ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2019J1リーグ第34節横浜F・マリノスvsFC東京@日スタ20191207

2019-12-08 21:11:56 | FC東京

因禍爲福。成敗之轉、譬若糾墨。

今シーズンの初雪を観測し、一時は試合中も降雪が予想された真冬日の横浜。

いよいよ2019年のシーズンもファイナルを迎えます。そして、東京サポ人生初のビッグファイナルです。首位マリノスに対するは、勝ち点3差、得失点差は7。いうまでもなく、4点差の勝利が条件です。You'll Never Walk Alone♪

東京は満身創痍です。ディエゴが前節の怪我で不在。成はサスペンション。謙佑も脱臼で万全ではありません。シフトはスクウェアの4-4-2。GKは彰洋。CBはモリゲとつよし。SBは右にジェソ左に諒也。CMは拳人とアル。メイヤは右に慶悟左にサンホ。2トップは謙佑と洋次郎です。

マリノスはタカがサスペンションです。その他はベストメンバー。シフトは4-2-3-1。GKはパク・イルギュ。CBはチアゴ・マルチンスと槙之輔。SBは右にマツケン左右にティーラトン。CMはキー坊と和田。WGは右に仲川左にマテウス。トップ下はマルコス・ジャニオール。1トップはエリキです。

平常心で観ていない試合を平静に振り返るのは矛盾していますね。いずれの結果になったとしても、2019年のチャンピオンチームのプレーモデルを観る機会はもう今日をおいてないわけですから、あたまのどこかで、いつも通りサッカーを楽しみたい気持ちもあったのでしょう。結果は残念だったけど、東京はやるべき最大級の準備とパフォーマンスを見せてくれたんですし、純粋におもしろい試合だったと思います。

東京は、もしかするとぼくらが観たことがないスペシャルプランで挑んでくるかなと期待していた部分もあります。トレーニングを非公開にしていたので漫画的にミステリアでしたし。でも蓋を開けると普段着でした。東京ははやくタイトなフォアチェックを徹底します。その意味では、受け身に回った湘南戦の反省を、前節に続き示していました。シーズン通して悔やまれる試合が、第28節など振り返るといくつかありますけど、第32節もそのひとつ。

おそらく東京は、4点の取りかたを考えるよりも、1点を重ねるアプローチを取ったのでしょう。オープニングからラッシュをかけたということは、はやい時間に先制して、マリノスのチームとサポがぬぐいさりたくてもそこはかとなくつきまとういっぺんの不安と恐怖を覚醒させたかったのだと思います。よくいう2点リードの不安定は、普通の試合でさえマインドに影響しますから、優勝がかかった試合に、しかもある意味6万3千の期待と不安が押し寄せるなか、尋常なプレッシャーではないでしょうから。

誰しもが思うことですけど、東京がオープニングブローをひとつでもクリーンヒットさせていれば。実際、マリノスは一瞬および腰になります。想像していたよりも東京のチェックがはやく、タイトだったのでしょう。守備陣の6人は受け身に回りますし、前線、とくにエリキとマテウスは露骨にマインドへの影響を見せていましたから。立ち合いのかましで、相手の顎を上げることに成功したかのように見えました。

マリノスの懐に入り押しきれなかった理由は、彼我にひとつずつ。東京は、作戦において一つだけスペシャルプランを用意しました。それはアルチームです。CMを縦配置することでアルを前に出し、マリノスが引いたぶん空いたバイタルエリアにフリーとなったアルにボールを集めコンダクトさせます。そこまでは綺麗に、予定通りにはまったのですけど、そこから先が上手くいきませんでした。アルはドリブルとパスを駆使しますけど、ことこどくマリノス網に引っかかります。秘密兵器は秘密のままおわってしまいました。このことがマリノスにリズムと勇気を与えます。アルの攻撃を止めているうちに守りにリズムが生まれ、確実にトランジションできる自信とともに、前進の意欲が復活します。

もちろん、東京自慢のロングカウンターが、ディエゴの不在、謙佑のコンディションというエクスキューズによりいつものキレを見せられないことも強く影響します。それでもなお、数本謙佑らしい抜け出しを見せてくれました。一方で決めるべきところで決める大切さがしみたシーンでもありました。もう一つは、そのマリノスのカウンター対策。対策といってもシンプルで、チアゴです。東京のカウンターを不発にしたのは、ほぼチアゴといっていいでしょう。チアゴは、スピード、ポジショニング、コンタクトのパワー、ビルドアップのコントロール、それらすべてに、これまで観た外国人CBにないクオリティを備えているようです。

