ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

ぽちごやのサッカー観戦法(観戦方法編)

2015-12-13 16:08:25 | サッカー

自分のサッカー観戦方法を解説することは、好みや癖や至らなさをさらけ出すようなもので、とても恥ずかしいです。でも、とても嬉しいことに、ブログを読まれたかたからどんな風にサッカーを観ているのか、質問をいただくことがあります。なので、恥を忍んでお話したいと思います。とっても変な観方をしているので、ご参考にはならないと思いますけど、みなさんのサッカー観戦にひと味加えるスパイスになったら良いなと思います。

まずはじめに、感覚的な話になるのですけど、サッカー観戦は状況を大雑把に捉えたほうが良いと思っています。サッカーは様々な要素が絡み合っていますから、ある意味で、定義付けするのはナンセンスです。たとえば守備的と言っても攻撃しないわけではないですし、攻撃がビルドアップ一辺倒なのかと言うとそんなことはなく、カウンターもあります。それに90分間で起こったことすべてを理解しようと思っても、まず不可能だと思います。捉え方として大事なことは、基本プランは何かを見つけることです。言い換えると、流れのなかで偶発的に起こったことやオプションを捨てる作業が必要ということです。基本かオプションかの見分けかたは、試合の入り際、いわゆる最初の10分のプレーをしっかりチェックすることです。ほとんどの場合は、この時間帯は基本プランで臨んでいます。サッカー観戦には、いい加減さと諦めと割り切りが必要なんです。

ここで言う大雑把とは、試合を流し見るということではありません。試合を理解するためには、なにより現場の情報を可能な限り収集することが求められます。その上で、状況を整理して分析します。

というわけで、なにしろ現場の状況をしっかりチェックする力が必要です。サッカー観戦力というものがあるとしたら、一番大切なのは、可能な限り多くの情報を収集する技術だと思います。よく陥り勝ちなのは、中途半端な情報量で型通りの分析をしてしまうことです。メディアの弊害だと思うのですけど、通り一辺倒な意見になって、おもしろくない。しかもそれが、選手や監督への批判であることが多いのですけど、フェアじゃないと思います。批判をするなら、状況をできるだけ正確に把握した上でないといけないと思っています。

前述しましたように、サッカー観戦はとても難しい作業です。ボールを追うだけでは必要な情報を得られません。なので、情報収集のために求められる技術は、いわゆるバードアイ、俯瞰的な視点です。前回テレビ画面にたとえましたけど、科学的な根拠はともかく、情報収集は視野の範囲に影響されると思っています。なので、ピッチから離れれば離れるほど俯瞰力が増します。もちろん逆に臨場感や迫力が失われてしまうのですけど、最初のうちは遠目から観てみるのも良いかもしれません。自分は味スタではバックスタンド中央の前から10列目付近を定席にしてます。さすがにピッチレベルでのバードアイはまだできませんけど、慣れればそのくらいの距離でも俯瞰的に観られるようになると思います。

視覚に入った情報を脳内にインプットするためには、それなりに作業が必要だと思っています。自分の場合は、どうやら視覚情報を声に出すことで脳に書き込まれるようです。サッカーに限らず仕事でも同様。いずれにしろ、ただ漫然と試合を流し見ているだけでは、俯瞰的に見られる席にいても情報収集はできません。自分なりのインプット方法を見つけてみるといいかもしれませんね。

自分のやり方をご紹介しますと、先に述べましたとおり声に出します。友達と観てるときは、あーでもないこーでもないとお互いに90分間喋りっぱなしなんですけど、ひとり観戦のときはさすがに迷惑だし気持ち悪いので、聞こえない程度にブツブツ呟いてます(^^ゞ。一緒に観戦されたかたならご存知なのですけど、自分は結構試合中うるさいです(^^ゞ。

