クリスマスを過ぎるとその瞬間から一気に和の季節が訪れます。今日から冬休みというかたもいらっしゃるでしょうね。
今年は、慌ただしい年末年始をぬうような天皇杯が戻ってきました。ベスト8からの闘いがはじまります。
東京は割り当てというか、ベスト8恒例の地方巡業になってしまいました。諫早です。よりによって、この時期の長崎遠征はとてもじゃないけど行けません。無事に味スタ決勝に戻ってきてくれることを願って、テレビ観戦です。と言って仙台で、ですけど(^^;;。
とても悔しい結果になりました。気持ちの整理がつかないかたも多いと思います。落ち着いたら、もし良かったら一緒に激闘を振り返ってみてください。
プラン通りの先行逃げ切りパターンにはまりかけましたけど、残り5分を耐え切れませんでした。悔しいけど、これがサッカーなんだな。ミステル東京の冒険がおわりました。そして今年二度目の愛する選手との別れです。
東京は今年のベストマッチ、2ndステージ第13節とほぼ同じ布陣、今年のベストメンバーです。シフトはミステル東京の集大成4-3-1-2です。GKは達也。CBはモリゲとまる。SBは徳永とフィテッセへの移籍が発表された宏介。3CHは右から拳人、秀人、ヨネ。トップ下は河野。2トップは遼一と慶悟です
広島はCSとCWCの連戦のなかで、晃誠と野津田を失いました。航平は間に合ったようです。単純なフィジカルのコンディションに関してはベスト8チームのなかで最悪でしょう。ただコンビネーションとメンタルを含めた総合的なコンディションは、逆に最高かもしれません。シフトは言わずもがな3-4-2-1です。GKは卓人。3CBは右から塩谷、千葉、翔。ボランチは青山とカズ。WBは今日は右に柏左に航平。2シャドウは今日は右にドゥグラス左に茶島。今日の1トップは皆川です。
東京も広島も2nd第13節の結果を踏まえたアジャストを前提にしたプランで臨むのは、誰の目にも明らかだと思います。
東京の成功要因は、プラン面ではミキッチと航平の両WBを押し込めたことと、ドゥグラスの自由を奪えたことにあります。加えて1st第6節で手痛くやられたジャガーにスペースを与えないバックス陣のがんばりが完勝を引き寄せました。成功者である東京は、当然同じプランで臨みます。つまり試合開始の時点で、今日の試合展開を左右するキャスティングボードは、ポイチさんが握っていたのです。
なんとなれば、東京にはあの日以上ののり代はありません。一方の広島は、あの日のエクスキューズを含めて、晃誠と野津田不在がありつつも、選択肢がまだあります。あの日最大のエクスキューズは、柏がいなかったことです。東京は、宏介の1on1はもとより、チームとしてミキッチを封じました。キャラが大きくことなるドリブラーでシュートもある柏に対し、同じことができるかが試合の趨勢を握ります。
広島の攻撃の特長は、中盤を潔く省略して一気に前線につけることです。前線に五枚並ぶので、カズと千葉は五つの選択肢を持つことになります。あの日は、ドゥグラスと晃誠にマンマーク気味についてバイタルエリアの選択肢を消すことに成功しました。これも要因のひとつ。
ですので、考えうる広島のアジャストプランは、ミキッチを見切って柏を使うこと、それからドゥグラスをシャドウではなく裏を狙う役につけることです。もうひとつは、ジャガーを頭から使うこともあり得るかなと思ってました。
ポイチさんの布陣の選択は、前述の通り。皆川の選択は、CWCからの良い流れを保ち、前線に明確なターゲットを作るという意図だと思います。いずれにしろ、スターターのポイントは、宏介vs柏。
東京の入りかたは、あの日とほぼ同じでした。拳人を航平の裏に走らせ、これを河野にフォローさせ、広島の左サイドを撹乱しつつ、高い位置で基点を作ります。もちろん宏介をフリーにするための罠です。
でも柳の下に二匹目のドジョウはいません。あの日の広島はコンサバティブな入りかたをしました。それが東京のプランと噛み合ってしまった要因です。ミキッチではなく柏を使った、ミステルに対するポイチさんのメッセージがここにあります。
航平サイドは翔とカズのトライアングルをバランス良くコンパクトに保ち、拳人を中心にした東京のアタックに対処します。自明ですけど、広島はビルドアップスタイルですから、トランジションポイントは低いです。左でトランジションすると翔、カズ、千葉がボールを回して東京のフォアチェックをかわします。この間に柏とドゥグラスを高い位置で並ばせます。東京にリトリートさせると、やや上がり加減の塩谷に預けます。ここに広島の攻撃スイッチがあります。塩谷の選択肢は二つ。ドゥグラスと柏です。最終的な狙いは柏なんですけど、直接つけるパターンとドゥグラスを経由するパターンがあります。東京のマーキングの状況を見て、塩谷、柏、ドゥグラスはパターンを使い分けていました。
