『ビフォア・ラン』 重松清

2011年06月21日 21時12分26秒 | 重松清
復帰第一弾


「授業で知った「トラウマ」という言葉に心を奪われ、「今の自分に足りないものはこれだ」と思い込んだ平凡な高校生・優は、「トラウマづくり」のために、まだ死んでもいない同級生の墓をつくった。ある日、その同級生まゆみは彼の前に現れ、あらぬ記憶を口走ったばかりか恋人宣言してしまう―。「かっこ悪い青春」を描ききった筆者のデビュー長編小説。」(「BOOK」データベースより)

私たちの生きている世界は、どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか。

たとえば、美容師になりたい人が美容師になりたい理由は「モテそうだから」で、本当は美容師になりたい確固たる理由がない人が「美容師になりたい」っていうのは嘘なのかとか。
そう突き詰めて考えていくと、この世の中のほとんどは嘘で成り立っている。
嘘っていうのが極端なら、建前ってことかな。

少しネタばれになるけど、今までまじめな生徒を演じてきた高校生が苦しくなって、病気で自分の思い込みがほんとのことと思ってしまっている人の思い込みにつきあって、本当になりたい自分(思い込みの世界の自分)になる。
まじめな自分と、思い込みの世界の自分はどっちが本当でどっちが嘘なのかはわかんないよね。
現実はまじめな生徒なんだけど、本当はもっと自分勝手に生きていきたいと思ってるんだから。

自分に嘘ついて、できない勉強を必死になってやっているとそれが日常になって、できない勉強をできるようになる。でも本当は勉強はしたくないし、大学受験なんかしたくないのかもしれないし。

そんな悩める高校生のお話。


重松清の手にかかると、どんな日常も活きた文章へと様変わりする。
それは重松清のデビュー作でも同じでした。
本当に心地よい文章を書く作家さんで、お勧めです。

★★★☆☆

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