東京バレエ団が、ブルメイステル版の『白鳥の湖』全幕を、「上野の森バレエホリディ』という企画の中で上演していて。
最終公演日29日15時の回に、観てきました。(いやはや、行けて良かった。)
個人的な感想としては、とても良かったです。感動しました。
------
自分がもう、ロシアのバレエ団来ないし、「白鳥の湖」を見る機会も少なくなって、酷いたとえだが、禁酒してるアル中の人がお酒飲んだ時みたいな状態になっているのかもしれん(?)が。
白鳥中毒患者の私が、「白鳥の湖」を観る。バレエ難民、東京文化会館へ行く、というような感じで。
3幕の悪魔舞踊団と黒鳥姫の場の途中で、とても主観的には盛り上がってしまったり、ラストの、お姫様を王子がリフトした所、愛の勝利の場面で涙ぐんでしまったり。
ロシアのバレエ団が来なくなって、或いは、バレエ界のスターの時代が終わり、自分らがかつて、当たり前のように享受していた、素晴らしい舞台の数々、そういう物が遠くなって、バレエから足を洗う人も居る中で、自分はまだバレエ道楽から足抜けできずにいるわけだけど。
-------
こないだのパリオペラ座バレエ団日本公演にも言えることだけど、世の中上には上で、だから、「それ以上」の者は、ありえるのかもしれない。
例えば、は良かったと思った2月のパリオペラ座公演も、私のような立場でなく、もっとパリ・オペラ座が大人気のスターを何人も輩出してバレエマニアが舞台に熱狂し追いかけていた時代に、パリ・オペラ座バレエ団のガチファンで、パリまで何度も見に行ったりしてるような熱いファン層の一部は、私が感動した舞台をいいとは言わないかもしれない。(私的に、それを自分は否定しないし、感動・感想はそれぞれの者だと承知してる)
それはそれで理解できるし、そこまでバレエに真剣になれるのって、そこにも価値はあると思うのだけど。
で、今回の、東京バレエ団のブルメイステル版「白鳥の湖」。本家のダンチェンコことモスクワ音楽劇場バレエ団の、1980年代位から2000年代以降までの、日本公演での名舞台の数々、そういうのを想起すると、昔のダンチェ公演を知ってる人からは、「もっともっと」っていうのはあるかもしれないけれど。
ただ、そういう話はちょっと横に置いといて、「これはこれで、とても良かった」し、何より、改めて、バレエって経済的には非効率なもので、手間がかかって、手抜きを基本としてる新自由主義が席巻した今の時代からは、かなり異質な物なんだろうな、という事を思っていて。
ニーナ・アナニアシヴィリがKバレエに客演した後の時期だったかな、「グランドバレエは消滅するんじゃないか?」という意見があるようなことを言ってたけど。で、パリオペラ座バレエを見ても、近年、コンテ中心だったかな?というのは、ちょっと思ってて、それは一理あるんだろうなと思うので。
見た方の感想はそれぞれだと思うけど、自分的には、今回の東京バレエ団の「白鳥の湖」、これほど手間がかかって手の込んだ、素晴らしい舞台を実現してくれて、そのことに、有難みを感じた、っていうのが、自分の気持ちです。
今振り返れば、本当に、本当に、奇跡のような素晴らしい舞台を数えきれないほどたくさん見てきた。当たり前のように、安価にそれらを享受できていた時には、分らなかったこともある。
-------
能書きが長くなりましたが。
・主観的には、楽しく舞台を見たが、もっと客観的にいうと、本日の公演の成功の、一番の立役者は、私的には、指揮者のアントン・グリシャニン氏だと思ってます。
・全体に、白鳥シーンだけでなく、カラフルな衣装の場面、1幕3幕も含め、コールドもミミックもソリストも、非常によく訓練されていて、ブルメイステル版の細かい所も皆が的確に動くので、かなり細かい所迄感心して見てました。
・初演時より新調した?らしき衣装は、特に1幕のソリストやコールドの、パステル調みたいな優しい色合いのも良かったかな(ダンチェンコは舞台向きにもっと光り物を使って派手な衣装だった。どちらも良かったけど、今回は「東京バレエ団のブルメイステル版」が、衣装も、一部の演技の段取りも、新しく育ってきてる感じがして、そういう所も面白く見た。変えなくていい部分もあるかもしれないけど、全部モスクワのと同じでなくてもいいんで。創造性が発揮されてるのも、それなりに面白かったりとか。