まずは両チームのシフト(フォーメーション)をチェックします。今のトレンドは、だいたい4-4-2、4-2-3-1、3-4-2-1、3-4-1-2なので、最終ラインの人数と中盤の人数を確認できたら割と容易に把握できると思います。テレビ放送でかならずシフトの確認がありますけど、あれなんでやってるのか説明がありませんよね?。サッカー放送のわかりにくさの原因のひとつだと思います。シフトにはそれぞれ個性、つまり長所と短所があります。暗黙知的にこの個性を視聴者が知っていることを前提にしているのです。でもこれ、案外難しいんです。シフトでわかる長所短所は、スペースギャップが出来易い場所がシフトによって異なるということです。セオリーの話になるので細かくは解説しませんけど、戦術論の書籍はいっぱい出ているので参考なる書籍もあると思います。

シフトを確認したら呟きをはじめます。気づいたことをブツブツ呟くのですけど、相手チームの攻撃から確認します。これは前提として、東京のことは頭に入っているからです。東京は基本プランとの違いだけをチェックできればいいので、試合の最初は優先度を下げます。感覚的には、相手チームに関する情報量を東京のそれにできるだけ近づけるイメージです。浦和の場合も同様。

ちょっと逸れますけど、なので見慣れているチームと対戦する時は、スタート時点での情報量が多いので、より深く試合を楽しむことができます。広島、ガンバ、浦和、鹿島、川崎のように、長く個性的なサッカーを続けているチームは、基本プランを予備知識として持っているので、差分というか、キックオフから、その試合で何をしようとしているのかを観ることができます。逆にJ2、J3を観るときはしんどいです。両方とも知識がゼロなので、基本プランを確認するまでに15分から20分くらいかかります。90分まるまると70分とでは、情報の量と質が違うので、楽しさもやっぱり違ってきます。

予備知識が少ない場合を前提にしますと、最初のうちはボールホルダーの名前をパスがつながる度に呼びます。俯瞰力が必要といいつつ、やっぱり事件はボールサイドで起こりますから。ボールホルダーを追うことで、試合情報を少しずつ貯めていきます。何が見えてくるかと言うと、繰り返し名前を上げる選手が出てきます。きっとその選手は、攻撃の起点だったり基点だったり、あるいはストロングポイントだったりすると思います。とくに起点の選手のプレーに注目すると、基本プランがなんとなく見えてきます。東京なら秀人、モリゲ、まる、ヨネ。浦和なら勇樹、槙野、モリ。広島ならカズ、千葉。ガンバならヤット、今野ですね。ホントは、この時に攻撃のセオリーを予備知識として持っているともっと分かり易くなるのですけど、最初のうちは、起点が狙っているのが、ロングボールかショートパスか、サイドか中央かくらいを判別できたら十分です。スタジアムに何度も通うと、そのうちセオリーの知識は勝手に身につきますから。

そうやってボールホルダーを追っていると、そのうちにパターンが見えてくると思います。パターンというのは、たとえば秀人からモリゲ、徳永、ふたたびモリゲ、このとき河野がバイタルエリアでフリー、拳人が右サイドをオーバーラップ、モリゲは河野に長めのグラウンダーパスか拳人にロングフィード、みたいな流れです。あるいは、勇樹から槙野、ムトゥがバイタルエリアに下がってきて槙野がポスト、ムトゥは陽介に落とす、その間にタカが右サイドを全力で上がっていて、陽介か、戻しを受けた勇樹、あるいは絞った宇賀神からサイドチェンジのフィード、みたいな。なんとなくどっかで見たことがある風景でしょ?。このシュートまでの導線をイメージできるようになったら、攻撃の基本プランは把握できると思います。

その日の作戦として押さえておきたいポイントは、攻撃に転じた時に最初にパスを受ける選手です。上記の例だと河野(もしくは拳人)、あるいはタカです。これで何が分かるかというと、攻撃側のストロングポイントと守備側のウィークポイントを攻撃側のチームがどう考えているのかが分かります。Jリーグでは、だいたい正攻法で臨むチームが多いので、まずはストロングポイントを活かすことからはじめようとしますね。なので、最初に頻繁に使われるアタッカーがストロングポイントだと思っていいです。ただ、ちょっと難解なのは、東京の例です。東京のストロングポイントは宏介ですけど、右サイドの河野や拳人を最初に使うのは言わば囮です。これも、流れの続きをチェックしていれば、そのうち見えてくると思います。

