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『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 七話「襲撃」

2012-09-11 02:25:06 | 『君がいる幸せ』Artemisia編 夢の在り処
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン。今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 七話「襲撃」

 ミアはジョミー・マーキス・シンに関する詳しい情報は知らなかった。
 十年前の大戦で、ミュウを率いてきたソルジャーである事が一般的に知られている彼の経歴。
 軍に居るものは、戦後、彼に「ジュピター」と言う権限が贈られた事と、ここ数年は表舞台から姿を消している事くらいだった。
 そして、最近になって知らされたのは、自分が潜入している教育ステーションに入学して来ると事。彼が、自分の監視対象の二人と深い繋がりがある事、彼が子供の姿になっているという不思議な情報だけだった。
 ジョミーが綴ったデータには、エディの家族に対する謝罪が込められていた。
「僕が彼の家族を知ったのは、八年前「ジュピター」と言う名で、キース・アニアンの部下をし、その警護にあたっていた頃だ。
 この東のグラス空域で大掛かりな海賊掃討作戦があった。
 海賊と言っても彼らの多くは元軍人で軍の体制に反対し除隊した者や、戦中戦後の急激な変化に取り残された者達の集まりだ。
 その中でも、グライムと言う男が率いるとても強力な一団があった。
 数年かけてその海賊の壊滅を狙っていたグラヴィス将軍。
 どういう経緯で知り合ったのかはわからないが、戦中、クラヴィスは、グライムの妹、ミディアンと恋に落ちて子供が生まれていた。その子供がエディだ。
 僕が調べた中では、彼らは本当に愛し合っていたと思える。戦争が激化する中で、二人は運命に引き裂かれた。
 段々とより大きくなってくるグライムの戦力。
 それに敵対するように軍での地位を上げるグラヴィス。
 これを見ると、二人を引き裂いたのはグライムだったのかもしれないね。
 そんな流れの中に、キースと僕は置かれた。
 その頃、僕は二人の事は知らなかった。けれど、この海戦で僕は海賊に加担した。とても無謀な、とても、悔いの残る戦いだった。
 そして、僕はエディの伯父、グライムを処刑したんだ。
 その後エディの母親ミディアンはたった一人で、彼を大事に育てた。
 それは、彼を見ればわかるだろう。
 やはり、子供は愛の結晶なんだと思う。
 僕はエディと会えて、話が出来てとても嬉しかった。
 その彼を僕は守りたい。
 僕が側にいて守り抜く気でいた。けれど、セルジュの情報から事態が変わった。
 人に知られてはいないが、この数年の間にまた軍に不満を持つ者、昔沢山いた「マザー信奉者」が再び集まり、ある組織が出来ている。
 彼らは「エディ」に僕と同じ事をしようとしている。
 そう、彼を「ミュウのソルジャー」のように仕立て上げようとしているんだ。
 政府に牙を向く勢力の「旗印」にしたいんだ。
 僕はミュウだ。
 ソルジャーと呼ばれるだけの力が僕にある事は自分でもわかった。
 だから、その運命を受け入れて生きてきた。
 エディは人間だ。
 そんな運命に流される必要はない。
 彼の母親もそう思うから隠れながら、普通に育ててきたのだと思う。
 ここに来てそんな風に狙われるとは思ってもいなかっただろう。
 彼をそんな修羅の道に落としたくは無い。

 これは、戦争を起こした僕達の所為なのか…。
 そして、八年前に海賊を根絶やしに出来なかった僕らの所為なのか…。
 だとしても、僕は彼の伯父を殺した。後悔しても、僕がした事実は消えない。
 ミア。君は軍規に従わなくても良いだけの権力、最高の力がジュピターだと思っているね。
 この「ジュピター」は人ではなくミュウの力を持っている僕の人としての「枷」なんだと僕は思っている。
 ソルジャーという化け物の首にキースが付けた首輪だ。
 僕は「人が殺せて、殺せない」んだ。
 だから、ミュウの力が無くなったのかもしれない。
 僕は「矛盾」だらけだ。
 そんな僕だけど、彼、エディは守りたい。
 将来、彼が僕を恨みに思う時が来たとしても…。僕は受け入れよう。
 僕は彼に、自分で選べない未来なんて、与えたくない。
 セルジュの力を借りてくれ。
 どうも軍はエディを使って海賊を一掃しようと考えているようだ。
 ここに僕ら、クローンの二人と僕が居る事も計算済みだろう…。
 危険な戦いになるかもしれない。
 だから、最後に。
 セルジュと合流したら、ここに、何が起きても戻って来ないように。
 シドと二人で彼を守っていて欲しい。

                 Jomy      」

 ミアはエディにジョミーが彼を逃がそうとした経緯を伝えた。
 だが、全てを伝える事は出来なかった。
 ミアは、シドにこのデータを見せてどうするかを聞いた。
「今は、セルジュの軍と合流して、守り抜く事ですね」
 そうシドは言ったが、それが彼の本心で無い事は手に取るようにわかった。
 シドは自分からエイドリアンを逃がすように言った事で、ジョミーから離れてしまった事を後悔していた。
「今は…、ソルジャーズ。君たちが頼りだ」
 