今日の東京の中盤の守りかたは、左右アシンメトリーでした。右サイドはマンマークです。茶島は秀人、航平は徳永、翔は拳人がケアします。シンプルなマンマークなので、右サイドはキックオフから安定していました。何度か航平にクロスを上げられましたけど、茶島を秀人が消していたので、航平は単独でプレーせざるを得ず、効果的なクロスはほとんどありませんでした。
一方の左はゾーンです。大きな役割を担ったのは河野です。河野は基本的には青山をマークします。展開が塩谷サイドに向いた瞬間に、河野は青山から離れ、左サイドの守備に入ります。塩谷にボールが入ったらほぼ必ず縦パスが入ることがわかっていたのでしょうね。
左サイドがゾーンなのは、ドゥグラスと柏の動きにバリエーションがあるからだと思います。柏の前後を慶悟と宏介がケア、ドゥグラスの前後を河野とヨネがケアします。塩谷はあえてフリーにして、起点ではなく基点を抑えるイメージです。
右に比して左サイドは連動性が求められるので、アジャストに時間がかかります。ゆえに序盤は、宏介が柏と1on1の状況にさらされるシーンが目立ちました。アジリティでは柏のほうが上ですから、宏介は手を焼きます。柏が何度か危険な突破を見せます。
アジャストしてきた広島のプランがはまり、猛攻を受けることになります。でも東京は、次第に守備が安定してきます。一番の主要因は、モリゲとまるです。モリゲは皆川にマンマークでつきます。まるはヨネの後ろにいて、ドゥグラスが東京のゾーンから抜け出たところをケアします。茶島は前述の通り。なので、柏、航平からクロスがゴール前に供給されますけど、最終局面でモリゲとまるが跳ね返します。広島にシュートすら打たせない完璧な守備でした。
やがて左サイドのゾーンが安定してきます。塩谷の攻撃パターンを見切った左サイドのグループは、コレクティブに予見できるようになります。だから宏介も体勢を保ったかたちで柏と対峙できていました。柏から効果的なクロスが供給されなくなります。
守備が落ち着いたので、東京はあらためて攻撃を開始します。今度は慶悟にパスを集めます。左サイドに張った慶悟を基点に、内にヨネ外に宏介を置きます。宏介に柏との1on1の状況をプレゼントする意図です。
ちょっと理由を読めなかったのは、河野の役割です。河野はボランチの横のスペースに仕切りに顔を出し、フリーになっていました。でも東京はあえて河野を使いません。東京の攻撃の基本プランが河野を経由するかたちだという認識が広島にあるので、もしかしたら河野を見せて囮にする意図だったのかもしれませんね。
もうひとつは、ビルドアップの起点です。通常は秀人を頂点にした正三角形に徳永と宏介を加えた逆台形ですけど、今日は秀人をほとんど経由しません。秀人は攻撃時も下がり加減で、代わってモリゲが高めに位置取り、攻撃スイッチを押していました。これも理由はよくわかりません。細かいことですけど、ここに来てまた新しいミステルのサッカーを観ることができました。
37分。東京が押し込む状況が続いた時間帯。右サイドアタッキングサードのスローインからボールをつないでサイドチェンジ。宏介に渡ります。広島の守備網はボールサイドに寄せています。この時、というよりもこの少し前から、徳永がこの広島の守備のやり方を見て、大外を伺っていました。この時も徳永が高い位置でフリーになっています。宏介からの戻しを受けたヨネがルックアップ。徳永の呼び込みを見逃しません。徳永に気づいた茶島が航平に指示しますけど、航平は河野をケアしていて徳永につけません。茶島がケアすべきですけど、ラインを意識してか離れられません。ヨネは徳永にピタリとつけるスーペルなロングサイドチェンジを決めます。パスを胸で受けた徳永はゴール前の状況を確認。徳永には航平が寄せています。広島はゴール前に6人並んでいますけど、局面はゴール前のみ。ファアに慶悟がいて千葉が見ています。ニアに遼一が飛び込もうとして翔が見てます。遼一にやや遅れて拳人が入ってきて、カズのケアが遅れ加減です。徳永はこれを見逃さず、拳人に折り返します。拳人がトゥで触れたシュートが、千葉の前をとった慶悟へのパスのかたちになります。慶悟は右足で流し込みました。東京1-0広島。
東京の望み通りに先制できましたけど、あの日との微妙な違いがここにもあります。あの日の先制は70分。ジャガーが投入されて広島がモードチェンジした直後でした。そして1stの逆転負けでは、開始早々によっちが先制しています。今日もまだ後半まるまるたっぷり残っています。
守備が安定していたので安心感はありましたけど、なんと言っても今日の広島は、ジャガーだけじゃなく寿人も控えていますから。前半はリードしたまま終了。