今度はちょっとステップが上がるのですけど、ボールホルダーから目を離して、寄せてくる守備側の選手を把握します。こうすることで、守備側がマンマークなのかゾーンなのかが分かります。それから寄せるタイミングにパターンがあることが分かるようになります。誰にどの場所で誰がどのタイミングで寄せるかがパターンです。たとえば、中盤でまるから宏介に渡ったタイミングで、相手のMFが素早く寄せてきたら、そこをトランジションポイントと狙っていることが分かります。さらにはトランジションからの攻撃がショートカウンターを狙っていることも想像できます。逆に、広島やガンバのように、中盤では厳しい寄せを見せずに、整然とした守備網を作るチームは、ドリブルや縦パスを守備網で引っ掛けるゾーンディフェンスを意図しているのが分かります。

さらにステップを上げます。ボールホルダーからもディフェンダーからも目を離して、スペースを見つけます。まずスペースとはどんなものかを認識する必要があります。これは守備網を見ます。守備網がきちんと整然と並んでいる状況を残像として頭に残しておきます。それと今の状況を比較したときに、きちんと並んでいない場所がかならず出てきます。それがスペースです。むしろ守備網がきちんと並んでいることのほうが少ないので、スペースはそこかしこにあります。見つけるべきは、ボールホルダーの視野の範囲にあるスペースです。先ほどの攻撃パターンを確認できるようになったら、バイタルエリアでなぜかフリーになっている選手を経由してパスがつながるシーンが何度か出てくると思います。それがスペースで、上手く使えている状況です。東京の基本プランは、河野にバイタルエリアのスペースを見つけさせて、河野を経由して前線にパスを供給する形ですね。浦和の場合は、ムトゥと梅崎。もしボールホルダーが、モリゲやまるのように長いパスを持っている場合は、遠いところにもスペースができます。攻撃パターンを見つけるのは現状把握なんですけど、スペースが見えるようになったら、未来予想ができます。未来予想ができるというのは、ボールホルダーのプレーの選択肢が見えるということです。よく秀人や梶山のバックパスを批判する人がいますけど、スペースが見つからない場合に下げていることもあるので、安易な批判は選手には通じないと思います。

繰り返しますけど、サッカーは時々刻々とダイナミックに状況が変わります。相手との力量差、作戦の綾だけでなく、時間帯によって自ら状況を変える場合もあります。両チームの基本パターンを押さえられたら、それを基準にして違和感を探します。とくにアタッカーに注目すると違いに気づき易いです。基本パターンと違う選手の名前が出るようになったら、攻撃の作戦を変えたことが想像されます。あるいは攻撃の選手の名前が上がらなくなったら、いわゆるリトリート、引いて守っていることが考えられます。

以上で、ミッドサードとディフェンシブサードの90分間の状況はだいたい把握できると思います。サッカーの流れは中盤で決まるので、試合の流れの大部分を掴めたと言えると思います。

正直言って、アタッキングサードの理解は自分にはまだ難しいです。アタッキングサードでも、基本的にはギャップの攻防であることには変わりはないのですけど、中盤に比べるとはるかにタイトでスピーディですから、脳のなかでの情報量の解析が追いつきません。プレー経験があればまた違うのかもしれませんけど、現場でリアルタイムに状況を把握するのは今のところ無理です。なので、ゴールシーンだけは録画で確認します。ゴールはほとんどの場合守備側のミスが原因です。言い換えると、ミスを誘う周到なプロセスを用意しています。ボールホルダーの仕掛けに目が行き勝ちですけど、ボールホルダーをフリーにするための周囲の動きあってのゴールと言えるのかもしれません。

もうひとつ大事な観点はセットプレーです。ただセットプレーはセオリーの塊のようなものなので、インプレーのような視野の技術というよりかは、オプションの知識の抽斗の多さが求められますね。

