小室 直樹 著『数学嫌いな人のための数学』という奇妙なタイトルですが、単なる数学の勉強の教本ではないようで、宗教から宇宙・経済論までに及ぶ内容となっていた。
では、宗教から数学にいたる経緯は?どう関連あるの?、、、 はこう展開している。
聖書に書かれている中で、死者が生き返ったり、人間が水の上を歩いたり、海が割れる等々通常ではあり得ないことが数多く記されております。
聖書に書いてあることを文字通り、それが真実であると信じて疑わない人々のことを『ファンダメンタリスト』と言うのだそうです。
ファンダメンタリストは言う、、、。
≪この世を探る為にある自然科学の実験・観察すべて、、、これを帰納法と呼ぶが、それらの全ては不完全なものであり、その学説だって学問が進むにつれ、これまで常識だった諸説だって否定されているじゃないか≫、、、と。
その通り、宇宙だって一定でなく膨張し続けているし、真っすぐにしか進まないはずの光だって曲がる。時間だって相対的なもの、原子が最小と思いきや今では素粒子発見の連続、、、確かにファンダメンタリストの言う通りかなあとも思う。
ファンダメンタリストは更に続けます。
≪正しいとは限らない科学法則など、聖書の絶対的な正しさに比べると、ものの数ではない≫
≪自然科学と言ったところで、神が造りたまいしものにすぎない。神が法則を一時的に停止させたとすれば、人間が水の上を歩いたとしても少しも可笑しくはないではないか≫
とくる。信じるとはそういうことなのか。
ここで、著者は言う。
≪聖書を全面的に信じるファンダメンタリストのこの理論に誰が反論できますか?≫、、、って。
私なんぞは、ん~!と首をひねり沈黙してしまう。
≪完全なる帰納法は数学だけが持つ≫、、、
ついに、ここで【数学】に行きつく。そして数学の公式をも交え話が進む、、、。
確かに今我々の生きているこの銀河宇宙。科学的実験・観察に加え、まさしく【数学】によって解明されてきているのは間違いのないこと。 数学あなどるなかれである。
≪しかるにその数学的思考をも否定する考えも存在する~それは仏教の空の思想である≫
、、、と話は仏教の話までに及んでいくのである。
著者・小室直樹という人の「思考回路」には恐れ入る。
学生時代もっと真剣に【数学】を学んでいれば(もう遅いか!)、、、難解ですが、面白い・考えさせられる一冊でした。
【小室直樹プロフィール】
(1932~2010)
東京生れ、京都大学理学部卒。
マサチューセッツ・ミシガン・ハーバード大学に留学。
法学博士。法科学社会学者。
『ソビエト帝国の最後』『宗教原論』『資本原論』等著書多数。