君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 九話「戦闘特化」

2012-09-21 02:21:41 | 『君がいる幸せ』Artemisia編 夢の在り処
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン。今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 九話「戦闘特化」

 暗闇の状態から少しずつ光りが戻ってくる。
 彼女の銃の腕はさっきので知っていたし、僕もバリアを張る時間は無かった。
 けれど、僕は撃たれなかった。
 いや、正確に言うと撃たれたけど、弾はそれて僕の頬をかすめただけだった。
 左耳に付けていたヘッドセットが外れて落ちた。
 そこで、彼女への暗示は解けた。
 銃を額に押し付けられ、僕は両手を挙げるしかなかった。
「何なの?ジョミーって君が?何を…」
「クリスティナ。すみません。僕はミュウです。力を使いました」
「……」
「教えて下さい。貴女が首領ですか?なら…」
「クリスでいいわ」
「なら、ジョミーはどこです?」
「ジョミーは君じゃないの…」
「貴方達は踊らされている。このままだと…また…」
「何?どういう…事?」
「戦争を起こすのは、とても簡単なんだと言う事だ」
 僕がそう言った時、衝撃がステーションを揺らした。
 砲撃ではなく何かが爆発したようだった。
 僕は上げた手で銃を払落して、机のネットを強制的に管理室に繋いだ。
「動かないで撃つわよ」
「今はそれどころじゃない」
「……」
 僕は血で汚れたシャツは着ていなかった。上着も所々汚れ破れているそんな姿の僕にクリスは僕が持っていたあの黒いマントを着せた。
「女装のまま、皆の前に出る趣味は無いよね」
 クリスを先頭にしてセンターの管理塔へ海賊の幹部達が向かった。
 僕はセンターの生徒がいるホールへと向かった。
「ジョミー。聞こえる?君の言う通りだったわ。許可なしで一隻出ている。我々はこれから追う。小型艇しか残せなくてすまない」
「大丈夫です。必ず捕らえてください」
「了解」
「まだ、新手がいるばずです。僕からも支援を出します」
「…どこにそんな…?まぁ、いいわ。任せる」
「OK」
「今、機能を戻しているわ。それとここに残る者に指示を出したから、安心して」
「ありがとう。それとここと下級生のブロックを解放してほしい」
「開けた。それと、ジョミー。エディとグライムの事は後で話して」
「…わかった」
「じゃあ、ここは君にまかせたわ」
「わかりました」
 話しながら、僕は管理室からのデータをパネルに出して確認をした。
 クリスとの会話が終わり、僕は思念をステーションに広げていった。
 ここには、ブルーは居なかった。
 そして、何故かキリアン達の姿も見当たらなかった。
(ブルー。どこにいるんだ?)
 返事は無かった。
「この中にミュウがいるだろう?出てきてくれないか」
 センターへと降りた僕はデータを見ながら生徒達に言った。
 集まっていた生徒はざわざわとしていたが、皆、海賊から解放された事がわかったので、一人、一人とおずおずと手を挙げた。
 十人程の生徒が僕の前にやって来た。
「知っている通りに、海賊達はもう僕達に危害を加える事はない。もう安心だ。彼らの目的は達成されないままだが、彼らはここを出て本当の敵を追って行った」
「本当の敵?」
「彼らを使ってここを襲わせ、僕達を彼らに殺させて全面戦争を起こそうとしている者の所へね」
「せ、戦争?」
 怒りを含んだジョミーの声に反論するものは居なかった。
 ふいに、ブルーからの思念が飛んできた。
(ジョミー…気を失ってた…)
(ブルー。良かった。無事だったか?)
(完全に無事って訳でもないけど…な。連れて行こうとしたヤツに撃たれた)
(死んでないなら、君は無事って事だ)
(酷いな。こんな時くらい、優しくしてくれても…)
(優しくするよ。全て終わったらね。少し我慢して待ってて…)
 一刻も早く側に行きたかった。
 その声に、その思いに僕の緊張が伝わらなかっただろうか?
 ここで僕がグラついちゃいけないんだ。
 遮られていた扉が開き、下級生がセンターに入って来た。
 彼らを上級生にまかせて僕は下級生の中からまたミュウを集めた。
 それから、僕は教授陣の許に行きここのデータを見せた。
「いいですか。よく聞いて下さい。ここは今、さっきの爆発で軌道を外れてゆっくりと惑星アルテメシアに引かれています。本当の敵はここに爆薬を仕掛けていったという情報があります。今、落下はほぼしていません。海賊は彼らの残った船で引き上げてくれています。それと、軍も動き出しています。僕の仲間も来ます。それまでに爆薬を探し、ここを守りましょう」
 データを見せられ、事実を知った教授たちは慌てた。
「海賊たちがこんな事をしなければ」
「そんな情報は信用出来ない」
「さっきのやつらみたいに逃げるんじゃないのか?」
「逃げたんじゃない。ここを破壊して逃げた船を追っていったんです。あれにはジョミーが連れ去られています。彼らはそれを追ってくれたのです」
「だが、こうなったのは、そもそも…」
「そうです。ですが、今それを言っていて我々が助かりますか?追求は後でお願いします。まだ時間はあります。今を見て対策を考えて下さい」
 その言葉に教授たちは対策を練りだした。
「僕は下層部に行ってきます。しばらくお願いします。センターが一番頑丈です。まだ大丈夫だから動揺しないようにと、生徒達に話して下さい」
(ブルー。今、行く)
 僕はセンタールームを後にした。
 この頃には殆どの機能が戻っていた。
 Cブロックへとブルーを連れて跳んだ僕の前にはあの懐かしいベルーガがあった。
「これにも医療システムが積んである。何かあった時の為に持って来た」
 ブルーに、今の状況を説明した。
「君はジョミーを追ってくれないか」
「僕もここに残っ…」
「だめだ」
「どうして!?」
「君はジョミーを追うんだ」
「だったら、ここを軌道に戻してから」
「君一人でか?これだけ大きなステーションなんだ。五千人の人の命もかかっている。そんなに簡単にはいかない。その間にジョミーが死んでしまってもいいのか?」
「え?」
「そうなってしまってもいいのか?」
「なんで、そんな事にはならない!」
「敵は海賊じゃない。マザー信奉者だ。君たちを作った人間達の巣窟だぞ。何を仕掛けてくるかわからない。やつらは君たちが僕ら(ミュウ)から離れた事を知り、この計画を練った。軍に恨みを持つ海賊をそそのかして、ここを襲わせ。その隙にジョミーを奪った」
「マザー信奉者…あの狂信集団…。だったら何故僕を置いて行ったんだ?」
「君は彼らには必要が無くて、彼が僕だからさ…」
「……」
「君は目的の為に手段を選ばない。彼は目的の為に死ねる」
「…ジョミー」
「…どっちが…やつらにとって扱いやすいかってだけの違いさ…」
「わ、わからない…。だけど、ここをこのままに…」
「行くんだ。ここは大丈夫だ。ミュウも軍もこちらに向かっている。やつらが何を仕掛けていても対処してみせる。いざとなったら、僕が皆に協力してもらって何とかして切り抜ける。だから…見送るしかない。そんなのは…もう二度としない。させない。見送るのも、見送らせるのも、もうしない!」
「……」
「ブルー。だったら僕が行く。それでいいか?」
 ジョミーがこの混乱で少しずつタイプブルーの力を取り戻しつつあるのはブルーにもわかった。
 だが、まだその力は前の頃とは程遠かった。
 だから、もしジョミーを止めなければならない状態になった時、もしかしたら、二人共失うかもしれなかった。
「僕が、助けに行く」
 ブルーと僕はベルーガに乗り込み銃創の治療を開始した。
 そしてベルーガはゆっくりと出てゆく、ハッチを開ける操作をしながら僕は思った。
 戦闘特化とは、こういうモノ。
 戦ってタイプブルーに戻ってゆく。
「これで、あの子達は無事だ。必ず、取り返せよ」

