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論文)光による胚軸からの不定根形成の制御

2021-04-27 21:30:36 | 読んだ論文備忘録

Phytochrome B inhibits darkness-induced hypocotyl adventitious root formation by stabilizing IAA14 and suppressing ARF7 and ARF19
Li et al.  Plant Journal (2021) 105:1698-1702.

doi: 10.1111/tpj.15142

シロイヌナズナの胚軸を土で覆うと不定根が発達する。よって、光、水分もしくは栄養分が胚軸からの不定根形成に関与していると考えられる。中国科学院上海生命科学研究院植物生理生態研究所Chao らは、シロイヌナズナの胚軸不定根(HAR)形成と光の関係について調査し、光はHAR形成に対して負に作用し、2日間の暗処理でHAR形成が誘導されることを見出した。光受容体の変異体を用いた解析から、赤色光はフィトクロムB(PHYB)を活性化することで、青色光はクリプトクロムCRY1、CRY2を介してHAR形成を阻害することが判った。不定根形成にWUSCHEL関連ホメオボックス転写因子のWOX11とWOX12が関与していることが最近報告されたが、これらの転写因子は暗所で誘導されるHAR形成には関与していなかった。一方で、根分裂組織細胞のマーカー遺伝子であるWOX5LBD16 は暗処理した胚軸の内鞘細胞で発現しており、変異体の解析から、WOX5/WOX7およびLBD16/LBD29はHAR形成に関与していることが判った。WOX5/WOX7LBD16 は側根(LR)形成においてARF7、ARF19のターゲット遺伝子になっており、arf7 arf19 二重変異体は暗処理によるHAR形成が見られなかった。また、ARF7、ARF19の活性を抑制し、LR形成を負に制御しているIAA14の機能獲得優性変異体iaa14/slr-1 は暗処理によるHARの誘導が起こらなかった。phyB arf7 arf19 三重変異体は、暗黒下でも赤色光下でもHARが誘導されないことから、ARF7、ARF19はPHYBよりも下流でHAR誘導に作用していると考えられる。phyB iaa14 二重変異体はiaa14 単独変異体と同じようにHAR形成が抑制されることから、IAA14もまたPHYBの下流でHAR形成を制御していると考えられる。よって、PHYBはIAA14-ARF7/ARF19モジュールを介してHARの発達を制御している。phyB 変異体においてIAA14 の発現量は野生型と同等であり、ARF7ARF19 の発現量は減少していた。よって、PHYBはIAA14もしくはARF7/ARF19の転写後制御をしているものと思われる。解析の結果、PHYBはIAA14、ARF7、ARF19と物理的に相互作用をし、クリプトクロムをまたこれらのタンパク質と相互作用をすることが判った。そして、この相互作用により、PHYBは赤色光下でIAA14の分解を抑制すること、ARF7やARF19の転写因子活性を抑制することが確認された。以上の結果から、暗黒処理はIAA14の分解を促し、このことによってARF7、ARF19が活性化し、下流に位置する胚軸不定根誘導に関与する因子の発現が活性化されると考えられる。

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