これはホラーだ。読みながら震えた。泣きそうになった。いつか見たことを鮮明に思い出す。母の介護をしていた日々だ。ほんの数年前のことである。
今更後悔しても始まらないけど、もっといろんなことをしてあげたかったなんて、思えるのはあの先にあったはずの更なる試練を知らなかったからかもしれない。きれいごとじゃやっていけないことはわかっていたし、毎日が大変だった。気がつくと知らぬ間に心を病んでいた。それでも毎日朝早く起きて仕事前に母の面倒を見ていた。そんなあの頃のことを思い出す。
読みながらずっと母のことを考えていた。ここには共感できることも納得しないこともある。当然だろう。大崎さんと僕は違うし、彼女のケースと僕のケースも違う。当たり前だ。ただ同じように介護に関わり、看取りを体験した同士である。僕は母を家に帰してあげられなかった。自宅で最期を過ごさせてあげたかった。田舎の実家にも。それが悔やまれる。あんなに行きたがっていたのに。
でも仕方ない話だ。忙しすぎて無理だった。仕事と介護の両立は僕にはあれが限界だった。ただ、もう一度逢いたい。叶わないことだけど、彼女の最期の願いを叶えてあげたかった。