・1幕で、アダージョとかで、男性が女性を持ち上げて下す時に、割と長く女性を宙に留まらせてふんわり下ろしていて、(男性はその方が大変だと思うけど)きれいで感心した。見せ場の3人の女性のソリストたちは、踊りは丁寧で笑顔が印象的。
1幕、2幕の途中まで、全体的に踊りが丁寧で、パドブレとか細かく長くやるし、感心するところが色々あった。
踊りも演技も良かったというか、王子を囲む人々と王子の絡みの演技も、細かく見てると手抜きがないというか、丁寧で感心した。
・後、全体的に、ジャンプの着地音がしなかったり、しても小さめで、この所、ネット動画も生舞台も含め、ジャンプその他で着地音とか、足音がするのが当たり前みたいになってたので、足音しないとか、少な目っていうのが、新鮮だったり。
・作品全体で言うと、正直、初演の時より、作品が育ってきてるっていうか、全体に良くなってるような気がした。
・で、1幕2幕で感じたのは、舞台の上は、やるべきことはやってるんだけど、その割に、お客さんの反応が、そんなでもないかな?っていう感じ。
・2幕オデット登場、そして王子と恋に発展する二人の演舞は、この位できればいいんじゃない、って感じで。
プリマは初役らしいんだけど、バレエ団がしっかりしていて、それなりの人を選んでくるな、って感じ。
四肢が長く、その肢体を美しく駆使して、白のプリマの世界を築いていく。
白鳥の湖の主役は、凄く人を選ぶ役で、白鳥姫姿が似合って様になってないと話にならない。
その意味では、2幕、遠目に見て、榊さんは遜色なかった。
2幕、特に前半が良かった。後半も頑張ってた。
(こないだの、パリオペラ座バレエの主役オニールさんは、‥‥ごめんなさい、今日の主役を見てしまうと、イマイチだった…って言ったら怒られるかな?(誰に?)
榊さんは、白鳥姫姿が遜色なく、2幕前半の踊りが手堅く、長い四肢を生かしてきれいなラインも見せるし、何となく、遠景で見ていて、オデットの無垢、白のイメージが自然に備わっているように見えて、(そんなに強くないけど)、
沖さんの日に行けなくて、自分にがっかりしたけど、いや、今日来てよかったかも、って途中で思った。
・こんな感じなら、中島さんも見たかった。たぶん、ここは、バレエ団の上の人が、ちゃんとそれなり白鳥姫向きのプリマを、選んでくるバレエ団なんじゃないかと見えた。全キャスト見られたら幸せだけど、自分はスケジュール的にも、それは無理なので。
・そして、ベテランの王子を付けたのは、新人のデビューにあっていたのかも。
柄本さんの王子、色々楽しんでみたけど、特に2幕の後半のリフト、お客さんの拍手が大きくなってしまって、長く上げてないといけない状況になっちゃったけど、でも、安心して見ていられて。なんていうか、感心した。舞台経験豊富そうだな~って印象。
・・・・と、1幕2幕は、感心して見てたんだけど、あれあれ?と思ったのが、今日、この日のお客さんは、舞台の上は立派でも、反応がいまいち、そんなでもない、と。
一つには、昼公演にはありがち、というのと・・・。
「客層」って、毎度違うので、プリマ日替わりだと、必ずしも舞台の上の出来が全てではなく、凄く熱心に見て熱い拍手を送ってくれる客層もあれば逆もある。
白いバレエ、2幕のコールドには、この位やって呉れれば御の字、というものはあって、自分的には感心して見てたので、
この舞台のどこがいけないの?と、思った瞬間もあった。とりあえず、今日はこういう客層なのかな~と思った(客入りは良かったです。盛況。
・それが、3幕で変わった。
どうも、今日の客層は、白いバレエの静かな場面より、3幕の悪魔と妖しい舞踊団の、カラフルでダンサブルな踊りに反応するみたい。
加えて、グリシャニン指揮が、民族舞踊場面の途中から、音楽でとても盛り上げてくれて、舞台を引っ張った。悪魔役も舞台をよくけん引してたと思う。
指揮が舞台の成否の勘所を熟知していたことも大きく功を奏し、2幕で、舞台がいいわりに、観客の反応がそこまでではない、漢字が自分にはしたのが、3幕で一変。
3幕で舞台に火がついて、そのまま盛り上がって最終幕まで行って、カーテンコールは大いに盛り上がって、スタンディングオベーションも出て、そういう意味で、来場したお客様にも楽しめた舞台だったんじゃないかと思った。
