『北斗 ある殺人者の回心』 石田衣良

2015年10月11日 15時45分41秒 | 石田衣良
雨の日は読書日和だったりします。



「両親から激しい虐待を受けて育った少年、北斗。誰にも愛されず、愛することも知らない彼は、高校生の時、父親の死をきっかけに里親の綾子に引き取られ、人生で初めて安らぎを得る。しかし、ほどなく綾子が癌に侵され、医療詐欺にあい失意のうちに亡くなってしまう。心の支えを失った北斗は、暴走を始め―。孤独の果てに殺人を犯した若者の魂の叫びを描く傑作長編。第8回中央公論文芸賞受賞作。 」(BOOKデータベースより)


ある悲しくてつらい人生を送る少年に、考えさせられる作品。
石田先生にしては長い作品です。

いくらかネタバレになりますので、気になる方は読み飛ばしてください。

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幼いころから親に虐待されて育った橋爪北斗。
「橋爪北斗は誰かに抱き締められた記憶がなかった。」(5ページから抜粋)
父親から日々暴力を振るわれ、同じように暴力を振るわれていた母親も自分を守るがために北斗を虐待する。
そんな北斗も、誰にも相談できず、どんなに暴力を振るわれても家に帰るしか生きていけない。
自殺しようとも考えたが、寒い冬の夜に触れた自動販売機の暖かさに救われ何とか生きていた。

そんな北斗にも転機が訪れる。
虐待をしていた父親が突然に病に倒れ、亡くなったのだった。
母親からの虐待もなくなったのだったが、
あるときから母親に暴力を求められるようになる。
母親は支配されることに喜びを感じるようになっていた。
北斗は、幾度か母親に暴力を振るってしまったのだが、
いつか父親のように暴力をふるい、自分が壊れてしまうことを恐れた北斗は、
児童相談所に相談し、里親の綾子に引き取られることとなった。

大人を信じることのできなかった北斗だが、あることを機に綾子に信頼を寄せるようになる。
初めて大人の愛情に触れた北斗は、綾子を実の母親のように慕う。

しかし、幸せは長く続かなかった。
綾子がガンに侵されたのだった。
綾子のガンは手術が難しく、抗がん剤で治療を行っていたのだが、
どんどん体力が削られていく。
あるとき紹介された波洞水という水を綾子に飲ませたところ、
綾子がそれを気に入ったことで、毎日その波洞水を飲ませることとなるのだが、
その波洞水は一番高価なもので1本5万円以上もする代物だった。

綾子がよろこんで飲んでいたので、綾子の貯蓄を切り崩しながら工面していたのだが、
綾子の死が近付いてきたある春の日、その波洞水が医療詐欺であったことが発覚した。
綾子の死の間際、北斗はこの医療詐欺の相手に復讐したいか綾子に尋ねたところ、
綾子は首を細かく縦に振ったことから、北斗は綾子の死後、
実際に復讐を実行したのだったが。。。


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ネタバレ終わり。

とはいえ、ここまでで本の半分ほど。
BOOKデータベースの説明を膨らませただけなので、
読んでも問題ないレベルかと思って書きました。

ここから裁判の話になります。
話のメインは、この生い立ちと医療詐欺と復讐行為が、
どう評価され、どういった判決が下されるのかということ。
判決どうこうというより、読者自身に考えてもらいたいということかと思います。
話も重くてつらい内容ですが、秋の夜長に読んで悩んで考えてほしい作品です。

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