フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

パリ最後の夜 LE DERNIER JOUR DE PARIS- AMATEUR D'ART

2005-07-08 23:51:50 | パリ・イギリス滞在

ここ2-3日肌寒い日が続いている。今日も雨が時々降っていた。昨日は働いているセクションの人が、私のためにそれぞれ料理を持ち寄ってパーティを開いてくれた。私が皆さんを招待しようと提案したのだが、受け入れてもらえずこのようなことになってしまった。MDからはプレゼントがあった。中世美術館で聞いたスペインの中世音楽に彼の家で再会したというお話を書いたが、そのCDであった。実は昨日 FNAC で探したのだが見つからなかったもので、感激。

今日はこれからの仕事の打ち合わせをMDとした後、ケーキを囲んでお返しのお別れパーティを開いた。

-------------------------------------------

その後、一ヶ月に及んだパリ滞在の最後に不思議な出会いが待っていた。少し長くなるが、フランス語の勉強もかねて書いてみたい。

一昨日の夜、久しぶりにブックマークしている展覧会などを扱っているサイトに行って驚いた (Amateur d'art: visites d'expos)。これまで日本の方からいろいろコメントをいただき、励まされてきた。今回は日本語もわからない方が、そのブログの中で私のサイトについて触れていた。今パリにいるので、何か不思議な、ありがたい気持ちになった。

そこには次のように紹介されている。

J'ai commencé ce blog le 28 mars. J'ai depuis publié 25 papiers, et reçu 50 commentaires provenant d’une vingtaine de personnes, souvent fidèles, avec qui des liens se développent peu à peu.
Bien que n'ayant jamais parlé du Référendum sur la Constitution Européenne, j'ai aujourd'hui entre 200 et 250 visiteurs par jour. Ce chiffre me fait très plaisir. Etre inclus dans la Sélection du Monde m'a aussi fait très plaisir. Parmi les sites qui ont eu la gentillesse de me mentionner, il y a même un japonais, nommé Paul Ailleurs, dont la devise semble être In vino veritas.

(私は、3月28日にこのブログを立ち上げました。すでに25の記事を発表し、20人くらいから50のコメントを貰っています。彼らとのコミュニケーションは徐々に発展しつつあります。UE憲法の投票については話したことはありませんが、毎日200-250の訪問者がいます。この数字を嬉しく思っています。またル・モンドにこのブログが載ったことも非常に喜んでいます。私のブログについて触れてくれているサイトの中には、In vino veritas がタイトルと思われるサイトをやっている Paul Ailleurs という日本人もいます。)

そのページに以下のコメントを送った。

Merci de commenter mon site. Je suis très honoré. J'habite à Tokyo, mais je suis à Paris depuis un mois. Malheureusement je dois partir ce week-end. Il y a 4 ans, je suis devenu francophile (je ne sais pas pourquoi), et j'ai commencé à écrire toute les choses qui sont evoquées par la culture française. Je reviens à votre site. À bientôt.

(私のサイトについて触れていただき、ありがとうございます。私は東京に住んでいますが、一ヶ月ほどパリにいます。残念ながらこの週末には去らなければなりません。4年前にどうしてかわかりませんがフランコフィルになり、フランス文化に触発されるすべてのことについて書き始めました。また訪問させていただきます。では近いうちに。)

このコメントに対して、直ちに以下のようなメールが入った。アクサンなどで文字化けしていたのを推測で再現してみる。

J'avais en effet noté le lien sur votre site, mais n'avais évidemment pas pu comprendre. Je ne savais pas si vous étiez un Français au Japon, ou un Japonais francophile et francophone. J'aurais été ravi de vous rencontreré à Paris, mais je suis à Londres et ne rentre que vendredi. A une prochaine fois, j'espère. Je suis allé une dizaine de fois dans votre pays, pour affaires et une fois un peu de tourisme (ascension du Fuji Yama). Mais sans connaître la langue, il est difficile d'appréhender l'histoire, la culture. Et aussi, je trouvais un tel écart entre ce que je savais des films et de la littérature japonaise, et, de l'autre côté, mes contacts avec les hommes d'affaires, que c'était assez frustrant.

(以前からあなたのサイトのリンクについては気付いていましたが、読むことができませんでした。あなたが日本にいるフランス人なのか、フランコフィルでフランコフォンの日本人なのかわかりませんでした。パリでお会いできれば嬉しいのですが、今ロンドンにいて金曜にならなければ帰れません。おそらく次の機会に。これまで日本には10回は行っていると思います。仕事がほとんどですが、1回は富士山に登りました。しかし言葉がわからないと歴史や文化を理解するのは大変です。それに日本映画や文学で知っていることと実際に仕事で会い、苛々させられることの多い日本人とのギャップの大きさに戸惑っています。)

このメールに対して、昨日の朝以下の返事を出した。

Merci de votre réponse. Je suis 100% Japonais. J'ai commencé à apprendre le français il y a 4 ans et cette fois-ci j'ai eu beaucoup de plaisir d'utiliser la langue musicale et merveileuse, même si ça m'a gêné. Si vous avez le temps vendredi soir, j'aimerais vous voir quelque part. Si vous serez fatigué, à la prochaine fois, peut-être au Japon.

