Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

2015年度前期刑法Ⅰ(総論) 第13週 練習問題

2015-07-04 | 日記
 第13週 練習問題

(1)基本問題
1 単独で行なえる犯罪を共同して実行した場合を「任意的共犯」という。最初かか複数人で行なうことが予定されている場合を「必要的共犯」という。(     )
 必要的共犯には、「集団犯」(または「多衆犯」)と「対抗犯」がある。

2 集団犯には「       罪」、「       罪」、「       罪」などがある。

3 対抗犯には「       罪」、「       罪」、「       罪」などがある。

4 公務員の夫Aと非公務員の妻Bは、入札予定前に落札予定価格を業者に教えた見返りに、共同してワイロを受け取った。Aは公務員であるので、公務員のみを行為主体とする収賄罪が成立する。しかし、Bは公務員ではないので、収賄罪の行為主体にはなりえないので、収賄罪の共同正犯にはならず、収賄罪の幇助にしかならない。(     )

5 身分者が行なった場合と、非身分者が行なった場合とで法定刑が加重・減軽される犯罪のことを「不真正身分犯」または「加減的身分犯」といい、例えば保護責任者遺棄罪や常習賭博罪がこれにあたる。(     )

6 賭博の非常習者Aが、常習者Bに対して賭博の資金を貸し与えて、賭博を幇助した場合、単純賭博罪の幇助犯が成立する。(     )

7 尊属殺人罪(旧200)によれば、子どもが親を殺害すれば、通常の殺人罪よりも刑が加重されますが、それが設けられていた時代の判例によれば、加重的身分者である子どもAが、親Bを殺害するよう友人Bを教唆して実行させた場合、Bには通常の殺人罪が、Aには尊属殺人罪の教唆が成立する。(     )

8 このような判例の考え方を一般化することができるならば、例えば賭博で大儲けをしたために、真面目に働いて金銭を得ることがバカらしくなったAは、賭博の経験のない友人Bに賭博の仕方を教え、賭博させた場合は、単純賭博罪の教唆が成立することになる。(     )

9 不作為犯の共犯の例としては、A・BがXの家に立ち入った後、Xから退去するよう求められたにもかかわらず、退去しない「       罪」の共同正犯がある。

10 不作為による共犯の例としては、実子Xを虐待する内縁の夫Bを静止せずに、見て見ぬふりをした実母Aの事案では、Xが虐待死した場合、「         罪」の幇助の成立が認められている。


(2)練習問題
1集団犯
・Aらは日本で内乱を実行するために、組織的な暴力的デモを計画した。Aが参謀本部の部長になり、組織メンバーのBが副参謀、そのともでCが資金調達、Dが実行部隊を務めた。彼らは、デモ行進を開始したとたん、警官隊により鎮圧された。Aの供述によると、組織メンバーのEが警官隊の活動を妨害するために、近くで交通渋滞を引き起こしたこと、事前に組織メンバーではないFから資金を受けていたことが判明した(Fはデモに不参加)。

 A・B・C・D 内乱罪の正犯(集団犯なので、騒乱罪の共同正犯と表現するのは不適切)

 E 内乱罪の正犯または幇助犯?

 F 内乱罪の幇助犯?


2対抗犯
・交通事故を起こしたAは、Bが弁護士資格を持っていないことを知りながら、Bに依頼して、被害者Xとの示談交渉に当たらせた。

 B 非弁活動罪の正犯

 A 非弁活動罪の教唆犯?
   立法者意思


・AはBに自分を殺すよう依頼した。Bは、Aを殺そうとしたが、殺すに至らなかった。

 B 嘱託殺人未遂罪の正犯

 A 嘱託殺人未遂罪の教唆?
   Bが惹起した「A嘱託殺人未遂」は、Aから見た場合、法益侵害・危殆化か?
   違法の相対性(純粋惹起説・混合惹起説)


・Aは、Bに対して、「暴力団から離脱したければ、日々を詰めよ」と命じた。Bは左手の小指を切り落とした。

 B 自傷(傷害罪の構成要件に該当しないので、不可罰)

 A 傷害罪の教唆?
   Bが惹起した「A自傷」は、Aから見た場合、法益侵害・危殆化か?
   違法の相対性(純粋惹起説)


・教師Aは、授業中にノートに落書きをした生徒Bに対して、そのノートを破棄するよう指示した。Bはノートを破り捨てた。

 B 財産の任意的処分(器物損壊罪の構成要件に該当しないので、不可罰)

 A 器物損壊罪の教唆?
   Bが惹起した「Aノート破棄」は、Aから見た場合、法益侵害か?
   違法の相対性(純粋惹起説)


・AはBに教唆してわいせつ文書を頒布させ、それを受け取った。

B わいせつ文書頒布罪の正犯

A わいせつ文書頒布罪の教唆?
  Bが惹起した「わいせつ文書頒布」は、Aから見た場合、法益侵害か?
  違法の相対性(純粋惹起説・混合惹起説)


・罪を犯したAは、妻Bに働きかけて、その事件の証拠を隠滅させた。

 B 証拠隠滅罪の正犯(ただし、105の適用可能)

 A 証拠隠滅罪の教唆犯?
   Bが惹起した「A刑事事件の証拠隠滅」は、Aから見た場合、法益侵害か?
   違法の連帯性(修正惹起説)