後半頭から広島がアジャストします。フォアチェックをはじめました。東京の中盤とゴール前の守備が完璧だったので、状況を打開したかったのかもしれません。でもフォアチェックを専門とするチームをすらものともしなくなった東京守備網ですから、慌てることはありません。
ちょっと早すぎ感がした先制からのこちらの心配をよそに、東京の守備はますます研ぎ澄まされ、集中したコレクティブネスが増してきます。もともと広島の攻撃パターンがシンプルなこともあり、広島の攻撃をすべて読み切れるようになりました。たぶん選手は、この時間帯相当な手応えを感じたと思います。
なので先に動いたのはポイチさんです。皆川に代えてジャガーを同じくトップに投入します。ただジャガー投入はだいたい後半15分くらいなので、予定調和だったかもしれません。
ジャガーが入って、トップにポストがおさまるようになります。マークはやはりモリゲです。モリゲは緊張感があったでしょうね。皆川の時とは表情が違ってみえました。ここからが真の広島との真っ向勝負ですから。
そして、事件が起きます。66分に、慶悟が二枚目の警告を受けて退場します。これは地味ですけど攻守に大きな大きな痛手になりました。ここから先、事実上東京は完全に守勢に回ることを余儀無くされます。まず攻撃面では、前線の納めところを失います。なので後ろの選手を押し上げられなくなり、攻撃のかたちすら作れなくなります。守備でも慶悟は重要なフォアチェッカーのひとりです。それまで安定していた中盤左サイドのゾーンが効かなくなります。
それでも東京は、耐えます。ひたすら耐えます。まずはシフトを4-4-1に変更します。河野が左メイヤに下がります。そしてなによりも、最後の砦CBを中心としたペナルティエリア内の守備が堅く、マンマークに集中し続けます。
ただこれには東京に有利な条件がありました。ジャガーがトップに入ったことです。東京がリトリートするので、ジャガーの大好物、スペースがありません。必然的にスタンディングでのプレーになります。もちろんジャガーはテクニシャンでもあるのでクローズドスペースでも打開するタレントではあるのですけど、なにしろマーカーが日本代表で、今年のベストイレブンですから。
広島は普段着のサッカーを脱ぎます。東京の前線の枚数が減ったので、カズが下がらず中盤に残ります。カズに高い位置でコンダクトさせる意図だと思います。ただその分青山がちょっと位置取りを迷っているように見えました。青山はカズの横にいましたけど、もっと前でドゥグラス、茶島をフォローする動きをされたら怖かったです。カズを上げても広島の攻撃パターンそのものは変わらず、翔、カズ、青山、塩谷と回して、柏に預けて宏介との1on1です。
ミステルが動きます。河野に代えて羽生を同じく左メイヤに投入します。慶悟退場の時点で予想されましたから、ちょっと引っ張った感がありました。
そしてポイチさんが同時に動きます。航平に代えてミキッチが右WBに入ります。柏が左に回ります。ドリブルでは状況を打開できないと見たのでしょう。
宏介vsミキッチの再現です。そして宏介、ミキッチともに退団が決まっていますから、おそらく最後の対決です。宏介はパーフェクトでした。ミキッチのクセを見切っているのでしょうね。なんとなくミキッチを使ってくれるほうが、怖さがなくて安心して観ていられました。ただ、しきりにミキッチを使う分、左に回った柏の静けさがなんとも不気味でした。
そしてついにあの男が登場です。ポイチさんが動きます。茶島に代えて寿人をトップに投入します。ジャガーが左シャドウに下がります。このかたちが嫌でした。寿人のゴールセンスはもとより、ジャガーが一枚下がることで、小さいながらもジャガーにとっては十分なスペースができます。なによりも、モリゲが寿人のマークに変わり、ジャガーにはスピードで明らかに不利な秀人がつくことになることです。
あと15分、あと10分と、もうここから先は祈るばかり。時間が経つのがこれほど遅く感じたことはありませんでした。そして、後半も40分が過ぎ、長居が見えはじめた矢先、ついに猛獣の咆哮がとどろきました。
85分。達也のパントキックを塩谷が拾ってそのまま左に展開。翔から青山に。青山は拳人に背後のライン際にいる柏にフィード。広島陣から一気にアタッキングサードに入ります。柏は寄せてきた拳人を左脚トラップでかわしつつルックアップ。この時ゴール前は、ニアの寿人はモリゲがケア。やや遅れてファアに入るドゥグラスは宏介がケアしています。ただ、柏と並走して中盤から長駆前線に上がっていたジャガーを、ボールウォッチャーになっていたヨネが気づきません。これを見た柏はジャガーの頭にピンポイントで合わせます。達也は動けませんでした。東京1-1広島。
