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「6.15南北首脳会談」15周年の学術会議

2015年06月11日 | 三千里コラム

学術会議で開会辞を述べる林東源・元統一部長官(6.9,ソウル)



6月9日、『金大中平和センター』と『韓半島平和フォーラム』が共催する学術会議が、延世大学・金大中図書館で開かれた。この日の学術会議は、南北首脳会談15周年を記念して開催されたものだ。林東源・元統一部長官が開会辞を述べた。

当時、金大中大統領の最側近として南北首脳会談の成功に献身した林・元長官は、開会辞で次のように語った。

“首脳会談と「6・15共同宣言」から15周年を迎えるが、最近の南北関係を見ると心苦しく胸が痛む。「6・15共同宣言」は南北関係の歴史において、分断克服のための集約的な表現だ。対話が中断され、接触が途絶え、緊張が高まるばかりの現状で、平和と協力の道を再び探そうとするならば、「6・15共同宣言」に道を問わねばならない。

...強大国がひしめく東北アジアの国際政治において、わが民族がその犠牲にならないためには、私たちの運命を自ら作り出すべきだ。韓国外交の力は、南北関係を改善してこそ生じる。朝鮮半島の秩序を私たちが決定してこそ、東北アジアにおいて韓国外交はその機能を充分に発揮できる。「6・15共同宣言」がそのことを証明してくれた。

...韓国政府に南北関係改善の意志があるならば、朴槿恵大統領が「6・15共同宣言」の遵守と引き続き発展させる意志を表明することから始めるべきだ。そうしてこそ突破口を開くことができるだろう。

...私たちの時代の最も重要な課題は分断の克服であり、朝鮮半島の冷戦構造を解体することだ。「6・15共同宣言」の精神に依拠し、そうした希望を創っていくことを切実に期待する。”

また、当時の主役の一人だった朴智元・金大中平和センター副理事長は、基調演説で次のように提案した。

“朴槿恵政府は、内政に続き外交も危機に直面している。政府に最後の機会があるとするなら、南北関係の改善を積極的に模索することだろう。そのためにも、李明博政権が下した「5・24措置」を解除し、北を改革開放に導いて南北が共生する経済共同体を作らなければならない。

...開城工業団地は、お金も儲けて平和も得る真の創造経済だ。ドイツ式の吸収統一、ベトナム式の武力統一とは違う、私たちが作った韓国型の統一モデルだ。南北の両政府が開城工業団地を始め、海州、元山、新義州、羅津・先鋒、咸興、清津など、北朝鮮全域にこのような創造経済、統一モデルを建設するように提案する。”

この日、学術会議の第1セッションは「分断70年、6・15共同宣言、統一の新しい地平」がテーマだった。「躍動する東北アジアと朝鮮半島の新しい可能性」というテーマの第2セッションは、ソン・ミンスン北韓大学院大学総長が司会を担当し、イ・ジョンウォン早稲田大学教授、チン・チンイ北京大学教授、ソ・ジェジョン国際基督教大学教授らが発表している。

「北朝鮮・中国・ロシアの三角関係と朝鮮半島」という主題で発表したチン・チンイ(金景一)北京大学教授は、次のように分析した。

“現在の東北アジアにおける地政学的な危機は、朝鮮半島の分断からそのエネルギーを補充されているといっても過言ではない。しかし、過去の冷戦時期と現在の状況は違う。冷戦期の同盟関係は共同のイデオロギーと政治的目標に基づいていたが、このような要素は消滅しつつある。「アジア インフラ投資銀行(AIIB)」にアメリカの同盟国も呼応していることが、その反証だ。

...朝鮮半島の分裂が東北アジア危機の「根源」ならば、逆に、朝鮮半島の平和と統合はこの危機を克服する道になり得る。朝鮮半島の地政学的な価値がいくら高くても、分裂状態でなければ大国が朝鮮半島に介入する理由がなくなる。その意味で、東北アジアにおける地政学な危機を克服する決定的要素は、韓国と北朝鮮にある。

...南北の和解・協力、あるいは平和的統一が達成されるなら、北朝鮮とアメリカ・日本との「対立的依存関係」は解消されるだろうし、米日の戦略的な指向も改変されるだろう。反対に、朝鮮半島が現在の緊張状態を維持するなら、米・日・韓同盟をベースにしたアメリカの対中国・ロシア牽制は、持続される可能性が高い。”

また、早稲田大学教のイ・ジョンウォン教授は、“朝鮮半島の地政学的な構図を考慮するなら、選択肢が決して多くないことがわかる。周辺国との二国間関係を深化・拡大して協力的な地域秩序を引き出さねばならない。

...朴槿恵政府・対外政策の核心である「東北アジア平和協力構想」や「ユーラシア・イニシアチブ」も、韓国が東北アジア秩序を主導するという側面では肯定的だが、具体的な実現戦略が不透明だ。構想はあるが現実化するだけのロードマップがない。東北アジアにおける核心的な二国間関係である韓日関係は、首脳会談もできずに行き詰まったままだ”と指摘した。
(6月9日付『統一ニュース』、『プレシアン』の関連記事を参照。JHK)