・3幕の道化たちの細かい芝居が面白かった。皆良かったけど、自分の見た位置では、特にオレンジの道化役が細かい芝居をしていて、観てると笑えた。道化のボスの人は、1幕の回転技とか、全体に手堅い演技で舞台を引き締めていた。
・民族舞踊、ナポリの女の子が王子側じゃない方を向いた時、悪い女の子の目線をしていて、なかなかコケティッシュで踊りも良かった。
オディールも悪い女の子の雰囲気をよく出していて、悪女役を楽しんで踊ってるようだった。
王妃様が奈良さん。なんとなく、、いかめしいドレス姿の中に、王妃の孤独を感じてしまって、ダンチェンコと異なる面白さがあった。
・4幕。白鳥姫を裏切った王子を、白鳥の乙女の集団が拒絶し非難する身振りをする場面、何度も見てるけど、ブルメイステル版のここの演出って、秀逸だと思った。ていうか、見ていて王子だけでなく、観てる自分も、心にぐっさり来てしまう。
・個別のダンサーも色々良かったが、全体の良さも凄くあって、非常によく訓練されていて、アンサンブルの良さとか、なんでもないような細かい所迄、脇役やコールドらの動きが良く統率されて、ブルメイステル版をよく学習してる所とか、こういう真面目に作品を作ってある姿勢みたいなものに、感心させられることしきりだった。
逆に、お客さんが見てないような細かい所が、荒い舞台というのもあるので。
・既出かもだけど、齋藤監督になってから、女性のコールド、白いバレエとか、水準上がったと思う。今回もそういう良さは出ていたけど、再演を重ねることで、名版ブルメイステル版の精度が上がってると思うし、舞台の面白さも上がってる気がするのは、見に来ての収穫だったかも。
-------
何か書き忘れていることが、いっぱいあるような気がする。
「白鳥の湖」の素晴らしさ、そしてブルメイステル版の素晴らしさを改めて体感した観劇になった。
個別ダンサーの名も少し上げたけど、書いてない人にも良かった人はいると思う。
全体的に良かったので、その点に、非常に感心しました。
バレエ団にとってプラスかどうかは分からないけど、自分はこのブルメイステル版が好きなので、できればまた上演してほしい気がしました。
拙文失敬。
最終公演日29日15時の回に、観てきました。(いやはや、行けて良かった。)
個人的な感想としては、とても良かったです。感動しました。
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自分がもう、ロシアのバレエ団来ないし、「白鳥の湖」を見る機会も少なくなって、酷いたとえだが、禁酒してるアル中の人がお酒飲んだ時みたいな状態になっているのかもしれん(?)が。
白鳥中毒患者の私が、「白鳥の湖」を観る。バレエ難民、東京文化会館へ行く、というような感じで。
3幕の悪魔舞踊団と黒鳥姫の場の途中で、とても主観的には盛り上がってしまったり、ラストの、お姫様を王子がリフトした所、愛の勝利の場面で涙ぐんでしまったり。
ロシアのバレエ団が来なくなって、或いは、バレエ界のスターの時代が終わり、自分らがかつて、当たり前のように享受していた、素晴らしい舞台の数々、そういう物が遠くなって、バレエから足を洗う人も居る中で、自分はまだバレエ道楽から足抜けできずにいるわけだけど。
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こないだのパリオペラ座バレエ団日本公演にも言えることだけど、世の中上には上で、だから、「それ以上」の者は、ありえるのかもしれない。
例えば、は良かったと思った2月のパリオペラ座公演も、私のような立場でなく、もっとパリ・オペラ座が大人気のスターを何人も輩出してバレエマニアが舞台に熱狂し追いかけていた時代に、パリ・オペラ座バレエ団のガチファンで、パリまで何度も見に行ったりしてるような熱いファン層の一部は、私が感動した舞台をいいとは言わないかもしれない。(私的に、それを自分は否定しないし、感動・感想はそれぞれの者だと承知してる)
それはそれで理解できるし、そこまでバレエに真剣になれるのって、そこにも価値はあると思うのだけど。