やっぱり、試合をよりはやくより的確に理解して、様々な未来予想ができるようになるためには、セットプレー同様セオリーの知識を増やすことが必要です。自分が知り得たセオリーを細かく解説するととっても長くなってしまいますので、この場では控えますし、教材となる書籍がいっぱい出ているので、そちらを読まれるほうが絶対良いと思います。

ひとつだけ捕捉すると、セオリーを知るためには、試合を数学的に捉えることが望ましいと思います。おっと。数学が苦手なかたでも大丈夫。自分も苦手ですから(^^ゞ。数学ではなく、数学的。サッカーを文学的に捉えると、これはもう感覚論ですから、体系化するのは難しいですね。一般的にスポーツ番組やタブロイド誌レベルのスポーツの表現は文学的ですよね。だから、現場で起こった事実を映像、コメント、記事からは十分に把握できません。

数学的に捉えるというのはどういうことかというと、サッカーをいくつかの変数の組み合わせとして観るということです。変数、懐かしいですね。xとかyとかのアレです。数学には公式がありますけど、公式を持ってくると足し算なのか掛け算なのか定義が難しく、文学的になってしまいます。たとえば結婚が1+1なのか1×1なのか、正しく表現できないのと同じです。ですから公式は無視します。ここが、数学ではなく数学的と考える理由でもあります。変数には以下のものがあります。
・選手の特長
・インプレーの守備方法
・インプレーの攻撃方法
・セットプレーの守備方法
・セットプレーの攻撃方法
・チーム・コンディション
・環境条件

数学でご経験だと思うのですけど、変数が多いと答えのバリエーションも乗数計算のごとく増えていきますよね。セオリーの知識が増えると、変数を仮の固定値に変えることができます。aとかbとかのアレです。先ほど、東京の試合では東京を見てないと言いましたけど、そういうイメージです。セオリーを知っていればいるほど、見るべきポイントを絞ることができるのです。

視覚のことを文章で表現するのは難しいですね。お分かりになり辛いところがあったらごめんなさい。ホントは実際のプレーを見ながら解説できるといいのですけど。ご要望と機会があったら、いずれやってみたいと思います。

繰り返しになりますけど、サッカーの楽しみかたは人それぞれです。自分は、選手や監督のアイデアにできるだけ近づきたいと思っています。結果だけでなく、結果に至るプロセスを感じたいからです。プロセスを感じるということは、プレーの選択肢を知ることでもあります。サッカーはシンプルなスポーツですけど、シンプルゆえに多様性が高いことも魅力のひとつです。選択肢を知ることで、多様性を享受して、そしてもっともっとサッカーを楽しめるようになると思ってます。同じような感覚をお持ちのかたや、サッカーに興味を持ちはじめたかたに届いて、今よりもっとサッカーを楽しんで愛していただけたら、とても嬉しいです。


ぽちごやのサッカー観戦法(サッカー観編)

2015-12-13 00:05:52 | サッカー

長らくサッカーを観てきましたけど、ようやく今年になって、自分のなかでなんとなく、現地で観戦中にサッカーを理解できるようになってきた気がします。ブログをご覧いただいてるかたから、どんな風にサッカーを観てるのかご質問をいただくこともありますし、自分自身でもサッカー観戦方法を体系的に整理してみたくて、2015年秋現在の観戦力でちょっとチャレンジしてみます。毎年観戦方法を少しづつ変えているので、来年は違ったを意見を持っているかもしれません。調子にのって書くと本になってしまいそうな文量かも(^^ゞ。

肝心のサッカー観戦方法に入る前に、前置きを少々。自分のサッカー観を綴ってみたいと思います。

サッカーの楽しみかたは、人それぞれだと思います。Jリーグのファンのだいたい3分の1くらいはゴール裏住民だと思いますので、歌い跳んで応援することを中心に楽しまれているかたが一番多いでしょう。好きな選手を見つめるのも可愛いですね。ビール片手に雰囲気を楽しむのもいいです。ゴールシーンだけ追うのもOK。極端に言うと野次も迷惑をかけず個人で楽しむ範囲ならアリかもしれません。自分はひとつの夢があります。選手と居酒屋でマジで試合の話をしてみたいんです(もちろん実現はできないですけど)。つまり選手と同じ感覚で試合を捉えられたらなと思っています。もし同じような観方をされているかたがいらっしゃたら、自分の観戦方法も、もしかするとご参考になるかもしれません。

