Homeostasis of Brassinosteroids Regulated by DRL1, a Putative Acyltransferase in Arabidopsis
Zhu et al. Molecular Plant (2013) 6:546-558.
doi:10.1093/mp/sss144
中国 復旦大学のWang らは、シロイヌナズナのアクティベーションタギング集団の中から、葉柄が短く、葉が丸みを帯び、弱いbrassinosteroid-insensitive1 (bri1 )変異体のような表現型を示す変異体を単離し、dwarf and round leaf-1 (drl1-D )と命名した。drl1-D 変異体は、野生型と比較すると、根がやや短く、ロゼット葉が小さいといった特徴が見られた。また、drl1-D 変異体暗所育成芽生えは野生型よりも胚軸が短くなっていた。drl1-D 変異体のブラシノステロイド(BR)応答性は、芽生えを24-エピブラシノライド(eBL)処理した際の胚軸伸長や根の伸長阻害において野生がたと同等であった。よって、drl1-D はBRシグナル伝達に関与してはいないと考えられる。BR処理によって発現抑制されるCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC DWARF (CPD )やDWARF4 (DWF4 )、BR処理によって発現誘導されるSaur_AC1 の発現量を見たところ、CDP とDWF4 の発現量は野生型よりも高く、Saur_AC1 の発現量は低くなっていた。したがって、drl1-D 変異体ではBRシグナルに対する応答性が弱まっていると考えられる。BRI1-EMS-SUPPRESSOR 1(BES1)のタンパク質量とリン酸化状態を野生型とdrl1-D 変異体で比較したところ、通常の状態でdrl1-D 変異体はリン酸化型BES1の比率が野生型よりも僅かに高く、eBL処理によってBES1の脱リン酸化が起こるが、drl1-D 変異体では幾らかリン酸化型BES1が残っていた。これらの結果から、drl1-D 変異体のわい化した表現型は内生BR量の減少によって引き起こされているのではないかと推測した。そこで、drl1-D 変異体芽生えのBR含量を見たところ、6-デオキソテアステロン、テアステロン、3-デヒドロ-6-デオキソテアステロンといった前駆体の含量に変化は見られなかったが、6-デオキソティファステロール、ティファステロール、6-デオキソカスタステロンといった一部のBR前駆体が減少していた。よって、これらの前駆体含量の減少がdrl1-D 変異体のわい化した表現型の主な原因となっていると考えられる。drl1-D 変異体では35SエンハンサーエレメントがAt4g3190の開始コドンの2541 bp上流に挿入されており、At4g3190 の発現量が野生型よりも78倍高くなっていた。At4g3190を35Sプロモーターで過剰発現させた形質転換体はdrl1-D 変異体と類似した表現型を示すことから、At4g3190 の過剰発現がdrl1-D 変異体の表現型を引き起こしていると判断した。DRL1 はCoA依存アシルトランスフェラーゼををコードしていた。DRL1 は芽生え、花、長角果で発現が見られ、特に若い葉、一次根、花弁、がく片、長角果で強い発現が見られた。植物体をeBL処理するとDRL1 の発現量は増加することから、DRL1 は生体内のBRシグナルを適正な状態に維持するためのフィードバック制御に関与していると考えられる。アブシジン酸(ABA)はBRシグナル伝達を阻害し、両者は植物の成長過程において拮抗的に作用するが、植物体をABA処理するとDRL1 の発現量は減少した。よって、ABA処理はDRL1 の発現抑制によるBR代謝の低下をもたらしていると考えられる。DRL1 にT-DNAが挿入された変異体の表現型は野生型と同等であることから、シロイヌナズナゲノムにはエステル化によるBR代謝を行なう類似遺伝子が存在すると考えられる。シロイヌナズナゲノムのCoA依存アシルトランスフェラーゼ遺伝子ファミリーを調査したところ、DRL1 の属するサブファミリーには15の遺伝子が含まれていた。これらのうち13遺伝子を過剰発現させたところ、At2g40230とAt5g17540がDRL1 と類似した機能を有していることがわかった。At5g17540 とAt2g40230 が発現抑制された二重変異体は、単独変異体や野生型よりも大型化し、芽生え胚軸が長くなり、CDP やDWF4 の発現量が減少し、リン酸化型BES1の比率が僅かに減少していた。したがって、二重変異体はBRシグナル応答が高まっていることが示唆される。DRL1 、At5g17540 、At2g40230 が発現抑制された三重変異体は作出することができず、三重変異は致死となると思われる。At5g17540 とAt2g40230 の発現も、DRL1 と同様に、eBL処理によって誘導され、ABA処理によって阻害された。大腸菌に合成させたDRL1タンパク質を用いた試験から、DRL1はCoA依存的に内生BR量を減少させる作用があると推測される。
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