ーレンチの中山治雄さんが役者である自分を自らプロデュースするために企画した。作、演出にevkkの外輪能隆さんを迎えて、もちろん自らが主演する。1日3ステージで3日(最終日は2回)計8ステージをこなす強行軍だ。中山さんは生き生きとこのドラマの主人公を演じている。よくあるゴーストものである。全くついていない男が主人公。仕事をクビになり恋人にも棄てられ、ようやく決まった再就職先はうさんくさいところで、働く前に潰れてしまう。そんな彼が住み始めた新しい部屋は築35年のオンボロアパート。異常に安い家賃の秘密は、もちろん、出るからだ。現れたのはおかっぱで、着物を着た14歳の少女(白亜)の幽霊。だが、彼女とのおかしな同居生活が少しずつ心地よいものになっていく。明治生まれの彼女は自分の死の記憶がない。やがて「からゆきさん」として、海を渡った彼女の悲痛な運命が明らかになっていく。
外輪さんはこの作品を、中山さんにわざとオーバーアクトを強いて、コミカルなタッチで見せていこうとする。終盤、重い話になるが、全体の感触は軽やかで、楽しい。ダンスシーンもあり、こういう作品を外輪さんが作るなんて、意外だった。1時間ほどの中編作品。その妥当な長さも心地よい。
もう1本(二本立である)は、父親の三回忌に集まった家族の語る父との思い出の数々を描く短編。三人兄弟とその妻たち。そして、ボケてしまって、もうしゃべらない母親。彼女は出された料理を黙々と食べ続ける。そんな彼らの静かな時間が淡々と描かれる。
今回の外輪さんはevkkでのスタイリッシュな演出をさらりと脱ぎ捨てて、職人として、基本的にはオーソドックスに物語作者を目指す。二本はそれぞれタッチを変えて変幻自在だ。本来花のある役者ではない中山さんを中心に持ってくることで、周囲が彼を盛り立てて彼のオンステージを演出する、というわけではない。中山さんはとても地味で主役を演じてもなんとなく存在感がない。でも、そこが彼の魅力でもある。いつもなら彼が発する毒にあてられるのだが、今回はそれをきれいさっぱり洗い流して、なんだかとてもさらりとした世界を呈示する。結果的にはアンサンブルプレーとしての作品が残る。それでいいと思う。ありきたりな小さな話だが、それゆえ心に残る小品となった。この作品の成功は、中山さんの魅力を生かすために彼の個性を消し去るという手を使った外輪さんの功績だろう。
外輪さんはこの作品を、中山さんにわざとオーバーアクトを強いて、コミカルなタッチで見せていこうとする。終盤、重い話になるが、全体の感触は軽やかで、楽しい。ダンスシーンもあり、こういう作品を外輪さんが作るなんて、意外だった。1時間ほどの中編作品。その妥当な長さも心地よい。
もう1本(二本立である)は、父親の三回忌に集まった家族の語る父との思い出の数々を描く短編。三人兄弟とその妻たち。そして、ボケてしまって、もうしゃべらない母親。彼女は出された料理を黙々と食べ続ける。そんな彼らの静かな時間が淡々と描かれる。
今回の外輪さんはevkkでのスタイリッシュな演出をさらりと脱ぎ捨てて、職人として、基本的にはオーソドックスに物語作者を目指す。二本はそれぞれタッチを変えて変幻自在だ。本来花のある役者ではない中山さんを中心に持ってくることで、周囲が彼を盛り立てて彼のオンステージを演出する、というわけではない。中山さんはとても地味で主役を演じてもなんとなく存在感がない。でも、そこが彼の魅力でもある。いつもなら彼が発する毒にあてられるのだが、今回はそれをきれいさっぱり洗い流して、なんだかとてもさらりとした世界を呈示する。結果的にはアンサンブルプレーとしての作品が残る。それでいいと思う。ありきたりな小さな話だが、それゆえ心に残る小品となった。この作品の成功は、中山さんの魅力を生かすために彼の個性を消し去るという手を使った外輪さんの功績だろう。