2共犯と身分
・構成的身分犯の意義を説明し、その例を挙げなさい。


 非公務員Aは、公務員Bの職務に関連して、企業Cからのワイロを共同して受け取った。
 C 贈賄罪の正犯

 A・B 収賄罪の共同正犯正犯?
     刑法65条1項


 非公務員Aは、公務員Bに働きかけ、その職務に関連する企業Cからワイロを受け取らせた。
 B 収賄罪の正犯

 C 贈賄罪の正犯

 A 収賄罪の教唆犯
   刑法65条1項


・加減的身分犯の意義を説明し、その例を挙げなさい。


 賭博常習者Aは未経験者Bと一緒に賭博を行なった。
 A・B 刑法65条2項 身分者Aには常習賭博罪の正犯
             非身分者には単純賭博罪の正犯

A・Bは単純賭博罪の範囲で共同正犯(単純賭博の違法性の連帯)
             常習性は個別化(賭博罪の責任の個別化


 賭博の常習癖のないAは、常習者Bに資金を提供して賭博をさせた。
 B 常習賭博罪の正犯

 A 刑法65条2項 「身分のない者には通常の刑を科する」
           Aは常習癖のない者(身分のない者)
           →(通常の刑の罪である)単純賭博罪の教唆


 賭博の常習者Aは、常習癖のないBに資金を提供して賭博をさせた。
 B 単純賭博罪の正犯

 A 刑法65条2項 「身分のない者には通常の刑を科する」
           常習者Aは「身分のない者」? 
           →Aには刑法65条2項は適用されず、常習賭博罪の教唆 


3不作為と共犯
・不作為犯の共同正犯
 A・Bは、正当な理由によりX宅に立ち入った後、Xからの退去要請に反して退去しなかった。

 A・B 退去すべき共同義務→共同義務の共同違反+その認識(故意)=不退去罪の共同正犯


・不作為犯に対する教唆
 非身分者Aは、保護責任者Bを教唆して、実子Xを遺棄させた。
 B 保護責任者遺棄罪の正犯(これは加減的身分犯)

 A 刑法65条2項 通常の刑にあたる単純遺棄罪の教唆


 非身分者Aは、保護責任者Bを教唆して、実子Xを保護させなかった。
 B 保護責任者不保護罪の正犯(これは構成的身分犯)

 A 刑法65条1項 保護責任者不保護罪の教唆?
   刑法218条の前段は「加減的身分犯」、後段は「構成的身分犯」
   同一の罰条にある2つの罪は、規定形式が異なるが、実質的には同じ
   →保護責任者不保護罪の教唆に対して、「通常の刑」である単純遺棄罪の教唆の刑を科す


・犯罪に対する不作為の幇助
 実母Aは、実子Xに対する内縁の夫Bの虐待を止めなかった。Xは虐待死した。

 B 傷害致死罪の正犯

 A 幇助は作為形式
   不作為による幇助は、Xの生命・身体の安全を確保すべき作為義務に反した不作為
  では、Aに作為義務はあるか? Aの保障者的地位 + 作為の可能性 + 作為の容易性
 AはXの実母であり、Bの内縁の妻である。Xの生命・身体の安全を確保すべき義務はあり、またそれを害するBの暴行を阻止すべき義務がある。Aはそれを行ないうる状況にあり、さらにそれは容易であった(札幌高裁の事案の場合)。→Aの不作為は幇助類型に該当

 幇助の因果性 作為義務を尽くせば、十中八九、Bの暴行に影響を与え、それを弱めることができ、それによって虐待死を回避することができた。→不作為と結果の因果関係


(3)応用問題
1Aは、Bに「小学校に配布するので、わいせつ写真を大量に購入したい」と働きかけた。Bは、それに応じて、数千枚のわいせつ写真を印刷して、Aに販売した。
・事実関係の整理と問題の所在
 B
 A


・前提の議論
 共犯の処罰根拠

 Bが惹起した性的秩序の侵害・危殆化は、もちろんBから見れば法益侵害であり、違法である。Aに教唆が成立するためには、それがAから見ても違法でなければならない。性的秩序の担い手は社会全体であり、Aはそのなかに含まれるので、Aもまた被害当事者の1人である。従って、Aがわいせつ文書の頒布(譲渡・販売)に対応する通常の行為(譲受・購入)を行なっている限りは、Bの行為を教唆したとして処罰する実質的な必要性はない。わいせつ文書の頒布を処罰する一方で、譲受・購入の行為を処罰する規定が設けられなかったのも、立法者のところでそのような政策的な判断があったものと思われる。

・展開
 しかし、その被害の規模と影響は、Aのところにとどまらず、小学校の児童や地域全体に及んでいる。それは甚大である。このことに鑑みると、Aが行なった行為は通常の譲受・購入の域を超えているため、その事態に即して、Aの行為がBのわいせつ文書頒布罪の教唆にあたるかどうかをあらためて検討する必要がある。


・結論


2賭博の常習者Aは、初心者Bに賭博の方法を教えた。Bは賭博をして、大儲けした。
・事実関係の整理と問題の所在
 B
 A

・前提的議論
 単純賭博罪と常習賭博罪の関係
 刑法65条2項の適用方法

・展開
 65条2項 「身分のない者には通常の刑を科す」の意義

・結論

3A離婚後、実子Xを育てていたところ、Bと内縁関係に入り生活していたが、BのXに対する虐待が日常化し、それを止めようとすると、自分にも暴力が向けられた。ある日、いつものようにBがXを虐待していたが、Aは「止めても無駄だろう」と思い、止めなかった。すると、Bはいい気になって虐待をエスカレートし、Xを死亡させた。

・事実関係と問題の所在
 B
 A Bの罪に対する幇助?

・前提的議論
 幇助の意義  「物理的援助」または「心理的援助による正犯故意の強化」による正犯の促進
 幇助の規定形式 作為形式。不作為の場合は「作為義務に反した不作為」であることを要す。 作為義務論 保障者的地位 作為の可能性と容易性
       加重結果との因果関係 作為義務の履行と結果回避の十中八九の可能性


・展開
 A 保障者的地位
   作為可能性
   作為容易性
   結果回避可能性

・結論