NPO法人 三千里鐵道 

NPO法人 三千里鐵道のブログです。記事下のコメントをクリックしていただくとコメント記入欄が出ます。

ワシントンに吹く安部総理への逆風

2015年02月07日 | 三千里コラム

『米国歴史協会(AHA)』所属の学者たちによる、安部総理への糾弾声明(2.5)



安倍晋三総理の歴史認識に深刻な問題があることは、日本国内だけでなく国際社会でも広く知られています。敗戦70周年となる今年の8月15日には、「安倍談話」が公表されるようです。しかし、50周年の「村山談話」、60周年の「小泉談話」の精神を継承すると言いつつも、安部総理は侵略戦争や植民地支配というキー・ワードを使用することに嫌悪を隠そうとしません。

「安倍談話」の内容を予測することは難しくないでしょう。総体的に“戦争の悲惨さ”に触れることで過去と決別し、未来志向を強調しながら抽象的な平和賛美で終わるような気がします。彼は“積極的平和主義”を掲げ、二つの方向で事実上の改憲を推進しています。一つは集団的自衛権行使による「参戦権」の確保であり、もう一つが過去の戦争犯罪を否定する歴史修正主義です。

本コラムでは、国会で表明した安部総理の歴史認識が、アメリカではどのように糾弾されているのかを紹介します。

1月29日、衆議院予算委員会に出席した総理は、「アメリカの公立高校教科書に載った慰安婦関連の記述を見て本当に驚いた。慰安婦の強制徴用などと誤認されているのを国際社会で正さなかった結果、このような教科書が作られている。積極的に修正要求をするつもりだ」と述べました。

総理の発言、特に教科書の記述修正を要求したことに対して、アメリカ国内では強い反発が起きています。民主党のマイク・ホンダ下院議員は1月30日(現地時間)、安倍総理の要求に対して「非常識な行為だ。安倍総理がアメリカの教科書を修正するように要求したからといって、受け入れられるはずもない。歴史的な事実を否定するような主張を、どうして受け入れることができるのか。このような動きには、在米コリアンが強く対抗しなければならない」と語っています。

安倍総理が言及したのは『マック・グローヒル社』の教科書です。同社は最近の声明で「日本政府の代表が私たちに、教科書の慰安婦描写の部分を修正してほしいと要請した。しかし、執筆した学者たちは慰安婦の歴史的事実に則っており、私たちは執筆者たちの著述と研究、表現を明確に支持する」と表明しています。

また、『ニューヨークタイムズ』も30日付けの記事で、「教科書を修正しようとする日本政府の試みが成果を上げられずにいる。在米コリアンたちは、日本軍慰安婦の碑を建立する運動を全国的に展開しており、日本政府は外交官を派遣してこれを阻止しようと努力したが、ほとんど成果がなかった」と解説しています。

一方、アメリカの著名な歴史学者たちが、安倍総理の歴史教科書修正要求に対し、集団的な意志表示を見せています。コネチカット大学のアレクシス・ダッドン教授をはじめ『米国歴史協会(AHA)』所属の学者19人が連帯署名し、「日本の歴史家らと共に立つ」という声明を発表したのです。声明は2月5日付で韓国の『聯合ニュース』と『聯合ニュースTV』に送られてきました。

アメリカの大学で歴史学を教える学者たちが、このように特定の問題に関して集団声明を発表したことは前例がないそうです。以下に声明を要約して引用します。

「私たちは、第二次世界大戦当時の日本帝国主義による性搾取の野蛮的システム下で苦痛を味わった日本軍慰安婦に対して、日本政府が行う自国および他国の歴史教科書記述を抑圧しようとする最近の試みに対し、驚愕を禁じ得ない。私たちは、国家や特定利益団体が政治的目的の下に、出版社や歴史学者に研究結果を変えるよう圧力を加えることに反対する。」

「安倍総理は『マック・グローヒル』出版社の歴史教科書を取り上げ、慰安婦に関した記述が誤っていると指摘した。私たちは出版社を支持する。そして‘どんな政府も歴史を検閲する権利がない’と述べた、ハーバートジーグラー・ハワイ大教授の見解に同意する。」

「日本政府の文献を用いた吉見義明・中央大学教授の慎重な研究と生存者たちの証言は、国家が後援した性的奴隷システムの本質的な特徴を示している。この事実には論争の余地がない。多くの女性が本人の意志に反して徴集されたし、移動の自由が全くない最前線の慰安所に連れて行かれた。」

「安倍政権は愛国的教育を鼓吹しようとする目的から、すでに確立された歴史評価に声を荒らげて問題を提起することで、学校教科書から慰安婦と関連した言及を削除しようと試みている。一部の保守的な政治家たちは国家次元の責任を否定するために法的論争を展開しており、生存者たちを誹謗している。右翼の極端主義者たちは、犠牲者たちの話を聞き慰安婦問題の記録に関与した言論人や学者たちを執拗に威嚇している。」

「私たちは、第二次大戦当時の様々な悪行と関連した事実に光を当ててきた、日本および他地域の多くの歴史家たちと共に、これからも立ち続けるだろう。」

この声明は『米国歴史学会会報』の2015年3月号に、「歴史の観点」と題して掲載される予定です。(JHK)

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
反故 (sangtae)
2015-02-09 09:49:05
首相の時は、国際信義上"村山談話"を、反故にできないと言い、それ以外の時は反故にしたいという政治家を、私たちは信じることはできない。
                     佐高 信
返信する
反響が待たれます (pcflily)
2015-02-11 12:08:36
『米国歴史学会会報』に掲載されるとのこと、嬉しい反響が待たれます。何時も読ませていただいて、夢を頂いております。
返信する

コメントを投稿