ここ一両日、Le Monde の美術ブログ、Amateur d'art (私の仏語ブログでブックマークしている) からのアクセスが異常に多いので、不思議に思い久しぶりに訪問してみた。ailleurs と分類されている記事を読んでみると去年の Blog de l'année に選ばれ、全体でも4番目、美術部門ではトップにランクされている。Amateur d'art 氏は言う。「作家でもジャーナリストでもない、美術の学生でもなかったし専門家でもない私のような者の書くブログがこれほどの支持を得たことを嬉しく思う。感謝したい。」 と。
そして、彼の元に届いた新年の挨拶の中に心に響くものがあったと言う。チリの詩人、パブロ・ネルーダ Pablo Neruda (1904-1973) の詩のスライドショーだ (このページの上から3番目の Présentation PowerPoint をクリックしてください)。素晴らしい雪景色を背景に表れるそのフランス語訳の詩は、私の心の中にも直接語りかけてくる。奮い立たせてくれる。久しぶりに朝から感動した。
彼の言いたいところをわかっていただくために日本語に直してみたが、朝の感動はもはや蘇らない。フランス語に堪能な方は、スライドショーで直に味わっていただきたい。
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その男はゆっくりと死に向かう
旅をしない人
本を読まない人
音楽を聴かない人
その目で発見することを知らない人
その男はゆっくりと死に向かう
自尊心を自ら破壊する人
決して他人の手を煩わせない人
その男はゆっくりと死に向かう
日常の奴隷になり
毎日同じ道を歩く人
決して道標を変えない人
決して服の色を変えようとしない人
そして決して見知らぬ人に声をかけない人
その男はゆっくりと死に向かう
瞳に再び光を与え
傷ついた心を癒す
愛情や感情の渦を避ける人
その男はゆっくりと死に向かう
仕事でも愛情生活でも不幸にある時
進む道を変えない人
夢を実現するために
危険を冒さない人
人生で一度たりとも
もっともらしい助言に逆らうことのなかった人
今を生きよ!
今日に賭けよ!
今すぐ動き出せ!
ゆっくりと死に向かうな!
自らの幸福(しあわせ)を奪うことなかれ!
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(以上、paul-ailleurs 訳)
ネルーダは初めての人だったのでネット・サーフしてみた。何とマチュピチュについても詠っているようだ。急に彼の中にも旅をしたくなってきた。
ところで、どうして Amateur d'art サイトからのアクセスが増えたのか、その訳は未だにわからない。
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(version française)
(2006-02-20) ネルーダが出てくる映画 「イル・ポスティーノ」 を見る
「イル・ポスティーノ」という映画で、ネルーダという詩人が出てきたのですが、そのネルーダのことなのですか(とお聞きしても、困るでしょうね)。
貴ブログ、読ませていただきました。テーマになっている西脇順三郎の言葉、
「生きていることは
よくきこえないものを聴くことだ
よくみえないことを見ることだ」
は私の念頭にあるもので、惹かれました。
ネルーダは突然私の前に現れた人なのでまだよくわかりませんが、彼のこの詩は私の心にあるものをよくぞ言葉にしてくれた、という感じです。話が通じそうな気がしています。
貴ブログ、ブックマークさせていただきました。またよろしくお願いします。
ネルーダについてはこの詩しか知らない状態ですので確実なことはいえませんが、おそらくそうだと思います。Tsutsumiさんの前に訪問されている冬月さんのブログにその記述があります。ネットで調べたところ、彼の言葉に対する感覚(比喩や暗喩など)が鋭いとの指摘がありました。
私もその映画を見たくなってきています。またよろしくお願いします。
↑のコメントにありますが、イル・ポスティーノに出て来る詩人がそのネルーダです。
ちなみにこの映画はとても素敵です。
私は2度ほど見ましたが気に入っています。
郵便配達役の主人公は心臓が悪いのをおしてこの映画を撮影し終了してから亡くなったそうで、彼は出来上がりを見る事が出来なかったという話を読みました。
興味深いエピソードありがとうございました。
イル・ポスティーノは、ずいぶん前に日比谷シャンテで観たのですが、とてもいい映画です。
確か映画の主人公もそのようなことを言っていましたが、パブロ・ネルーダの詩の、言葉の波にただようような、そんな感覚を思い出しました。