正直、これで終わったと思いました。東京は攻撃のかたちをまったく作れて無かったですし、もし逃げ切りだけを意図していたとしても、もう一度攻めるモードに切り替えるのは不可能だと思いましたから。
アディショナルタイムを含め、まだ十分な時間があったので、広島は一気にトドメを刺しにくるかと思いました。でも広島の選択は、延長止むなしのリトリートでした。
図らずもというか、昼間に現地で目撃した仙台vs柏も似たような展開で、リードする柏が退場者を出し、仙台のパワープレーになりました。数的優位の広島と仙台、数的不利の東京と柏、どちらも対照的な選択をして、とても興味深いです。
秋野が退場した直後に仙台が追いつきイーブンになります。ここで柏がとった作戦は、シンプル is the bestでした。ロングカウンターです。ロングフィードを前線に放り込みます。加えて前線に、基点になれるクリスティアーノと裏を狙える工藤、山中を配置します。
これに対し東京はというと、事実上攻撃を捨てました。柏と違って基点となる慶悟を失った状況がなんとも痛かったです。さらに東京にはスピードマンがいません。ずっと我慢していましたけど、よっちがいたらなと恨めしく思いました。
仙台は延長前半早々とリードします。その後、なぜかポゼッションせず、縦に急ぐ攻撃に固執します。ポゼッションを持たないならいざ知らず。リードした時間帯が早すぎたのかもしれません。
一方広島は、リードではないとは言え、チームとしての闘いかたを安定させることを優先します。攻めるときと守るときの間に休符がひとつあるイメージです。もしかしたら、広島の強さの根源はそんなところにあるのかもしれませんね。
後半アディショナルタイムにミステルが動きます。拳人に代えて翔哉を同じく右メイヤに投入します。
延長に入ります。シフトを4-3-2に変更します。遼一と翔哉を前線に並べます。翔哉投入の意図はこれでわかります。翔哉に預けて独力でアタッキングサードに運んでくれることを期待したのだと思います。
おそらく流れのなかでの得点は難しいなと思いましたけど、なんと言っても東京には飛び道具があります。昼間の試合で、手詰まりのときのクリスティアーノの威力をまざまざと見せつけられましたから、その残像が焼き付いていました。グッバイ&グッドラックを笑顔でさせてくれるのは、ほかならぬ宏介自身。
ただコンセンサスがとれていたのか、あるいはシンプルな宏介大作戦で臨んでいたのか、疑問に感じるプレーがいくばくかありました。パスよりもドリブル、無理なシュートよりキープを優先すべきだったと思います。
同時にリスクも内在します。後ろの構成をスタートに戻したとは言え、明らかに中盤サイドエリアの守備網がもろくなっていますから、それまで完璧だったミキッチ、柏対策が行き届かなくなる心配がありました。そして。
103分。ミキッチのスローインを塩谷がミキッチに戻します。ミキッチはルックアップしてゴール前を確認します。ペナルティエリア内は、寿人が前ジャガーが後ろの縦関係です。それに対し東京は、モリゲとまるが並んだまま。つまりジャガーがどフリーです。ミキッチはこれを見逃しません。でもミキッチのクロスは宏介が背中にあてていったんは死に体にします。でも不運なことに、ニアに飛び込む寿人の背後から忍び寄ったジャガーのもとに届いてしまいます。ジャガーは肩で合わせました。東京1-2広島。
ことばがありません。延長前半が終了。
ここから先はもう何も言いたくないので、抜け殻のように。延長後半の広島は、やはりリトリートします。当然東京のポゼッションが高まり、広島陣で過ごす時間が増えます。頼みの綱のセットプレーもできるようになります。
最後にいまさらながらミステルが動きます。ヨネに代えてバーンズを投入します。シフトを4-2-1-2に変更します。トップ下は遼一。
リトリートした広島は、ジャガーを本来のかたちで使います。114分、ジャガーを倒したモリゲが、覚悟の静かなる断末魔で退場。宏介にキャプテンを託します。バーンズが奇跡的なチャンスを二度作りましたけど、幻でした。
そして、すべてがおわりました。東京1-2広島。
ミステル東京の冒険がおわりました。ミステルへの感謝はあらためて綴るとして、今日はありがとう、おつかれさまを贈りたいと思います。
そして、宏介との惜別となりました。直に送別できないのが悔やまれます。オランダでもがんばってほしいです。
年内の東京ブログはこれでおしまいです。ご覧いただいている皆さま、本年も大変お世話になりました。いつも応援していただいてありがとうございます。来年もがんばります。よろしくお願いします。それでは皆さま、よいお年をお迎えください。