「センター。設置された爆弾は位置は把握できたか?」
「約三十個、教職員が処理しています」
 用意周到なやつらだ。エディ、クリスティナごとここを爆破する計画だったんだろう。
「ただの威力じゃない、ここを星に落とすつもりなんだ。周到に隠された物もあるはず…」
「星に落とす?そんな事が…」
「設置された位置と威力を考えたら計算は出るだろう?」
「そんな事をしたら…」
「海賊を完全に滅ぼす為に戦争をしたいんですよ。軍がね…。
 そう言いながらジョミーはセンターへ戻って来た。
「軍が?」
「海賊がじゃないのか?」
「海賊を騙しここを襲わせたのはマザー信奉者。その彼らを後ろから操っているのは軍の上層部の人間だ」
「まさか…」
「クラヴィス将軍が陰で動いている」
「そ、そんな」
「だから、一刻も早く。残りを見つけないと…次に何を仕掛けてくるかわからない」
 そう、僕の中の不安が消えない。
 やつらはとても酷い事を平然と出来るそんなのが集まっている。
 こんな生ぬるいやり方では満足していないはずだ…。
 きっと、まだ何かある。
 ここをアルテメシアへ落としたら、海賊との問題だけじゃない、周辺の東部の勢力が黙っていないだろう。
 僕や、ソルジャーズの誰かがここで死んだら、ミュウも黙ってはいない。
 ミュウとキースの軍と戦争になる。
 そして、弱体化した軍をクラヴィス将軍は派閥を使ってキースを総督の座から追い落とすだろう。
 また、戦争になる。
 そして、今度こそミュウと人は戻れない血塗られた道に進む。
 僕の願いが全て瓦解する。
 僕がここに居る意味も何も無くなってしまう。
 将軍はエディをどうしたかったのだろう。
 彼の母親、ミディアンをどう思っているのだろう。
 愛しているのか?
 憎んでいるのか?
 それとも、その両方なのか?
「ジョミー。新たに小型ですが…二十八個見つかりました」
「な…?」
 こうしている間にも軌道を外れているステーション。
「今、作業をしているのは、二人一組で十二人。処理中の者を省くと動けるのは八人か…」
 僕が跳ぶしかないか…。
 力を温存したいんだけどな…と思った時。
「ジョミー!俺達もやる。方法を教えてくれ」
 振り返るとそこにはキリアン達、一年が居た。
「ダメだ。練習の時みたいな物じゃないんだ。本物の爆弾なんだ」
「見ると館内のもあるじゃないか?それなら宇宙空間より動けるはず、それなら僕達でも出来る」
「だから危ないんだ」
「わかっているって、そんなの」
「でも」
「ジョミー」
 別の生徒から声がかかった。
 彼らは上級生だった。
「外にあるのは僕達が処理する」
「!」
「場所の詳しいデータを」
「だけど…」
「ここは僕達の学校なんだ。生徒だからって何もしないでじっとしてはいられない」
「危険なんだぞ」
「ここで待っていても危険だ」
「ジョミー。僕達に手伝わせてくれ」
「…キリアン、マックス…」
「…わかった。処理に向かう人を選んで。僕に教えてくれ」



  続く









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