星を見ていた。

思っていることを、言葉にするのはむずかしい・・・。
良かったら読んでいってください。

クリーム色の家(2)

2011-10-16 22:39:18 | クリーム色の家
目覚ましが鳴っている。ベッドサイドにおいてある携帯を手探りで掴んだ。無意識に適当なボタンを押す。
しばらくしてまた耳障りな音がする。握っていた携帯を開いて再びボタンを押す。静かになった。

さきほどよりもだいぶ時間が経ったような感覚がする。薄い布団の中で丁度いい温かさだと思う。辺りはまだうす暗かった。何時だろう、とぼんやり考えているとまた手の中の携帯が音とともに振動している。咄嗟に時計を見る。5時40分。
がばと起きあがる。30分も過ぎている。慌ててパジャマ代わりのTシャツを脱いで下着を着け用意しておいた服に着替える。

体中がだるい。重い足取りで階段を下りた。私が居間に駆け込むのと同時に夫が出て行く。すれ違う。でも体はぶつからない。

何も言わずに夫は玄関に向かう。車の鍵を持っている。また出勤に車を使うのだとぼんやりと思う。私も何も言わず洗面所へ向かう。鏡の中の自分を数秒じっと見てから顔を洗った。覇気のない顔だと思う。夫が使った整髪料の香料の匂いが立ちこめている。吐きそうになる。洗面所の窓を全開にした。外は曇っている。風はない。

洗った顔に化粧水をパッティングすると少しは張りのある顔になったような気がした。髪を梳かす。洗面所の蛍光灯のランプの下で白髪が光ったのが目に入る。最近白髪が増えたと思う。これ以上増えてきたらさすがに染めないといけないのだろう。

手早く化粧を済ませたせいかコーヒーくらいは飲む時間がありそうだ。一人用のパックを取り出しコーヒーを入れた。時間が無いので立って飲む。その傍ら子供用のおにぎりを2個作った。時計を見る。6時。子供を起こさないといけない。

「りゅうー。起きて。るーちゃん。」
子供部屋に入ると、かすかに寝息を立てて龍は気持ちよさそうに眠っている。毛布をはがし、体を揺さぶる。横向きに丸まって寝ている姿を見ると、ほんのまだ1、2歳の頃、この体勢とまったく同じ姿で寝ていたのを思い出す。サイズが違うだけでほとんどあの頃と変わらないように思える。体を揺さぶっても起きないので軽くたたく。
「起きて。学校だよ。るーちゃん。起きて。」
このまま起こさないでおくときっと私が仕事に出た後、寝過ごしてしまうだろうと思うと何が何でも起こさないといけないと思う。「起きて。ほらー。起きるよー。」
「うーん。今起きるよう。」
寝ぼけた顔で言うが一向に起き出す気配がない。仕方ないので腕を引っ張って無理やり起こす。
「ほら。いい加減にして。起きるよ。」
なんとか起きあがったのでお尻を叩いて階下へ行くように促す。
「ママもう行くからね。おにぎり食べて行くんだよ。ちゃんと歯磨きしてね。鍵だけは絶対ちゃんと掛けて行ってね」
「わかった。」「いってらっしゃい。」
大丈夫だろうか。また職場に行ったら確認コールをしなくては、と思いながら慌てて玄関を飛び出した。バス停まで歩きながら、空を見上げる。雨は降りそうもない。今日は傘を持って行きなさい、と言わないと持っていかないので、雨が降りそうな日は傘を玄関に出しておく。今日は時間が無くて天気予報を見ていなかった。置傘をしておけばいいのに、一度持って帰ってくると二度と持っていかないから困る。こうして朝は、子供のことを考える余裕があるけれど、いったん仕事に行くと子供のことはあまり考えない。例え雨が降って来たからと言って、雨が降ったから会社を早退する訳にはいかないのだし、と思う。

バスに乗るとメールをチェックした。私にメールをしてくる人などほとんどいないのだが、また仕事になると日中はメールを見ている暇がない。昨晩誰かから電話が入っていた。着歴を見ると見なれない番号だった。咄嗟に、この間の知らない誰かからの電話と同じ人かと思うが、この間の番号は消してしまったのだから確認しようがなかった。とりあえずまた携帯を鞄にしまった。


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コメント
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