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李鳳朝・元統一部次官のコラム

2013年07月22日 | 南北関係関連消息

李鳳朝(イ・ボンジョ)さん


李鳳朝・元統一部次官のコラム

本日(22日)、開城工業団地の操業再開をめぐり南北当局間の実務会談が開催中です。極東大学教授で元統一部次官の李鳳朝(イ・ボンジョ)さんが、この問題に関して『統一ニュース』にコラムを執筆しました。その間の経緯と実務会談の意義を的確に整理した内容なので、要訳して紹介します。李鳳朝さんは6月16日、名古屋で開催された「6.15共同宣言の13周年記念集会」で記念講演をしました。JHK
http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=103385


<コラム> 開城工業団地の実務会談が成功しなければならない理由。 2013年07月22日 李鳳朝

南北対話が難航している。開城工業団地を稼動するための南北実務会談が四回も開かれたが、合意に至らずきょう、五回目の会談を行うことになった。このように相互批難と主導権争いに終始すると、対話への無気力症を誘発して対話そのものの継続を難しくする。

せっかく開かれた南北対話が、遅々と進まない根本的な理由は何だろうか?
南北で互いに求めるものが違うためだ。北は体制維持と安全のためには、どんな形式であっても対話が必要だという立場だ。反面、私たち南は対話を通じて、北に変化をもたらさせようとするためだ。

現状は紆余曲折の末に到達した対話局面と言えるだろう。しかし、昨年末の大統領選挙前に敢行した長距離ロケット発射、パク・クネ大統領就任直前の第3次核実験、それに続く戦争直前状態とも言える対南威嚇など、北による一連の緊張激化措置が今も不信の影を色濃く落としている。このような状況が対話の順調な進行を妨げる要因となっており、“原則”を強調する韓国政府の対北政策を正当化しているのだ。

さらにキム・ジョンウン体制の登場以後、南はもちろん国際社会において、北を対話と交渉の相手と認識するよりも三代世襲体制の不安定性と急変事態への備えが強調され、北との関係進展に懐疑的な立場が広がっている。

キム・ジョンウン体制は先軍政治を基調としつつ党の役割を強調することによって、先代体制の遺産を結合する政策を駆使している。これはキム・イルソンとキム・ジョンイルの政策路線を現実に合うように修正することで、自身の指導体制に対する住民の支持と体制内部の結束力を強化しようとすることだ。

北は去る3月31日、党中央委全員会議を開催して「経済建設と核武力建設の並進路線」を採択した。北はこの路線が経済発展に重点を置いていることを強調しているが、経済発展には外部の支援が必要だ。よって北は非核化と経済発展の相関関係に執着せざるをえない。 これがキム・ジョンウン修正主義路線の核心だ。

北は長距離ロケット発射と核実験を交渉のテコとし、去る5月に人民軍総政治局長のチェ・リョンヘをキム・ジョンウンの特使として中国に派遣した。チェ・リョンヘの中国訪問を契機に、対話モードへと切り替えたのだ。チェ・リョンヘ特使は習近平主席と面談した際に「関連国と協力のうえ、6者会談など多様な対話と交渉を通じて問題を適切に解決することを願っている」という立場を伝達した。

以後、北は後続措置として6月6日に南北当局会談を提案し、それが首席代表の「格問題」で決裂するや、6月16日には朝米会談を提案した。こうした一連の動きは、キム・ジョンイルの生前に企画されていた緻密なシナリオに従ったものと言えるほどで、党、政府、軍の一糸乱れぬ協力の下に推進されている。

パク・クネ政府がスタートして5ヶ月が経過した今、南北関係は突破口を見つけることができずにいる。開城工業団地の閉鎖と南北当局間会談の不発に続き、開城工団正常化のための実務会談も一向に進展を見せていない。もし進行中の実務会談が決裂すれば、南北間の梗塞局面が当分は続くだろう。

イ・ミョンバク政府の対北圧迫政策に続くパク・クネ政府の「原則的な対北政策」は、結果的に歴代政府が南北関係で達成した成果との断絶を深めるだろう。“原則と国際的スタンダード”の美名の下で、妥協と折衝の余地はさらに狭くなっている。このように(南の)一方的な対応は、去る40年にわたる南北対話の歴史において、歴代政府が依拠した立場とは相反するものだ。

今のように南北関係が行き詰まった状況では、戦略的かつ多元的な要素を考慮した折衝的な中間段階を経ずして、会談を成功裏に終えることは困難であろう。南北長官級会談の保留に続き開城工団の実務会談まで挫折すれば、相互不信はより深刻になり、今後の対話再開を更に難しくするだろう。そうなると南北関係は、対外環境の変化に依存せざるを得なくなる。

最近の中国は朝鮮半島問題と関連して、△朝鮮半島の非核化、△朝鮮半島の平和と安定維持、△対話を通した問題解決、といった三原則を堅持している。中国はこの原則に則り、中米、中韓の首脳会談で6者会談の早急な再開を強調した。中国は6者会談の議長国として今後、6者会談の再開に向けた環境作りに外交力を傾注するものと判断される。

同時に中国は、朝鮮半島の平和と安定のためには窮極的に南北および朝米対話が重要だという立場から、関連当事国に対し圧迫と仲裁の役割を遂行すると予想される。南北対話の進展如何にかかわらず、中国のイニシアチブで国際社会に向けた対話努力を継続するだろう。

その一方で、開城工団での実務会談に成果が無ければ、南北関係改善に向けた民族内部の動力は急速に消尽するだろう。開城工団の暫定閉鎖措置と一連の南北対話で誇示した“原則的対応”が国民世論の高い支持を受けていることで、パク・クネ政府は過信に囚われている。

去る5年間のイ・ミョンバク政府による対北圧迫政策と引き続く北の挑発が原因となり、国民の間には南北関係に対する疲労感が増大している。対北政策をめぐる保守・革新間の葛藤が深刻化している現状況で、合理的な代案の提示や議論そのものが不可能となっているのだ。

開城工団の実務会談が決裂し南北対話が長期にわたり開催できないなら、南北対話を先行させる立場が難しくなった北は、これを契機に朝米対話優先の名分を得ようとするだろう。そうなると韓国政府は南北対話に執着することもできないし、朝米対話を遮断する名分を探すことも難しいというジレンマに落ち入るかも知れない。

北と「対話のための対話はしない」というのは間違った言葉ではない。だが、今のように不信が深化した状況では「対話のための対話」になったとしても、対話そのものが持つ意味は少なくない。南北対話なくして、政府の掲げる「朝鮮半島信頼プロセス」を語ることはできないからだ。

北は開城工団実務会談の成否にかかわらず、7月27日の停戦協定締結60周年を控えて大規模な閲兵式開催などの戦勝記念行事とともに、韓米両国に対し平和協定締結に向けた攻勢を積極的に展開するだろう。

このような状況に備えるためにも、私たちは南北対話を継続しなければならない。それでこそ今後、多様な形態と内容の対話で私たちが主導権を行使できるからだ。そして開城工業団地の正常化は、朝鮮半島信頼プロセスと東北アジア平和協力構想の、出発点になるべきであるからだ。