2カ月くらい前から始めたことだが、夕方の陸との散歩コース途中で、必ず父のマンションに立ち寄ることにした。母を亡くして寂しがっている父に、陸との散歩を口実に毎日、会うことができるから。
いつもの散歩は、陸の行きたい道を歩かせていたが、その時から、まずは父が暮らすマンションを目指して無理矢理引っ張っていく。ねっねっ、りっちゃん、お父さんが待っているんだから、行こうよ。
30分ほど歩いて、父のマンションが見える場所まで近づく。その途中で、何度となく、陸は行きたい方向へ行こうとするが、私は陸を引き寄せ、懸命になだめる。ねっ、お父さんとこへ行こ。ご褒美も、あるらしいから、ねっ。っとなだめながら。
父は5階のベランダに姿を見せて、待っている。陸がその下に差し掛かると、上から父が呼びかける、陸、陸、よ~きたな~。よ~きたな~。その声に陸は反応して、下から父の方を歩きながら見上げる。父がベランダから姿を消すと、陸は一目散に歩みを速める。ご褒美、ご褒美と。
マンションのエントランスに到着して、私は植栽の石積みに腰掛ける。息づかいの荒い陸は、とたんに伏せしてエントランスのドアをじっと見つめる。しばらくすると父が自動ドアから出てくる。すると、陸はお座りの体勢に。父は笑いかけながら、陸、陸、よ~来たな。おすわりして、ええ子やな~。陸は尻尾を振りながら、ご褒美を待つ。
つづく。
いつもの散歩は、陸の行きたい道を歩かせていたが、その時から、まずは父が暮らすマンションを目指して無理矢理引っ張っていく。ねっねっ、りっちゃん、お父さんが待っているんだから、行こうよ。
30分ほど歩いて、父のマンションが見える場所まで近づく。その途中で、何度となく、陸は行きたい方向へ行こうとするが、私は陸を引き寄せ、懸命になだめる。ねっ、お父さんとこへ行こ。ご褒美も、あるらしいから、ねっ。っとなだめながら。
父は5階のベランダに姿を見せて、待っている。陸がその下に差し掛かると、上から父が呼びかける、陸、陸、よ~きたな~。よ~きたな~。その声に陸は反応して、下から父の方を歩きながら見上げる。父がベランダから姿を消すと、陸は一目散に歩みを速める。ご褒美、ご褒美と。
マンションのエントランスに到着して、私は植栽の石積みに腰掛ける。息づかいの荒い陸は、とたんに伏せしてエントランスのドアをじっと見つめる。しばらくすると父が自動ドアから出てくる。すると、陸はお座りの体勢に。父は笑いかけながら、陸、陸、よ~来たな。おすわりして、ええ子やな~。陸は尻尾を振りながら、ご褒美を待つ。
つづく。