ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

マーラのささやき

2010-01-24 14:18:05 | Weblog
先日友人が泥酔して怪我をしたそうだ。

よく「酔っぱらって・・・」という話は聞く。
夜中にクルマに当て逃げされた、自分で転んだ、大切なものを落としたなど、
笑い話になるものから、病院通いになるものまで、たくさんある。

私もお酒を飲むのは好きなほうなので、他人事ではないなあ、と思っている。
仏教は好きだし、私の支えになってくれるものだと思うけど、
いざ、修行するか!と思い立つと、
「禁酒は守れないだろう」というマーラのささやきが聞こえ、
いつも捉えられてしまって、踏み出せない。
お酒の味を覚える前に、出家すべきであったといつも思う。

5年くらい前、いい気持ちで酔っぱらっていたときに、
ふと、「ああ、私は足を踏み外して死ぬんだわ」と思った瞬間がある。
なぜか、絶対シラフではなく、酔ってるときに死ぬと思った。
酔って体中がゆるみ、蓄積していたものが流れて行く感じが、
きっと死のイメージに近かったんだろうと思う。
ストレスが流れ去ってラクになることもあるけど、大切なものも同時に流れて行く。
充実した寂寞感。それが私にとっての酔った感覚。

3年前、父が酔って階段を踏み外して亡くなったとき、
「本当に、こんなことってあるんだ」と思った。
確かにショックだったけれども、あまりにも父らしいので
「さいごまで、やりやがったな」という気分だ。
父を失ったことは悲しいけれど、死に方に対しては、まったく文句がない。
これが「生き様」というものだろうか。

最近、友人がお酒に酔ったうえでの失敗談を語り、
ときに恥ずかしそうにしていると、
「たったそれだけの怪我でよかったじゃない。でも、生き恥をさらしたか!」と、
思い切りからかうことにしている。
本当に深刻な後遺症がのこった人には、言えないけど。

私には見えないけど、たまに父の幽霊を見る人がいて、
その人たちには「失敗したよ」と語っているらしい。
お酒に酔った上での失敗談は、話さなければいいのに、話したくなってしまうようだ。
父も話す相手がいて、よかったと思う。