『PRIDE 池袋ウエストゲートパークⅩ』 石田衣良

2010年12月18日 22時23分36秒 | 石田衣良
新しすぎて簡単な書評がありませんでした。



あ、久しぶりです。オオハシです。寒すぎて手がかじかんでるので、誤字脱字等ご容赦ください。

わが敬愛する石田衣良の代表作、「池袋ウエストゲートパーク」シリーズの第10作目。今回も短編の4作品です。

1話目は携帯電話のデータを盗まれたITエリートの話。
個人情報はもちろん、スケジュールや、あんな写真まで・・・携帯にはたくさんの情報が入ってますよね。
ほら、あなたの携帯にも。みなさん、盗まれて困るようなものを携帯に入れていませんか?

2話目は弟に重傷を負わせた暴走自転車を探す姉の話。
最近のエコブームで自転車が路上で大にぎわいですよね?でも、チャンとルールを守っている人はそんなに多くない。
イヤホンをつけて音楽を聴きながら走る自転車にぶつかられて有望なサッカー選手の足の骨が折れてしまう話です。

3話目は三十路になっても夢を諦めない地下アイドルの話。
ちまたではAKB48とかKARA?とかアイドルが世間をにぎわせていますよね。
でもそれとは別にどこかのビルの地下のちっちゃなステージで頑張っているようなアイドルもいます。それが地下アイドル。
その人に群がるストーカー?の話です。

4話目は暴行被害から立ち直ろうとする美女の話。
暴行はただの暴力じゃなくて集団レイプのこと。車に連れ込んで何度も何度も暴行され、捨てられる。
そこから立ち直った美女がその集団を追い掛ける。


このシリーズに言えることはその時代時代の流行や問題を敏感にキャッチして、みんなが見て見ないふりをしているところに真正面から向き合っていく。
切り口が爽快で、決して力だけで相手を打ち負かすだけじゃなく、それでいて確かなダメージを与えて問題を解決していく。

そして今回の作品では主人公のマコトと重要な役割を担っているGボーイズのキング・タカシが今まであまり色恋ごとの描写が少なかったのに、少しずつそういった雰囲気が増えていきます。
この本は連作でシリーズものなんだけど、サザエさんとかみたいにいつまでたっても同じ年じゃなくて、ちゃんと年をとっていっている。
おそらく彼らの年齢は20代半ばから後半。そういった話がないほうがおかしい。
多くの長編小説では、主人公もしくはその周辺の登場人物が成長して結末を迎えるんです。
頼りないノビタ君も立派に成長して敵を打ち負かすように。
この作品では一話一話ではあまり成長というのは感じられませんが、全体として成長が目に見えるんですよ。
これは最初から通して読んでる人じゃないとわからない楽しみじゃないかなと。
ここだけ切り取って読んでみても面白いんですよ。でもそれ以上に最初から読むと面白いんです。

もう来年まで待てない!早く次の作品を作ってくれ!

★★★★☆