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小春奈日和

赤ちゃんは、人間は、どのように言葉を獲得するの?
わが家の3女春奈と言葉の成長日記です。

616 物部氏と出雲 その4

2017年12月11日 01時18分34秒 | 大国主の誕生
大国主の誕生616 ―物部氏と出雲 その4―


 『釈日本紀』のにある『伊予国風土記』に記されていた、とされる一文に次のようなものが
あるのです。

 「伊予の国の風土記に曰く、乎知(おち)の郡の御嶋(みしま)。坐す神の御名は大山積の神、
またの名を和多志(わたし)の大神なり。この神は、仁徳天皇の御世にあらわれ、百済の国より
渡り来まして、津の国の御嶋に坐しき。この地を御嶋というのは津の国の御嶋からきたもので
ある」

 これを素直に読み取るなら、大山津見神は仁徳天皇の時代に百済からやって来た外国の神と
いうことになるのです。
 岩波古典文学大系『風土記』の校注を担当した秋本吉郎は、

 「国の百済から帰って来てか。百済を本国として来朝した意ではあるまい」

と、頭註に書いていますが、多くの研究者たちも大山津見神を日本古来の神と見ています。
 しかし、それならばなぜ「伊予国風土記逸文」がこの神を百済から来た神と記したのか、という
疑問を解決する必要があります。
 その背景を探っていくと、いろいろ興味深いことが現れてくるのです。

 大山津見神を祀る大山祇神社(おおやまづみ神社)は全国に分布しますが、その総本社は
愛媛県今治市大三島町にある大山祇神社です。言うまでもなく大三島町とは「伊予国風土記」に
ある乎知郡御嶋のことです。乎知郡は現在では越智郡と表記されます。
 ちなみに伊予国の三島と三嶋大社が鎮座する伊豆国の三島、そして摂津国の三島は三三島と
呼ばれます。

 さて今治市の大山祇神社ですが、大祝(おおはふり)は五家あり、その一家に越智氏がいます。
この越智氏が物部氏と同族なのです。
 同じく物部氏の同族に物部韓国氏(もののべのからくに氏)がいます。
 『新撰姓氏録』には、物部韓国連はイカガシコオを祖にする、と記されています。イカガシコオは
『新撰姓氏録』、『先代旧辞本紀』がともに、物部氏と同じくニギハヤヒの子孫としている
人物です。

 一方、大山祇神社の大祝、越智氏ですが。
 『日本後紀』延暦十八年八月の条には、伊予国人越智直祖継が左京の人、とあります。そこで
『新撰姓氏録』』の左京神別の項を見ると、越智直があり、「石上同祖」とあります。これは
「石上氏と始祖を同じくする」ということですが、その石上氏とは物部氏のことで、物部連の
本宗であった物部守屋が滅亡した後、残った物部の一族が名を石上に改めたものです。
 この他にも、『先代旧辞本紀』や『国造本紀』、『日本三代実録』も越智直を物部氏と同祖、と
しているのです。

 以上のように、物部韓国氏と越智氏はともに物部氏の同族となるわけですが、もっとも、大和岩雄は
『神社と古代民会祭祀』の中で、物部韓国氏は渡来系氏族で、それゆえに「韓国」という名を
称していたのではないか、と考察しています。

 ところで、物部韓国氏のひとりに物部韓国連広足という人物がおり、『続日本紀』や「令集解』に
よれば、この広足は呪禁師(道教の呪術を行う者)で、師は役小角(えんのおづぬ)である、と
いいます。
 役小角は葛城の鴨氏の流れを汲むといわれていますが、説話集の『日本霊異記』ではすぐれた
呪術者として描かれ、神をも使役したために一語主神が天皇に讒言をし、小角は伊豆に流されて
しまいます。流刑先で小角は海の上を歩行、あるいは、空を飛んで富士山で修業をする、という
生活を送っていた、と書かれています。
 伝承とは言え、ここでも伊豆の三島が関係してくることになります。
 しかも、大和岩雄は、摂津の三島が物部韓国氏の本貫であると考えているのです。

 物部韓国連は、『新撰姓氏録』には摂津国の項にその名が記されていますが、『先代旧辞本紀』には
三島韓国連の名が見られます。大和岩雄はこの三島韓国連を物部韓国連のこととして、物部韓国氏の
本貫を摂津の三島と考えたのです。
 その『先代旧辞本紀』に記されている三島韓国連ですが、同書によると、ニギハヤヒ十四世孫の
物部塩古を「葛野韓国連の祖」、塩古の弟の物部金古を「三島韓国連の祖」と記されています。

 その『先代旧辞本紀』には、越智氏はニギハヤヒ六世孫の物部大市を祖にする、と記されていますが、
この大市の兄が、『日本書紀』崇神天皇六十年の記事にある、出雲振根の持つ武日照命の神宝を求める
使者として出雲に赴いた武諸隅(たけもろすみ)なのです。
 そして、先述のように、武諸隅の女婿が、『日本書紀』垂仁天皇二十六年の記事にある、出雲の
神宝を検校するために出雲に赴いた、物部十千根なのです。

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