今日の楽しみのひとつはマリノスの守備でした。失点は相変わらず多いのだけど、今年の被ゴレアーダは第17節の味スタ以来なく、後半戦の平均失点は0.82。その秘訣は、コレクティブな変化を想像したのですけど、ようするにチアゴ・マルチンスです。もちろんマリノスを象徴するSBのポジショニングのタイミングと判断の修練もあるでしょう。マツケンとティーラトンはいわゆるつるべの動きで、サイドのリスクマネジメントに貢献していました。それから先に述べたアルを止めるゾーンディフェンスも、守備網全体がコンパクトであるが故でしょうし、キー某と和田の集中の成果でもあります。それでも、それらが霞むほど、チアゴのクオリティはそれだけで現地観戦の価値があるほどです。

東京の攻撃プランが対処された場合、普段ですと有酸素運動モードに入るのですけど、今日が特異だったのは、東京はそれでは目的を果たせないこと。ジワジワとマリノスがリズムを取り戻しはじめていくにつれ、逆に東京に不利な状況が訪れます。そして、流れを決定付け、事実上シャーレの行方を決定する、実にアンラッキーなゴールが生まれます。

26分。彰洋のGKをマツケンがクリア。これをエリキがフリーで拾います。東京は直前の攻撃の流れからモリゲが右に寄っていて、さらに諒也は攻撃参加していて彰洋のフィードのターゲットとなっていました。あえていうと、彰洋が諒也を狙ったのがリスキーでしたね。それでもエリキは拳人が戻って対応します。エリキはキープする選択に変え、状況を作ります。東京は戻り基調のため、バイタルエリア中央が空きます。そこに和田が入ります。エリキは和田にパス。和田は左横をスルスルっと上がるティーラトンに落とします。アタッキングサードにかかった辺りですけど、かまわずティーラトンはシュート。慶悟がクリアしようとしますけど、これがアンラッキーを誘います。慶悟の足に当たったボールはロブシュートのかたちとなり、彰洋のあたまを越えていきました。本当にアンラッキー。マリノス1-0東京。

勢いのあるチームは運も呼び寄せるのでしょうか。マリノスの攻撃は、想像していたよりもかなりシンプルです。近年の攻撃力志向の成功例といえば川崎ですけど、それに比べると単純明快。スピードです。マリノスは基本的にサイドアタック基調です。サイドアタッカーにボールが入ると両サイドともドリブラーアタッカーなので、まずドリブルで局面を作ります。両サイドとも超高速ドリブラーですけど、マテウスが直線的なのに対し、仲川は高アジリティも待ち合わせています。

今年のマリノスのバランスに寄与している一番は、なんといってもマルコスでしょう。その意味では、日産マリノスのトップ下=エースの系譜を継承しています。ただ、過去のトップ下のイメージとは異なり、マルコスは非常にカバーエリアが広く、かつスピードがあることが特長です。マルコス一人で攻撃のリズムと方針を定められますし、守備ではファーストチェイスからコンタクトまで幅広くこなせます。マリノスのクロスの備えは、そのマルコスとエリキに加え、CM、さらにはSBも加わり、数的優位を志向します。いずれも超高速を誇る選手が揃っているので、守備側がアンストラクチャーなまま攻め切ろうとします。ゴール前も同様で、スピードでスペースに対する優位性が持てることがゴール量産の秘訣です。

なので、その意味では、まだまだ荒削りです。Jリーグは模倣思考の強いリーグですから、チャンピオンチームやエポックメイキングな闘いかたのチームは翌年以降のトレンドになる傾向があります。マリノスは選手のタレントに依存するちょっと特異なスタイルで、かつモデルとして未成熟なので、模倣の対象にはならないかもしれませんね。

ただし、クラブのビジネスモデルとしては、マリノスは先進的です。マリノスの編成方針は、伝統よりも結果を重視するヨーロッパ的志向の上にあるようですので、選手はあくまでもピース。昨年と今年でまるで違うスターターセットになることを厭わないでしょうし、極端にいうとシーズン前半と後半で選手がガラッと入れ替わっても構わない。それを是とするか否とするかは好みが分かれるけど、今後確実にマリノスのモデルを模倣するクラブは出てくるでしょうし、是非は歴史が問うと思います。その意味で、非常にエポックメイキングなシーズンになるかもしれません。手負いの東京がそれでもモチベーションを維持してもがくなか、追加点が生まれます。

