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論文)MORE AXILLARY GROWTH2(MAX2)と非生物ストレス応答

2014-02-05 21:30:49 | 読んだ論文備忘録

Regulation of Drought Tolerance by the F-Box Protein MAX2 in Arabidopsis
Bu et al.  Plant Physiology (2014) 164:424-439.
doi:10.1104/pp.113.226837

シロイヌナズナのF-boxタンパク質MORE AXILLARY GROWTH2(MAX2)は、分枝、光形態形成、老化といった様々な過程の制御に関与している。テキサス大学オースティン校Haq らは、以前に、max2 変異体は種子発芽においてアブシジン酸(ABA)に対する感受性が高くなっていることを見出し、そのことについて詳細な解析を行なった。発芽10日目の野生型シロイヌナズナおよびmax2 変異体芽生えを7日間潅水を止めた後に再び潅水したところ、ほぼ100%のmax2 変異体で成長回復が見られず、乾燥ストレスに対して高い感受性を示した。また、max2 変異体の切り葉は野生型よりも蒸散速度が早く、このことからも、max2 変異体が乾燥に対する感受性が高いことが示唆される。max2 変異体の葉の気孔の開度や気孔の密度は野生型と比較して有意差は見られないことから、max2 変異体の乾燥条件に対する感受性の高さは気孔の構造によるものではないと考えられる。剥離した葉の表皮をABA処理するとmax2 変異体の気孔は野生型よりも開いており、max2 変異体はABAに対する感受性が低下し蒸散量が多くなっていると考えられる。切り葉を乾燥条件に曝すと、max2 変異体の切り葉の気孔は野生型よりも開いていることから、max2 変異体の蒸散量が多いことと気孔が開いていることには強い相関があると考えられる。乾燥に対する応答性はクチクラ層の厚さと関連があるが、max2 変異体の葉や茎のクチクラ層の厚さは野生型よりも薄く、MAX2はクチクラ層の厚さの制御にも関与していることが示唆される。実際に、クロロフィル滲出試験を行なうとmax2 変異体は野生型よりも早くクロロフィルが滲出した。よって、max2 変異体のクチクラ層が薄いことも乾燥感受性に関与していると考えられる。芽生えを人工乾燥処理をした際のABA応答遺伝子の発現誘導を見ると、max2 変異体は野生型よりも誘導量が減少しており、このことも乾燥感受性の表現型に関与していると思われる。また、max2 変異体はABAの生合成、異化、輸送、シグナル伝達に関与する遺伝子の乾燥処理による発現誘導量が野生型よりも低くなっていた。乾燥処理をすると内生ABA量が増加するが、野生型とmax2 変異体でABA量に差が見られないことから、max2 変異体の乾燥感受性の増加はABA含量の差によるものではないと考えられる。MAX2 を過剰発現させた形質転換体を乾燥処理した際の表現型は野生型と同等であることから、MAX2は乾燥ストレス応答における制限因子とはなっておらず、この応答には他の因子も関与していると思われる。max2 変異体種子は、ABA存在下で発芽させた際の子葉の緑化阻害が野生型よりも強く表れ、ABAに対する感受性が高い。したがって、MAX2は発芽初期の芽生えにおいてABAシグナルの負の制御因子として機能していることが示唆される。また、max2 変異体芽生えは野生型よりも強くABAによる根の成長阻害を受けた。よって、max2 変異体は種子発芽および芽生えの初期成長過程においてABAに対する感受性が高いと考えられる。ABAに応答した種子発芽や芽生えの成長の制御に関与している転写因子のABI3やABI5の機能喪失変異体にmax2 変異を導入した二重変異体を観察したところ、max2 abi3 二重変異体、max2 abi5 二重変異体ともに、max2 単独変異体において観察される芽生えの胚軸伸長量増加、成熟個体での分枝の増加が起こった。一方、芽生えをABA処理した際の胚軸伸長阻害や子葉緑化阻害に関しては、abi3 単独変異体やabi5 単独変異体と同様にABA非感受性を示した。したがって、MAX2はABA応答に関してABI3やABI5よりも上流で機能しているものと思われる。乾燥種子でのABI3ABI5 の転写産物量、およびこれらの下流に位置するターゲット遺伝子のArabidopsis Thaliana Late Embryogenesis Abundant1AtEM1 )の転写産物量は野生型とmax2 変異体で差が見られないが、種子を浸漬した後のこれらの転写産物量はABA処理に関係なく野生型よりもmax2 変異体で高くなっていた。MAX2 転写産物量は乾燥種子では多いが、種子を浸漬すると減少し、その際にABA処理をしてもMAX2 転写産物量の変化に違いは見られなかったが、芽生えのMAX2 転写産物量はABA処理によって減少した。abi3 変異体やabi5 変異体のMAX2 転写産物量は野生型よりも低くなっていた。したがって、ABAはMAX2 の発現を制御しており、この制御はMAX2によるABAシグナル伝達に関与していることが示唆される。max2 変異体種子は、NaCl、マンニトール、グルコースの添加によって浸透圧ストレスを与えた条件で発芽させた際の子葉緑化の阻害の程度が野生型よりも強く、MAX2は浸透圧ストレス応答を負に制御していると考えられる。MAX2はストリゴラクトンのシグナル伝達に関与していることから、ストリゴラクトン生合成経路の変異体max1max3max4 の芽生えのABAや浸透圧ストレスに対する感受性を調査したが、これらの変異体はmax2 変異体のような高い感受性は示さなかった。したがって、ABAや浸透圧ストレスに対する高感受性表現型はmax2 変異体でのみ現れ、MAX1、MAX3、MAX4によるストリゴラクトン生合成はこれらの応答には直接には関与していないと思われる。以上の結果から、MAX2は非生物ストレスに対する応答に関与していることが示唆される。

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