2015年秋の時点では、サッカーの全体像を大まかに捉えることはできるようになったと思います。でもまだセオリーや局面のプレーなど、ディテールは正直わかりません。自分はプレー経験がないので、プレーの感覚は永遠に理解できないと思います。セオリーは、これはもうOffJTでしょうね。そのような専門書があるのかどうかはわかりませんけど。

サッカーは、ルールもプレーも非常にシンプルなスポーツです。突き詰めると、脚だけでボールを扱うことだけですから。でも、サッカーの観戦はとてもとても難しいです。理由は三つあります。観戦のし易さ、言い換えると観戦する時の分かりやすさは、テレビサイズで考えるといいと思います。他の球技でいうと、バスケットボールやバレーボールなどの室内球技は、そもそもテレビの画面サイズでコートがデザインされてます。それから野球、ラグビー、アメリカンフットボール、クリケットは、グランドは広いですけど、プレーは基本的に局所的です。だからテレビ画面で映っている範囲だけで、現在の状況把握と未来予想が十分にできます。そこへいくとサッカーは、ボールのある位置だけでなく、オフ・ザ・ボールのエリアでもプレーが行われているし、むしろ次のプレーの種、つまり未来予想は、ボールの無い場所で起こっていることがあります。目がいくつあっても足りません。これがサッカー観戦の難しさの原因のひとつです。

次の原因は、これは言わずもがなだと思いますけど、サッカーは他の球技と違って、原則はプレーが止まりません。ダイナミックに場面が変化します。なので現在の状況を理解するためには、瞬時の理解力が求められるのです。これは実際には不可能だと思います。

最後のひとつは、サッカーは人間がやるスポーツだということです。サッカーの試合を形作るのは、プレーしている選手の思考と選択です。野球の場合は、静的には、ピッチャー、キャッチャー、セカンドベースマンは高い思考力が求められると思いますけど、ダイナミックに変化する状況下での思考を求められることはまずありません。アメフトも同様。ラグビーはプレー選択のオプションが豊富なので状況判断を求められますけど、サッカーよりもパターン化されています。人が何を考えているかは、正直他人には完全には理解ができません。この人間関係の本質が、サッカーというドラマを形作っていると言えると思います。

というハードルの高い作業を、サッカー観戦では求められます。ある意味で、サッカーファンはどMだと思います。現実の世界でも同様ですけど、いろんな要素で形成されている社会を解読するためには、数学的なアプローチが、複雑さを人間が理解できる程度に溶解してくれます。経済学が良い例ですよね。

サッカー観戦方法の解説に入る前に、もうひとつ前置きが(^^ゞ。サッカーの本質です。形而上的にサッカーを捉えると、ギャップの攻防だと思います。ギャップという表現はちょっと分かりにくいですね。対戦するチームの差と思っていただいていいと思います。試合は、サッカーがもともと持っているギャップのうち、対戦する両者それぞれがクリティカルだと考えるものを互いにピックアップすることで成立しています。分かり易いところを上げると、テレビ中継で試合のキーマンを上げたりしますけど、それもギャップのひとつです。ギャップを大別すると、スキルギャップとスペースギャップの二つです。

たとえば、よっち、ジャガー、パトリックなどはスキルギャップを生み出せる選手の典型ですね。マーク相手を、技術、パワー、スピードで凌駕して独力突破できる選手がいれば、守備側は対処のしようがありませんから、スキルギャップを活かすことが、最も効率的で基本的な作戦だと言えます。ただ、守備の技術が高度なプロレベルでは、スキルギャップをオプションに使うことはあっても、それを中心にすると良い結果が長続きすることはあまりありません。よっち頼みになっていた今年の1stステージの後半を想い出していただくと分かり易いと思います。