で、今回の、東京バレエ団のブルメイステル版「白鳥の湖」。本家のダンチェンコことモスクワ音楽劇場バレエ団の、1980年代位から2000年代以降までの、日本公演での名舞台の数々、そういうのを想起すると、昔のダンチェ公演を知ってる人からは、「もっともっと」っていうのはあるかもしれないけれど。
ただ、そういう話はちょっと横に置いといて、「これはこれで、とても良かった」し、何より、改めて、バレエって経済的には非効率なもので、手間がかかって、手抜きを基本としてる新自由主義が席巻した今の時代からは、かなり異質な物なんだろうな、という事を思っていて。
ニーナ・アナニアシヴィリがKバレエに客演した後の時期だったかな、「グランドバレエは消滅するんじゃないか?」という意見があるようなことを言ってたけど。で、パリオペラ座バレエを見ても、近年、コンテ中心だったかな?というのは、ちょっと思ってて、それは一理あるんだろうなと思うので。
見た方の感想はそれぞれだと思うけど、自分的には、今回の東京バレエ団の「白鳥の湖」、これほど手間がかかって手の込んだ、素晴らしい舞台を実現してくれて、そのことに、有難みを感じた、っていうのが、自分の気持ちです。
今振り返れば、本当に、本当に、奇跡のような素晴らしい舞台を数えきれないほどたくさん見てきた。当たり前のように、安価にそれらを享受できていた時には、分らなかったこともある。
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能書きが長くなりましたが。
・主観的には、楽しく舞台を見たが、もっと客観的にいうと、本日の公演の成功の、一番の立役者は、私的には、指揮者のアントン・グリシャニン氏だと思ってます。
・全体に、白鳥シーンだけでなく、カラフルな衣装の場面、1幕3幕も含め、コールドもミミックもソリストも、非常によく訓練されていて、ブルメイステル版の細かい所も皆が的確に動くので、かなり細かい所迄感心して見てました。
・初演時より新調した?らしき衣装は、特に1幕のソリストやコールドの、パステル調みたいな優しい色合いのも良かったかな(ダンチェンコは舞台向きにもっと光り物を使って派手な衣装だった。どちらも良かったけど、今回は「東京バレエ団のブルメイステル版」が、衣装も、一部の演技の段取りも、新しく育ってきてる感じがして、そういう所も面白く見た。変えなくていい部分もあるかもしれないけど、全部モスクワのと同じでなくてもいいんで。創造性が発揮されてるのも、それなりに面白かったりとか。
・1幕で、アダージョとかで、男性が女性を持ち上げて下す時に、割と長く女性を宙に留まらせてふんわり下ろしていて、(男性はその方が大変だと思うけど)きれいで感心した。見せ場の3人の女性のソリストたちは、踊りは丁寧で笑顔が印象的。
1幕、2幕の途中まで、全体的に踊りが丁寧で、パドブレとか細かく長くやるし、感心するところが色々あった。
踊りも演技も良かったというか、王子を囲む人々と王子の絡みの演技も、細かく見てると手抜きがないというか、丁寧で感心した。
・後、全体的に、ジャンプの着地音がしなかったり、しても小さめで、この所、ネット動画も生舞台も含め、ジャンプその他で着地音とか、足音がするのが当たり前みたいになってたので、足音しないとか、少な目っていうのが、新鮮だったり。
・作品全体で言うと、正直、初演の時より、作品が育ってきてるっていうか、全体に良くなってるような気がした。
・で、1幕2幕で感じたのは、舞台の上は、やるべきことはやってるんだけど、その割に、お客さんの反応が、そんなでもないかな?っていう感じ。
・2幕オデット登場、そして王子と恋に発展する二人の演舞は、この位できればいいんじゃない、って感じで。
プリマは初役らしいんだけど、バレエ団がしっかりしていて、それなりの人を選んでくるな、って感じ。
四肢が長く、その肢体を美しく駆使して、白のプリマの世界を築いていく。
白鳥の湖の主役は、凄く人を選ぶ役で、白鳥姫姿が似合って様になってないと話にならない。
その意味では、2幕、遠目に見て、榊さんは遜色なかった。
2幕、特に前半が良かった。後半も頑張ってた。
(こないだの、パリオペラ座バレエの主役オニールさんは、‥‥ごめんなさい、今日の主役を見てしまうと、イマイチだった…って言ったら怒られるかな?(誰に?)