(ご返事ありがとうございます。私は純粋の日本人で4年前からフランス語を始めました。今回は、少し大変なのですが、音楽的で素晴らしいフランス語を使う喜びを感じています。もし金曜の夜お時間があるようでしたら、どこかでお会いしたいのですが。お疲れでしたら、次の機会に、日本ででもお会いしましょう。)

その10分後に以下のメールが届いた。

Avec plaisir (à moins que les attentats à Londres ne me bloquent ici !)
Vendredi 18h au café B, ça vous conviendrait ?
(喜んで。今度のロンドンへの攻撃でここから動けなくならなければ。では金曜午後6時カフェBで、よろしいでしょうか?)

カッコ内の彼の話は冗談かと思っていたら、周りが騒ぎ出したので本当にロンドンがやられたことを知る。メールにはOKの返事を出した。

----------------------------------------------------

全く知らないフランス人と rendez-vous をするというので、今日のパーティの時に行くのは危ないのではないか、要注意、という声が多数。途中から加わった隣のセクションの人もやや呆れ顔であった。thrilling だ、というのをフランス語で何というのか聞いてみると、この場合は effrayant ではないかとのこと。少し心配になりながら部屋に戻った。出る時に受付の人に今晩の予定を言うと、もし明日戻っていなかったら誰に連絡すればいいのか、と真面目な顔でからかっていた。

約束の時間に少し遅れていたので急いで Centre Pompidou (Beaubourg) の近くのカフェへ向かった。中に入りそれらしい人を探していると、向こうからこちらに乗り出して来るような素振りをする人がいるのですぐにわかった。大体同年代で、芸術を愛するような風貌の人がそこに座っていた。私の直感は正しかったと実感し、それから1時間密度の濃い話をした。

彼はワイン関連の仕事をしていて、ロンドンで4日、残りをパリで過ごしている。暇を見て他の街に行き芸術に触れるという。今回のロンドンのテロの一つは彼のオフィスから300 メートルのところであり大変だったようだ。昨日予定を早めてパリに帰ってきたのだが、ロンドン中心はまさに砂漠のようで、交通機関は全くなし。困っていたところ、rickshaw を見つけ駅まで行ったそうで、夢のような経験だったという。onirique という形容詞を使っていた。美しい言葉だと思った。この騒乱の中、イギリス人の落ち着いた対応に感心していた。

私はアメリカに7年滞在し、これまでアメリカからものを見ており、フランスに目覚めたのはほんの4年前、フランス文化に触れることによりいろいろなことに目が開かれて exciting だというような話をする(exciting は excitant かと聞くと、それは drogue や sexe に関連した場合で、文化的な場合は intéressant とのこと)。彼もアメリカに同じ7年いて、ボストンのMITの後、ワシントンDCの世界銀行に勤めていたという。日本にも行っているが、最初の3つの夢、旅館に泊まること、大衆浴場に入ること、富士山に登ることのすべてを成し遂げたと満足げだった。

彼が今やろうとしているのは、iPod で展覧会の解説(型どおりのものだけでなく、面白いものも)を télécharger して楽しめるようにすることだそうである(企業秘密でなければよいが)。そうなれば、展覧会や美術館がもっと魅力あるものになるだろうということで期待したい。あっという間の1時間であった。ありがたかったのは、彼がフランス人に話すのと全く同じ調子で(話し方を言葉のよくわからない外国人に対するような調子に変えるのではなく)話してくれたことである。こういう時は、言葉の誤りを余り気にせず、自分なりに内容に集中できるので実質的な話がどんどん進む。この他にもいろいろなテーマが話題になり、それぞれの考えのエッセンスを出し合うというような rendez-vous になったようだ。こういう1時間も面白いものだな、と思う。また私がパリに来たときに会うことを約束して分かれた。

----------------------------------------------------

彼と別れてから、会う前に若干の不安があったせいか、久しぶりの解放感、カタルシスを感じながら Halles のあたりを歩き回る。偶然見つけたアメリカン・カフェで夕食をとる。明日から Anglo-saxon の世界に移る。アメリカン・ミュージックも懐かしく感じられた。食事の後、すぐ近くにあったジャズクラブ Le Baiser Salé に入り、Afro-Jazz を聞きながら、不思議な、刺激的な出会いの多かったパリ滞在を締めくくるにふさわしい最後の夜を反芻していた。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 旅のメカニズム、あるいは吉... | トップ | COURTAULD INSTITUTE OF ART ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

パリ・イギリス滞在」カテゴリの最新記事