スペースギャップはもう少し定義が必要ですね。ボールホルダーより後方はスペースのうちには入りません。あくまでも攻撃方向です。スペースには2種類あります。最終ラインとゴールラインの間、いわゆる「裏」のスペースです。もうひとつは、守備網の隙間です。文章では難しいので、イメージで表現しました。ぼくらが観戦するレベルの試合では、スペースギャップの攻防を観る機会のほうが多いですね。ヤット、俊輔、憲剛のように「試合が見えている」選手を中心に据えるチームは、スペースギャップを前提に攻撃の基本プランを作ります。

サッカーのプレー人数が11人なのは、いかにも絶妙な設定ですね。極論すると、11人でやるからドラマチックなんだと思います。11人だと、かならずどこかにトレードオフが生まれます。たとえば8人で守れば、3バックでも4バックでもほとんどのスペースギャップを消すことができて、プロレベルの拮抗下であればまず大崩れはしません。でも攻撃の人数が不足します。逆に5ないし6人で守る形だと、攻撃は活性化しますけど守備の強度は脆くなります。

サッカーは、基本的にはもちろんゴールを目的とします。サッカーはある意味で陣取り合戦なわけですけど、これはなぜかと言うと、シュートという人間が行う行為に影響します。ゴールするためには、シュート精度を高める必要があります。自陣から確実にゴールできる能力の選手がいたら、おそらくサッカーはまったく別質のスポーツになるでしょう。たとえメッシやクリスティアーノ・ロナウドであったとしても、シュートレンジというものがあって、ゴールの確度を可能な限り高めるためには、より相手陣深くでプレーする必要があります。このシュートレンジの統計的なアベレージが、おそらくペナルティエリアです。したがって攻撃の近視眼的な目的は、ペナルティエリア内でシュートを打てる状況を作り出すことにあります。

ここでもうひとつのサッカーの特長を上げてみましょう。サッカーは相対的なスポーツです。つまり相手がいます。サッカーの試合を理解できるかできないかの境界線は、相手を意識するかしないかにあると思っています。自分のサッカー観戦方法の特長は、対象のチームを相手側からの目線で観ることにあります。たとえば東京の試合の場合、東京を対戦相手側から観てます。この、相手という存在が、サッカーの複雑性を増し、そして面白くしていると言えます。

いかなるチームも、守備の仕組みを前提にシステムを構成していると思います。つまり、ギャップを消すことを考えます。スキルギャップができるだけ生まれないような選手を選択し、スペースギャップができるだけ生まれないような守備網を敷きます。攻撃側からの視点で言うと、スキルギャップができるだけ生まれるような選手を選択し、スペースギャップができるだけ生まれるような作戦を採用します。サッカーは、基本的には攻撃側が有利な設定になっています。これはあらゆる球技に共通することだと思いますけど、攻撃側に状況を作る権利があります。攻撃側がギャップを作ろうとし、守備側がそれに対処するというラリーの積み重ねがサッカーの試合を構成します。

以上の点から、ものすごくシンプルに表現すると、サッカー観戦はギャップを発見する作業だと言えます。ギャップを試合中に見つけられるようになると、両チームの「意図」を推測できるようになります。

自分は、自分のブログを戦術分析とは思っていません。そもそも戦術ということばが好きではありません。先にも述べましたけど、サッカーはダイナミックに状況が変遷するスポーツです。戦術ということばが発するニュアンスは、試合で起こっている事件を抽象化する行為をイメージします。それはそれで価値があることだと思いますけど、自分はできるだけ現場で起こっていることを総括的かつ客観的に捉えたいと思っているので、抽象化に意味を見いだせません。むしろ自分は人間の行為を観ていたいと思っています。生身の人間である監督や選手の「意図」をたぐり、相対性のなかで紡ぎ合わせることを目指しています。ブログをご覧になったかたから「相手へのリスペクトがある」、「サッカーへの愛がある」というコメントをいただくことがありますけど、もしかしたら自分のそのようなアプローチが、文章の上に染み出しているからなのかもしれません。そうだったらとても嬉しいことです。

前置きが長くなりましたけど、次回はようやく観戦方法の解説をします。一緒にギャップを見つけてみましょう。