Que ma vie est belle!

私とは、美しいもの、美味しいもの、楽しいものの集合体。

Steinway@home

2008-02-01 22:00:17 | ロンドン

昔はやたらに難しい曲を弾きたくて、小学生の頃などChopinの『英雄ポロネーズ』を友人と片手ずつ弾いたりしていた。音が抜けようと、間違えようと、何となくその曲に聞こえたら弾けたような気持ちになっていた。

ところが、今、Steinwayを弾いていると、始まりの一音の出し方が気になる。ぞんざいな、ただ音程が合っている、というだけの音の集合体では一心不乱に弾いているはずの自分ですら気に入らない。こうしてほぼ毎日ピアノを弾くのはウン十年振りだし(毎日、は生まれて初めて?)、ヴァイオリンに浮気もしたし(今も二股)、もともと「弾けて」いたわけではないから、技術的に難しい曲が弾けるのではないけれど、バッハの小品を弾くにしても、とにかく音をどのように出すかにまで心を配るようになっていることに気がつく。

一つはこの齢100歳というおじいちゃん(フランス語でピアノは男性名詞だから)楽器との出会いのおかげだろうか。面白いくらい抑え方によって音が違って聞こえるから。また「弾け過ぎる」と言う方もいらっしゃるみたいだけれど、鍛え方が足りない指には、ピアノの上をこうして滑らかに指が動く様子は面白いし、「その気」にさせられる。流石に毎日弾いていると、最初は音取りすら怪しかった曲がすっかり様になってくる。これには、まるで昔フランス語がただの音だった頃から意味を成す言語に変わったことを認識した時のような感動がある。

あとは歳のせい。昔は大天才と比べることで結局のところは自分との戦いを避け続けてきたけれど、今ようやく自分の出来る範囲を少しでも広げるための現実的な努力ができるようになった。生後ウン十年にて、ようやく普通の子供並みの常識を身につけたらしい私である。


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