フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

フランス語が想起させるもの CE QUE LE FRANCAIS M'EVOQUE

2006-12-27 01:08:49 | フランス語学習

クリスマスに友人MDのお宅に招待を受けた。ご家族・親戚が集まる席なのでお断りしたが、是非とのことで出かけた。いろいろな方とお話させていただき、奥様手作りの創造性溢れる料理を楽しみながら4-5時間があっという間に過ぎていた。おまけにプレゼントまでいただき、恐縮しっぱなしの一日となった。そのプレゼントは奥様が選んだというクロード・ベルナールの 「実験医学序説」。

Claude Bernard “Introduction à l'étude de la medicine expérimentale

実験科学の分野に携わる人にとっては古典中の古典で、岩波の日本語訳は持っているが、まどろっこしいこともありまだ読むところまで行っていない。おそらくMから私が科学哲学のようなところに興味を持ち始めているということを聞いていたものと思われる。いつもながらその心遣いには感謝の念を禁じえない。

その日、Mが私に聞いてきた中に次の質問があった。どうして英語ではなくフランス語に触れることにより、そんなにいろいろなことに興味が湧いてきたのか。その時は、結論めいたことしか話せなかった。以前にも書いたが、自分の中では英語はあくまでも仕事のための言葉、まさしく道具としての機能しか期待していなかったが、フランス語やその文化に触れることによりその背景にまで目が行くようになってきた、というようなことである。

その後、フランス語に向き合ったときに自分の中でどのようなことが起こっているのかを思い出してみた。例えば、私が好きになった言葉に "ouvrir votre esprit" というのがあるが、直訳すれば 「精神を開く」 ということ。そう訳した時、この言葉の意味がより具体的になってきた。現在のみならず過去に存在した世界、そこに生きた、あるいは生きている人や存在する、あるいは存在した物に精神を開く、理解するということだと体感することになった。そう感じた時に、自分の精神がそれまで閉じていたことに目を向けないわけにはいかなかったのである。それからかなり経ってから、それを英語で言えば何のことはない "open your mind" に当たることを知ったが、この言葉からそういう反応は生まれてこない。

あるいは、よくよく考えるという意味の réfléchir という言葉に出会った時に、過去のことを振り返り、周りを見回し考えを巡らせるという具合にその中味を自分の中で反芻しながら読んでいることに気付く。ここでも同じように、それまで réfléxions ということをしてこなかったな、と痛感するようになる。同じようなことが芸術作品を読んだり、見たりする時にも無数に起こっていて、それがあらゆることに対する興味を掻き立てることにつながったのではないか。そうなったのは、フランス語が私にとって処女地であったことが大きいのかもしれない。全く何も知らない状態から始めているので、ある言葉に出会った時に単に日本語に置き換えるだけではなく、その意味するところを考えるという作業を無意識のうちしていたのではないだろうか。

これでMの疑問に答えることになるだろうか。いずれ機会があれば説明してみたい。この話は先日の 「翻訳することは理解すること」 ともつながっているようだ。

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