44分。マルコス、キー坊、和田、ティーラトン、槙之輔が絡むパス交換で守備網を揺さぶり、マルコスが誘いにのって出てきたアルの背後を取ります。マルコスはルックアップ。中央にエリキ。右に仲川がフリー。左のマテウスはジェソがついてます。マルコスはドリブルでアタッキングサードに入りつよしを引きつけ、中央に2on2の状況を作ります。諒也はエリキではなく仲川を見ていますけど、モリゲがそれに気づいていません。モリゲの背後を取ったエリキにマルコスがパス。諒也が絡もうとしますけど、エリキが重心を下げボールを確保します。これがスーペルでした。左足元にボールを置いたエリキはそのままゴール左隅に流しこみました。マリノス2-0東京。

前半は、こころの備えは実はありましたけど、現実をみて、空虚感すら覚えて終了。

後半頭から健太さんが動きます。サンホに代えてインスを同じく左メイヤに投入します。

慶悟に代えて田川をトップに投入します。洋次郎が右メイヤに回ります。アル大作戦が失敗したので、前線での洋次郎の受け手としての役割がなくなったことと、やっぱりスピードと勢いをチームにもたらそうという意図です。この時点でインスに頼るということは、余裕がまったくないということです。ここにきて、スペシャルプラン発動。

健太さんが続けます。アルに代えてたまを右メイヤに投入します。洋次郎がCMに回ります。スペシャルプランとはいえ、やれることは、がんがんフォアチェックとカウンターをやって縦の推進力を生むことだけなので、オラオラ度を高めます。

東京が早々カードを使いきったことをみて、アンジェさんが動きます。マテウスに代えて渓太を同じく左WGに投入します。コンディションの考慮だと思います。アンジェさんは奇を狙う必要はないので、作戦変更も常套です。

東京が縦に急ぐのでオープンになりがちなのですけど、マリノスの対応でバランスが保たれます。昨年一年をある意味捨てて熟成期間に当てた成果が、決戦の場面でも落ち着きとして現れているのでしょう。即物的イメージが出てきたマリノスだけど、チーム作りは最低二年スパンで考えているのかもしれませんね。

ここでアクシデントが起きます。イルギュが退場します。代わりに中林がGKに入ります。マルコスが下がり、シフトを4-2-2-1に変更します。直後のFKをしのいだ中林は、その後も大過なく過ごします。

そして、東京の攻撃を鷹揚に受けていたマリノスが、カウンター一閃。東京の夢を打ち砕く追加点をあげます。

77分。洋次郎のオフサイド判定に、東京は一瞬集中を切らします。ティーラトンは見逃さず、クイックリスタートを一気に前線の渓太につけます。渓太はチェックにきたつよしを背負いながらくるっと回転して、抜け出します。ペナルティエリアに入った渓太は、つよしとの1on1を左右の切り返しで征し、左足でシュート。彰洋が触りますけどゴール右隅に決まりました。マリノス3-0東京。

ビジネスモデルの転換期にあるマリノスの優勝に花を添えるゴールが、はえぬきの育成出身により生まれるというドラマは、日スタを沸かせるに十分でした。

実をいうと、優勝は現実的ではないなと思っていて、むしろマリノスに勝ちたいと願ってました。二位にしても同勝ち点であれば、グッドルーザーというかイデオロギーに対する矜恃は保たれます。もろもろシーズン中の勝ち点不利のエクスキューズも成立します。もちろんアウェイ八連戦の異常も主張できます。それも果たせず。東京の意図的な突貫をマリノスに上手にいなされた90分になりました。

アンジェさんが〆ます。和田に代えて渡辺を同じくCMに投入します。

そして、このままシーズン終了。マリノス3-0東京。

横浜F・マリノスのクラブ、サポ、スポンサーの皆様、J1優勝15年ぶりの優勝おめでとうございます。

東京の2019年シーズンの最終順位は、二位となりました。You'll Never Walk Alone♪

真の意味で、最後まで可能性を残し優勝争いを体験させてもらったはじめてのシーズンでした。悔しくて悔しくて、放心状態の家路でした。でも、とても充実した一年でした。優勝ということばを何度こころに思ったことか。今年の振り返りは別の機会にするとして、とにもかくにも、ここまで連れてきてくれたチームに本当に感謝です。ありがとうございました。そして一年間おつかれさまでした。

それにしても、どうやったら優勝できるんですかねぇ。ぼくらが優勝を経験するときは、いつかは来るのかしら。ああ。悔しい。

今年も一年間ぽちごやブログをご覧いただきありがとうございました。年末年始が皆さまにとって幸せな時間となることをお祈りします。