榊さんは、白鳥姫姿が遜色なく、2幕前半の踊りが手堅く、長い四肢を生かしてきれいなラインも見せるし、何となく、遠景で見ていて、オデットの無垢、白のイメージが自然に備わっているように見えて、(そんなに強くないけど)、
沖さんの日に行けなくて、自分にがっかりしたけど、いや、今日来てよかったかも、って途中で思った。
・こんな感じなら、中島さんも見たかった。たぶん、ここは、バレエ団の上の人が、ちゃんとそれなり白鳥姫向きのプリマを、選んでくるバレエ団なんじゃないかと見えた。全キャスト見られたら幸せだけど、自分はスケジュール的にも、それは無理なので。
・そして、ベテランの王子を付けたのは、新人のデビューにあっていたのかも。
柄本さんの王子、色々楽しんでみたけど、特に2幕の後半のリフト、お客さんの拍手が大きくなってしまって、長く上げてないといけない状況になっちゃったけど、でも、安心して見ていられて。なんていうか、感心した。舞台経験豊富そうだな~って印象。
・・・・と、1幕2幕は、感心して見てたんだけど、あれあれ?と思ったのが、今日、この日のお客さんは、舞台の上は立派でも、反応がいまいち、そんなでもない、と。
一つには、昼公演にはありがち、というのと・・・。
「客層」って、毎度違うので、プリマ日替わりだと、必ずしも舞台の上の出来が全てではなく、凄く熱心に見て熱い拍手を送ってくれる客層もあれば逆もある。
白いバレエ、2幕のコールドには、この位やって呉れれば御の字、というものはあって、自分的には感心して見てたので、
この舞台のどこがいけないの?と、思った瞬間もあった。とりあえず、今日はこういう客層なのかな~と思った(客入りは良かったです。盛況。
・それが、3幕で変わった。
どうも、今日の客層は、白いバレエの静かな場面より、3幕の悪魔と妖しい舞踊団の、カラフルでダンサブルな踊りに反応するみたい。
加えて、グリシャニン指揮が、民族舞踊場面の途中から、音楽でとても盛り上げてくれて、舞台を引っ張った。悪魔役も舞台をよくけん引してたと思う。
指揮が舞台の成否の勘所を熟知していたことも大きく功を奏し、2幕で、舞台がいいわりに、観客の反応がそこまでではない、漢字が自分にはしたのが、3幕で一変。
3幕で舞台に火がついて、そのまま盛り上がって最終幕まで行って、カーテンコールは大いに盛り上がって、スタンディングオベーションも出て、そういう意味で、来場したお客様にも楽しめた舞台だったんじゃないかと思った。
・3幕の道化たちの細かい芝居が面白かった。皆良かったけど、自分の見た位置では、特にオレンジの道化役が細かい芝居をしていて、観てると笑えた。道化のボスの人は、1幕の回転技とか、全体に手堅い演技で舞台を引き締めていた。
・民族舞踊、ナポリの女の子が王子側じゃない方を向いた時、悪い女の子の目線をしていて、なかなかコケティッシュで踊りも良かった。
オディールも悪い女の子の雰囲気をよく出していて、悪女役を楽しんで踊ってるようだった。
王妃様が奈良さん。なんとなく、、いかめしいドレス姿の中に、王妃の孤独を感じてしまって、ダンチェンコと異なる面白さがあった。
・4幕。白鳥姫を裏切った王子を、白鳥の乙女の集団が拒絶し非難する身振りをする場面、何度も見てるけど、ブルメイステル版のここの演出って、秀逸だと思った。ていうか、見ていて王子だけでなく、観てる自分も、心にぐっさり来てしまう。
・個別のダンサーも色々良かったが、全体の良さも凄くあって、非常によく訓練されていて、アンサンブルの良さとか、なんでもないような細かい所迄、脇役やコールドらの動きが良く統率されて、ブルメイステル版をよく学習してる所とか、こういう真面目に作品を作ってある姿勢みたいなものに、感心させられることしきりだった。
逆に、お客さんが見てないような細かい所が、荒い舞台というのもあるので。
・既出かもだけど、齋藤監督になってから、女性のコールド、白いバレエとか、水準上がったと思う。今回もそういう良さは出ていたけど、再演を重ねることで、名版ブルメイステル版の精度が上がってると思うし、舞台の面白さも上がってる気がするのは、見に来ての収穫だったかも。
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何か書き忘れていることが、いっぱいあるような気がする。
「白鳥の湖」の素晴らしさ、そしてブルメイステル版の素晴らしさを改めて体感した観劇になった。
個別ダンサーの名も少し上げたけど、書いてない人にも良かった人はいると思う。
全体的に良かったので、その点に、非常に感心しました。
バレエ団にとってプラスかどうかは分からないけど、自分はこのブルメイステル版が好きなので、できればまた上演してほしい気がしました。
拙文失敬。