習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『幻影師アイゼンハイム』

2008-06-13 23:53:35 | 映画
 去年のクリストファー・ノーラン『プレステージ』はそのアホ過ぎるオチに驚愕したが、今回のこの映画の甘いラストも、なんだか納得がいかない。マジックを題材にした映画なんてけっこうめずらしいが、それは仕掛けがどんなに凄くても映画としてそれを見せられると、あまり刺激的ではないからだろう。やっぱりマジックってライブでしょ。目の前で現実に起こっているとてつもないことを、騙されないように、目を皿のようにして見つめる。そこに尽きる。

 と、すると、それを映画として取り上げたものは、その仕掛けの派手さ、壮大さなんか、いくら頑張ったところであまり感心が持てないから、自然と興味はどれだけ凄い人間ドラマを見せるか、そこにしかポイントが置けないことになる。ならば、マジック、イリュージョン・ショーでなくてもいい、ということになる。

 昔むかしリチャード・アッテンボロー監督が『マジック』というちいさな映画を作った。あまりに地味過ぎて誰も知らないかもしれないが、これはとてもよく出来た傑作である。まだ若かりし日のレクター教授ことアンソニー・ホプキンスが主人公の青年を演じている。今回のエドワート・ノートンといい、『プレステージ』の2人(ヒュー・ジャックマン、クリストファー・ベール)といい、マジックものはかなり癖のある役者が演じなくては説得力を持たないものなのだろうか。

 今回の究極の恋愛もの、というパッケージングは悪くはない。エドワート・ノートンのちょっと病的な感じもいい雰囲気を醸し出している。だが、ヒロインが全然魅力的でないから、彼がこの女にここまで執着するのか、そこに説得力を感じない。ポール・ジアマッティの刑事との対決ももう少しスリリングに見せて欲しかった。2人がある種の共犯関係となっていくのはお決まりのパターンとはいえ、悪くないだけに残念だ。

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 小川糸『食堂かたつむり』 | トップ | 劇団未来『風薫る日に』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。