『失われた町』 三崎亜紀

2010年05月20日 20時41分47秒 | 読書
難しいですね。



ある日、突然にひとつの町から住民が消失した――三十年ごとに起きるといわれる、町の「消滅」。不可解なこの現象は、悲しみを察知してされにその範囲を広げていく。そのため人々は悲しむことを禁じられ、失われた町の痕跡は国家によって抹消されていった……。残された者たちは何を想って「今」を生きるのか。消滅という理不尽な悲劇の中でも、決して失われることのない希望を描く傑作長編。(集英社文庫より引用)

三崎亜紀の小説は2冊目です。

三崎亜紀の小説の特徴として、

①ごくごく身近な町で起きている
②超現実的な
③今を描く

作品って気がします。

舞台は普通の町。ま、出てくるのは架空の町だけど、描かれているのは普通にあり得るような街並み。

その中で起きる、現実ではありえないSFチックな出来事。

ただそれは、未来で起きているとか、そういうのじゃなくて、「今」の出来事。



タイムスリップして、未来の世界を描くのは、完全に空想の話だから、何を書いたっていいわけ。
人類が超進歩してようが、機械と共生していようが。

ただ、三崎亜紀の場合は今を書いているのだから、そこに意志を持ったロボットや、進化した人類がいちゃいけないわけ。

でも、そんな制約条件の中でも、やっぱりリアルを超えた部分があるから、多少は人間の形も変わってていたしかたない。
その程度が問題であってね。

三崎亜紀は、その辺のさじ加減が絶妙というか、まあ、一部分でやりすぎじゃないかって思うこともあるけど、多くの箇所ではそれは適度であるといえる。

こういった作品だと、ストーリーに重きを置くことになって、「じゃあ一体何を伝えたかったのか?」、「なんでこの作品を書いたのか?」、そういった部分が見えなくなるんだよね。


そんな作品です。

★★☆☆☆