私のフランス歴はわずかに6年程度である。それまでどっぷり浸かっていた英語圏から紛れ込んだので、フランス語界 (確かではないが、どうもありそうである) を少しは客観的に見ることができるつもりだ。今日、フランス語界を覗くために日仏会館であった以下のコロックに出かけた。日本でフランス文化を広めるための名案や何か刺激的なお話が聞けるのかと思って出かけた。
外国語教育ターブルロンド 「英語だけでいいのか?―フランス語教育と人文社会科学」
その答えは、「いいはずがない。フランス語 (外国語) を学ぶことにより複眼的な視点を得、それが新しい価値観に目を開かせ、寛容や明確にものごとを把握することに導く」 というようなことになるのだろう。それは、ある意味で教科書的な回答で、想像できることである。今回の会でも、ほぼ同様の意見が多かった。
私の属していた学会でも似たようなテーマのシンポジウムやワークショップが開かれたことがある。どうすれば・・・ができるようになるのか、という手のテーマが公開で取り上げられるようになるとほぼ末期症状であると言って間違いない。おそらく、フランス語界においても同じようなテーマがこれまで何度も論じられてきたと想像できる。私の独断で結論から言わせていただくと、フランス語が日本で優位になることは当分ないだろう。人が生きていく上で必要なものに皆さん飛びつくのは当たり前で、それが今のところは英語になっているからだ。これは致し方ないが、現実である。その上で、フランス語界の人たちは、この状態を変えようという強い意志のもとに、これからを模索しているのかと思った。前半だけの聴講になってしまったので正確ではないかもしれないが、その難しい状況に踏み込み、模索の状況が語られるのかと思ったが、むしろこの状態を分析しながら楽しんでいるように私には見えた。
現実のシステムとして英語優位の状態を変えられない以上、フランス界にいる方が自らの存在に照らして、フランス語や文化との関わりとその意味を主観的に語る以外に人を促しフランスに目を向けさせる名案は今のところないように思うが、いかがだろうか。私自身のことを振り返っても、よっぽどのことがなければフランス語などに入り込まないのが普通だと思うからでもある。如何にそれが人間にとっての高邁な意味があろうが、人を促すことはないだろうというのが私の直感である。ここでも何度か取り上げたことがあるが、知識で人を動かすことはできないのである。
フランス語界の中でいつまでもこのようなお話をしているのではなく、その外に出て積極的に働きかける時期に来ているのではないだろうか。そんな印象をもって会場を後にした。