 その頃、教育ステーションは生徒の避難が間に合わないまま、海賊の襲撃を受けていた。
 やはり、元軍人の集まりだ。
 さすがに十秒ではなかったが、こんな移動もしない教育ステーションの攻略なんて目を閉じてても出来そうなレベルだったのに変わりはなかった。
 襲撃された時、ここの迎撃システムに任せて、僕達は何もしなかった。
 僕は生徒を非難させる為、各ブロックからセンターに生徒を集めて上級生は上部デッキへ、下級生は下部デッキへと向かわせている途中だった。
 迎撃システムはすぐに沈黙してしまい、軍の兵士も半数が倒され、捕虜となっていた。
 生徒達は各ブロックのセンターホールへ集められた。
 僕は、その時、キリアンとマックスの二人と一緒だった。
 そして、前に僕が閉じ込められ、彼らに助けられたあの一年のブロックでも無いCブロックに居た。
「これで、やつらはここの全員から探さないといけなくなる」
 ジョミーはエディのデータと共に行動をしていた。
 生徒の詳しいデータは破壊しておいた。その復旧にはある程度の日数が必要だろう。
「ジョミー」
「これで、生徒が殺される事はないだろう」
「でも、エディは一年だとわかっているんじゃないのか?」
 マックスが聞いた。
「この時を狙っての襲撃だから、当然知っているだろうね」
「そしたら、二年や上級生。女子生徒はやばくないか?」
 キリアン言う。
「軍の監視役の女性が居ると情報を流した。それと…その監視対象の彼らの事も…」
「彼ら?」
「ここには、エディだけじゃなく。下手に殺したら問題になる人間がいるから…」
「それは、お兄さん達の事?」
 マックスにはある程度の情報がいっているようだ。
「ああ、学年や身体的データはわからないだろう。やつらにとっては敵にしたくない素材だろう」
「ミュウなんだよね?」
 と、二人が慎重に聞いてきた。
 ミュウと戦争をしていた事実は消えていない。
 僕らミュウが人と混じって暮らすようになって、身近にミュウがいるのが自然になっても、強いミュウは恐れられていた。実際、ミュウが起こした暴力事件は少ないがあるのは事実だった。
「そう、強いよ。二人共ね」
「そんなに強いなら戦えば良かったんじゃないか」
 キリアンが言った。
「彼らはそんな事は聞いてはくれない」
「なんで?」
「兄たちにもいろいろあるみたいで…」
「……」
 戦ってくれればこんな事にはならなかったのに、と彼らは思ったようだった。
「多分、ここでは使いたくないんだ…」
 一応僕も何か危害が及ぶようなら戦えとの指示は出した。
 それが何もしないでこうなっているのは、まだ生徒は無事だと言う証拠だろう。
 海賊の襲撃で各ブロックは完全に遮断され、何もわからない。
 情報さえもが分断されていてわからなかった。それは目隠しをされている気分だった。
 サーチさえ出来たら…。 もどかしく思っていた。
 この状態になっても、シドと僕とのルートは切れる事は無かっただろう。
 彼を行かせた方がエディは守れる。
 彼は何としても守らねばならなかった。
 僕にミュウの力が戻っていれば良かったのにと痛感していた。
 僕の今の力はとても弱い。
 使える種類も少なかった。サイコキネシスは使えない。テレパシーは近くに居ないと無理だった。戦闘能力は人とそう変わりない。
 何故、体力は戻ってきたのに…ミュウの力は戻ってこないのだろう?
 僕達三人は小さなライトを手に上級生のいるBブロックに向かっていた。
 場所によっては完璧に封鎖されている所も出来ていた。
 そんな所に僕達はいた。
 まずは、ここを出てBブロックに向かわないといけない。
 彼ら二人は僕の持つエディのデータを自分達にも運ばせて欲しいと言ってきた。
「狙われるのはわかってる。逃げ回ればいいんだよな」
「兄と同じく僕もミュウだ。だから、僕の心配はいらない。ギリギリまでは一緒に居る。本当に危ない時はデータを消して逃げてくれ」
「わかった」

  Bブロック潜入
 非常灯の薄明かりの下で「それで、どうするんだ?」と、急にキリアンが聞いてきた。
「何を…」マックスと僕が振り返る。
「だって、ここでは上級生に混じるんだろ?」
「そう。そこで僕が兄達を探す。合流しないと…」
「それはわかってるよ。俺達、これじゃすぐバレるって」と自分を見下ろした。
「あ」
「そうだった…」
 僕達は一年の紺に黄色のラインの服。
 上級生はグレーに黒のラインだ。
「困ったな…。誰かの部屋に入って借りるしかないか…」
「入れないだろ?入れたらネットが使えるから、こんな事はしてない」
「ロックを細工して解除してでも…入る。上級生の私室に向かおう」
「ジョミー。待って。いい考えがある」
 マックスが言った。
「この近くに歓迎会で使ってた演劇の衣装部屋があるはず。だから…」
「衣装?ドレスとかじゃないのか?」
「今年はそうだったけど昨年は学園物だったんだ」
「マックス。詳しいね…」
「マックスはトップのセシリアが好きなんだ」
「あ、今年の姫役の?」
「だだのファンだって!部屋を探そう」
 マックスが真っ赤になって先に歩きだした。
 僕達はちょっと笑いながら後に従った。




  続く








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