除けば、悪いところが見当たらなさそうなラノベなのだが、上述のとおり、禁書臭が漂うのが難点だろうか。
邪推と言えばそれまでだが、その邪推をあくまでするとすれば、たとえば、
舞台となる魔族も生活する人口浮島「絃神市」。魔族も生活を保障され、その魔族の研究を行う研究機関や企業が集う街→禁書目録で言う「学園都市」
超人的な肉体を誇る獣人や吸血鬼など→能力者
獅子王機関→統括理事会
オイスタッハと言った祓魔師→まんま禁書に出てくる魔術師
同じくオイスタッハが装備する肉体強化などを行う装備→禁書目録で出てくる霊装
など、禁書目録の設定をアレンジしただけのものにしか見えない設定が多数出てくる。
キャラも終章で基樹が古城を監視する本来のスパイであることなど、友人でありながらスパイであると言うところなどは禁書目録の土御門に似たところがある。
気にしなければいいじゃないかと言う向きもあるかもしれないが、禁書目録を読んだことがある人ならば――ラノベではかなり人気のあるシリーズなのでラノベ好きなら読んだことない人のほうが少ないのでないかと思うが――やはり、この設定に似た匂いを感じる人は多いのではないだろうか。
完全なオリジナルを作ることは到底無理なので、何かしらの作品に似た部分が出てしまうのは仕方がないとは言え、ここまで似た匂いを振りまいていると、二番煎じという感が拭えない。
と言うわけで、それなりに悪い点はないながらも、この禁書目録臭がしてしまうと言う点がマイナスになって落第と言ったところだろうか。
もっとも、これがなくても普通の学園アクションファンタジーなので、及第以上の評価をすることはできないのだが……。
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