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論文)SHORT-ROOT、SCARECROWは葉の成長も制御している

2010-11-14 16:10:18 | 読んだ論文備忘録

SHORT-ROOT and SCARECROW Regulate Leaf Growth in Arabidopsis by Stimulating S-Phase Progression of the Cell Cycle
Dhondt et al.  Plant Physiology (2010) 154:1183-1195.
doi:10.1104/pp.110.158857

シロイヌナズナのSHORT-ROOT(SHR)とSCARECROW(SCR)はGRASファミリーの転写因子で、根端分裂組織の幹細胞の維持に関与している。SHRは皮層と内皮を形成する非対称分裂と内皮細胞の運命特定に関与しており、SCRはSHRの直下において機能している。SHRSCR の機能喪失変異体では、静止中心が機能を失い、根の成長が抑制される。これらの変異体のシュートでは、葉の維管束鞘細胞層や胚軸、花茎の内皮に乱れが生じ、わい化して葉が小さくなる。これらの形態変化が根の成長抑制による二次的な影響なのか、ベルギー ゲント大学のInzé らは、shrscr 変異体の詳細な解析を行なった。shrscr 変異体の種子は正常に発芽するが、その後の成長は著しく阻害され、葉数と葉面積が減少する。変異体の根端分裂組織は完全に成長が止まっているのに対して、茎頂分裂組織の活性は部分的な阻害に留まっている。SHRSCR の発現は、成長過程ある若い葉全体で発現し、葉が拡張するにつれて発現部位が葉脈に限定される。SHR 遺伝子のコード領域にEn-1トランスポゾンが挿入されたshr-3 変異体では、トランスポゾンの転移によって根やシュートの成長が野生型と同等になる復帰突然変異体が出現する。その中で、根の部分のみトランスポゾン転移が起こり正常に根が成長するが、シュートでは転移が起こらずにわい化したままものが見られることがある。よって、シュートにおけるSHR の発現は、根の遺伝子型や表現型に関係なく、ロゼット葉の成長に必要であると考えられる。野生型植物芽生えの根を切り詰めると、葉の細胞のサイズと数が減少して葉が小さくなるが、shrscr 変異体では葉の細胞のサイズに変化は見られない。したがって、shrscr 変異体のシュートの表現型は根の成長低下が直接の原因ではなく、SHR/SCRの機能喪失による葉の細胞数の減少が引き起こしていると推測される。この細胞数の減少は、細胞分裂速度の減少によってもたらされており、shr 変異体では葉の成長の早い時期に細胞周期活性が低下していることが確認された。また、shrscr 変異体の葉では核内倍加も減少していた。葉においてSHRSCR によって発現制御を受ける遺伝子群をマイクロアレイによって網羅的に解析したところ、shrscr 変異体の両方でオーキシン応答、ブラシノステロイド応答、クロマチン構築関係の遺伝子群の発現が低下し、フラボノイド生合成、生物/非生物ストレス応答、アブシジン酸関連の遺伝子群の発現が増加していた。shrscr 変異体の葉は、細胞周期のS期にある細胞が多く、S期のマーカー遺伝子のヒストンH4 遺伝子の発現量が高く、M期のマーカーであるCYCB1;1 の発現量が低かった。よって、SHR、SCRは、葉において、根と同様に、細胞周期の制御に関与していると考えられる。

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