人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(解説編2ー台本について)2020年 ホセ・クーラ脚本・作曲のオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」世界初演へ

2020-01-20 | クーラ脚本・作曲オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」

 

 

2020年1月29日のクーラの「モンテズマと赤毛の司祭」初演にむけて、引き続き、オペラの詳細な情報が発信されています。

前回の(解説編)に続いて、2回目をまとめました。このシリーズ、たぶんまだまだ続きそうです。今回、まったくのオリジナルの脚本・音楽の新作オペラであり、成功させるために、クーラも、ハンガリー放送芸術協会も、可能な限り、このオペラを理解してもらえるように努力し、キャンペーンをしているのだと思います。

オペラの内容・背景について、説明が古典文学や歴史的事実に関わっていることもあり、教養に欠ける私の和訳はいつも以上に不十分かと思います。間違いや事実誤認、誤訳等、お許しいただき、ぜひ元の記事を見ていただければと思います。 

 

 


 

 

≪クーラのFBより≫

 

●台本についてのクーラの説明

 

先週、「モンテズマと赤毛の司祭」を私が書くことになった理由を紹介した。
今日は、台本の起源についてもっと話したいと思う...。
 
【台本について】
 
ーー独自の加筆と参考資料

前述のように、「モンテズマと赤毛の司祭」は、アレホ・カルペンティエールの小説にもとづいている。
もっと適切な言い方をすれば、それに触発された。実際、例えばモンテズマの死につながった出来事の説明など、多くの瞬間が、カルペンティエールの本にはなく、明らかにドラマ上の理由から、追加が必要だった。
 
したがって、ディエゴ・ドゥラン『ヌエバ・エスパーニャのインディアスの歴史』、ベルナル・ディアス・デル・カスティーリョ『メキシコ征服記』、エルナン・コルテスの皇帝チャールズ5世との2番目の手紙や、フランシスコ・デ・アギラールの『Relación breve de la conquista de la Nueva España』は必須だった。
 
これらの歴史的なテキストとは別に、執筆の過程で、愛するシェークスピアへのオマージュを含める必要性を感じた。ロミオとジュリエット第1幕5場から選んだ断片を引用した。正確には、舞踏会が準備されている場面の数節、主人が怠惰な召使を探しまわる様子など。
 
ーーデカメロンをヒントにイタリアの恋愛詩を挿入
 
しかしもし1つの大きなライセンスというなら、「Stornello(ストルネッロ)」(*補足=イタリアの恋心を歌うイタリアの庶民的な詩で、14世紀から十六世紀に大流行したものらしい)を挿入したことだろう。男性と女性がお互いに、どちらが最も小粋な戯れ歌を思いつくかを競う。14世紀の2編の詩にもとづくもので、タイトルがボッカチオの『デカメロン』に引用されている。調査に長い時間がかかったが、ついにこの2編の全文を、ジョズエ・カルドゥッチ(*イタリアの詩人、古典文学者で、ノーベル文学賞受賞者)著の「Cantilene e ballate、Strambotti e Madrigali」という本のなかに見つけた。
 
ーーオペラで使う言語をどうするか
 
台本をすすめるうえで決定的な決断の1つは、その主要言語を定めることだった。ヴェルディのオペラ「運命の力」のように、スペインを舞台にイタリア語で人々が語りあったり、または、ワーグナーのパルシファルのように、イギリスの物語(中世の騎士道物語、英アーサー王伝説に登場する騎士パーシヴァル)をドイツ語でーー無数のなかの2つの例だが、確かにこのようにすることも可能だった。しかし、ヴェルディとワグナーの時代にはほぼ必須条件だったが、今日の台本作家は、このジレンマを処理するためにもっと多くの自由裁量権を持っている。
 
2012年に50歳になったとき、最も親しい友人の何人かとパーティーを開催した。私がさまざまな国に住んでいたこと、また、それぞれからの友情の結果として祝福されていることを考えると、避けられないことだが、私の家はまるで国際的な規模での不協和音のように聞こえた…。しかし驚いたことに、誰もが自分の言語を話していても、理解しようと努力し、面白いジェスチャーを使って、最終的には彼らはみんな、コミュニケーションをとることができた。イエス、いくつかの誤解があったが、これらはイベントを楽しくした要素の一部となり、コメディが提供された。
 
多言語を使うことによる喜劇の可能性
 
その個人的な経験をもとに、また多言語アプローチにより可能になる喜劇の可能性を試してみたいと考え、私はオペラのすべての登場人物に、自分の母国語で自分自身を表現させることにした。彼ら自身のバックグラウンドに応じてやるように。 
 
これがマッドキャップ・コメディではなく、よりリアリスティックな作品の場合は、互いを適切に理解する方法の特定の技術について議論することもできるだろう。しかし、ここでの言語の衝突は、単一の統一された舌よりも、作品の性質をより優れたものにするだろう。

来週は、音楽についての詳細を!
 
 
 

 


 

 

 

≪ハンガリー放送芸術協会FBより≫

 

●メディアのインタビューをうけるクーラ

1月29日、私たちはリスト音楽院(音楽アカデミー)で、ホセ・クーラによる新しいオペラ「モンテズマと赤毛の司祭ーーオペラブッファ・マ・ノン・トロッポ」を初演する。公演の10日前の今日、私たちはプレス向けの日を持ち、マエストロ・クーラはいくつかの機関に対し、この作品の特徴について語った。

 

 


 

 

≪リハーサルの様子≫

 

リハーサル風景などの写真はまだほとんど公開されていませんが、新作オペラであり、すでに昨年からリハーサルは始まっていたようです。登場する3人の作曲家のうちの1人、ヘンデル役の方が投稿してくれました。

 

●ヘンデル役のバス・バリトン、ドミニク・ブラソさんのFBより

”ホセ・クーラ率いる「モンテズマ」のリハーサルがすでに始まっている。マエストロ・クーラと一緒に働くのは大変に光栄だ。”

 

 

 


 

 

今回のクーラの解説を読んで、脚本を執筆・仕上げるにあたって、クーラが、様々な参考文献を研究し、内容を豊かによりドラマティックに、面白くするために努力してきたことがよくわかりました。

メキシコのアステカの王モンテズマを主人公としたドラマを描くために、アステカ帝国を侵略、征服した側のスペイン人による著作や手紙などを読み込み、またドラマを豊かにするために、シェークスピアやボッカチオなど古典文学の世界を探求して材料を集めるなど、さまざまな努力と苦労があったようです。プロの作家、脚本家にとっては当然のことでしょうが、クーラのように、ミュージシャンとして公演をこなし、作曲や指揮をしながらの作業は、いかにハードワーカーのクーラにとっても、かなり大変な時間のかかることだったのではないかと思います。しかしクーラ自身には、楽しく、好奇心がそそられる知的探求という面がつよかったのかもしれません。

リハーサルの写真には、ピアノと譜面を前に、キャストらしき人とクーラの姿が見えます。全くの新作、書下ろしのオペラであり、初めて音になるわけで、作曲家・指揮者のクーラにとっても大きなチャレンジ。キャストの方たちもオケのメンバーにとっても当然ですが、初めての物語であり初めての音楽です。とてもエキサイティングであり、自分が譜面に書いたオペラが、実際に音として鳴り、歌として歌われ、キャストとオーケストラによって音楽ドラマとして組み立てられていく様子に立ち会うのは、どれほどわくわくすることでしょう。公演の映像化とともに、ぜひ、準備過程を含めたメイキング・ビデオのような形で紹介してほしいものです。

 

 


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