映画『利休にたずねよ』がモントリオール映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞したとのニュースを耳にしたのは先週のことだった。
東京五輪招致のニュースの向こうに隠れてしまった感があるけど素敵なニュースですよね。
12月に公開されると紹介されていた。
なに 12月 そんな素晴らしい賞を受賞したとなると原作が売り切れてしまうに違いない!
と思い込み、翌日には書店に駆け付けた。
棚にはなく、平積みにもなっていない。
検索用端末で検索してみると《在庫有り》。
書店スタッフに頼んで探してもらったら、倉庫に保管されていた。
あ~、良かった、買えた
いつもの通り、帰りの電車で摘み読み
…あの女…。
…緑釉の香合…。
ふぅぅん、それが鍵ね…
千利休という歴史上の偉人について、私は知らない。
千利休または宗易。安土桃山時代の堺商人にして茶人。豊臣秀吉の茶頭。千家流茶道の始祖。大徳寺山門の木像を口実に秀吉に断罪されて自刃。
…という極々初歩的なことしか知らない。
織田信長を中心にした歴史小説を読んでいるとしばしば出てくる人物群の中の一人というに過ぎない。
それがよかったのかもしれない。
予備知識や固定観念がほとんどないからすぅぅぅ~~っと物語のなかに入っていけた。
何が利休を利休たらしめたのか。利休の心の変遷がその時々の立場に回帰しながら描き出されていく。
選び抜かれた言葉で、華美な修辞や大げさな表現をそぎ落とした淡々とした文体で物語が進められていく。
逃げ場に出来るような外連や派手さがないだけに、内容の重みが際立つ。
「しかし、もし、あの場に茶の湯の数寄者がおりましたら………………」
最後のシーンで若き日の利休が武野紹鷗に言い切った一言。
そこにはすでに、後の侘び寂びの茶の神髄となる思想の萌芽がある…。
読後感。
美しかった
とだけ言っておこう。
表題『利休にたずねよ』。
「貴方は時に秀吉が羨ましかったのではございませんか?天下人となりおおせてもなお下賤で無教養な田夫野人のままでいられた秀吉の野性を、羨ましく思われたこともあったのではございますまいか?」
今は、そう尋ねてみたい。
再読したら、違うことを尋ねてみたくなるだろう。
さて、私は茶道にまったく興味が無いわけではない。
目下のところ習ってみたいと考えてはいないが、興味が無いわけではない。
ただ、“侘び”だの“寂び”だの、はたまた“一座建立”だの“一期一会”だのとお題目のように唱えてただ悦に入っているのでは、秀吉となんら変わらんなぁ、と思ってしまった。
東京五輪招致のニュースの向こうに隠れてしまった感があるけど素敵なニュースですよね。
12月に公開されると紹介されていた。
なに 12月 そんな素晴らしい賞を受賞したとなると原作が売り切れてしまうに違いない!
と思い込み、翌日には書店に駆け付けた。
棚にはなく、平積みにもなっていない。
検索用端末で検索してみると《在庫有り》。
書店スタッフに頼んで探してもらったら、倉庫に保管されていた。
あ~、良かった、買えた
いつもの通り、帰りの電車で摘み読み
…あの女…。
…緑釉の香合…。
ふぅぅん、それが鍵ね…
千利休という歴史上の偉人について、私は知らない。
千利休または宗易。安土桃山時代の堺商人にして茶人。豊臣秀吉の茶頭。千家流茶道の始祖。大徳寺山門の木像を口実に秀吉に断罪されて自刃。
…という極々初歩的なことしか知らない。
織田信長を中心にした歴史小説を読んでいるとしばしば出てくる人物群の中の一人というに過ぎない。
それがよかったのかもしれない。
予備知識や固定観念がほとんどないからすぅぅぅ~~っと物語のなかに入っていけた。
何が利休を利休たらしめたのか。利休の心の変遷がその時々の立場に回帰しながら描き出されていく。
選び抜かれた言葉で、華美な修辞や大げさな表現をそぎ落とした淡々とした文体で物語が進められていく。
逃げ場に出来るような外連や派手さがないだけに、内容の重みが際立つ。
「しかし、もし、あの場に茶の湯の数寄者がおりましたら………………」
最後のシーンで若き日の利休が武野紹鷗に言い切った一言。
そこにはすでに、後の侘び寂びの茶の神髄となる思想の萌芽がある…。
読後感。
美しかった
とだけ言っておこう。
表題『利休にたずねよ』。
「貴方は時に秀吉が羨ましかったのではございませんか?天下人となりおおせてもなお下賤で無教養な田夫野人のままでいられた秀吉の野性を、羨ましく思われたこともあったのではございますまいか?」
今は、そう尋ねてみたい。
再読したら、違うことを尋ねてみたくなるだろう。
さて、私は茶道にまったく興味が無いわけではない。
目下のところ習ってみたいと考えてはいないが、興味が無いわけではない。
ただ、“侘び”だの“寂び”だの、はたまた“一座建立”だの“一期一会”だのとお題目のように唱えてただ悦に入っているのでは、秀吉となんら変わらんなぁ、と思ってしまった。