フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

「熱狂の日」音楽祭での出会い RENCONTRES A LA FOLLE JOURNEE

2006-05-04 12:18:10 | MUSIQUE、JAZZ

快晴の昨日、「熱狂の日」 に参加するためお昼前から出かける。最初のコンサートが始まる2時前まで、外を歩き回り雰囲気を味わう。どこか人工的な感じが付きまとう。会場にある唯一の喫煙場所といわれるところに近づくと、フランス語が聞こえる。7-8人が輪になってタバコや葉巻を口にしながら話し込んでいる。このお祭りがフランス製であることを思い出す。早速、いつもの癖が出て話に加わる。

聞いてみると、何とナントからお客様。そこに加わっているのが、タバコを持ったピアニストのボリス・ベレゾフスキー (本日の写真、右端)。掌が柔らかく肉厚で、指がものすごく太く感じる。やわらかい握手であった。完売であることは知っているのだが、これからのコンサートの予定を聞く。毎日2回ほどあると笑っていた。気取りのない、大きな人柄を感じる。

その後、ナントで会計事務所を経営しているというフィリップさん (写真右から2人目) と彼の娘さん (写真右から3人目) と話し込む。まず、ナントの音楽祭のこと、日本での経過などを含めて説明される。この音楽祭のオーガナイザー organisateur であるルネ・マルタン René Martin のお友達とのこと。その上で、日本にこれほどクラシック・ファンがいるとは思わなかったという。日本人のどこにクラシック音楽を愛する心があるのか、と聞いてきた。こういう話を聞くと、彼らの頭にある日本のイメージがぼんやり浮かんでくる。おそらく、歴史の長い、文化に溢れた環境に過ごしているので美しいものや古いものに対する目のある人が多いのではないか、フランスにも繋がるものが沢山あるような気がする、と答えておいた。その拙い説明に彼は納得しているような感じであった。

ナントを知っているかと聞かれ、唯一知っているのはバルバラの "NANTES" 「ナントに降る雨」 だけだと答えると、彼女はエディット・ピアフとともにクラシックのマリア・カラス級の大歌手だという評価であった。意見がよく合う。そんな話をしている時に英語で話しかけてきた日本人がいる。顔を見るが、よくわからない。非常に長く感じたがおそらく数秒だろうか、彼が学生オーケストラでオーボエをやっていたS氏であることが判明。それから同じくトランペットのY氏も加わった。こちらも別人になっている。

チケットが手に入ったのは、以下の3つのコンサート。

1)モーツァルト:交響曲第39番 変ホ長調 K.543
  モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 K.219「トルコ風」
  バイオリン:山田晃子

2)モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
  モーツァルト:協奏交響曲 変ホ長調 K.297-b

3)モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
  オリジナル版とジュスマイヤー版
  指揮者:ミシェル・コルボ

いずれも5000人が入るというホールA。最初は2階席の後ろ、2回目は1階席の屋根の下、最後にその屋根の下から出ることができた。それにしても、2階席には音がほとんど届かない。1階席の空間に浮かんでいる音を2階から掬い上げているといった印象。別のところでやっているコンサートを眺めていると言ってもよいかもしれない。バイオリンもか細い絹のような音。このくらいの編成ではもっと小さな会場でなければ、という思いを禁じえなかった。その昔ニューヨークのアベリー・フィッシャー・ホールの最前列で聞いた、ピンカス・ズーカーマン Pinchas Zukerman (16 juillet 1948 - ) の荒々しくも太い雑音といってもよい音を思い出していた (それはそれで満たされなかったが)。最後のコンサートでは少しは近いものを感じたが、ついに音に包まれるという感覚には至らなかった。

休憩では、ハープの吉野直子さんが近くのテーブルで破顔談笑中。活力に溢れている様子が感じ取れる。友人と最近の状況、特に現象学に纏わることなどを話す。カンディンスキー Wassily Kandinsky (Moscou, 4 décembre 1866 - Neuilly-sur-Seine, 13 décembre 1944) の話になった時、カンディンスキーの孫?にあたるミハイルがピアニストで、日本人と結婚して日本に住んでいることをY氏が教えてくれる。ワインの影響でなければ、いずれコンサートのお知らせでも届くだろう。

それから堀米ゆずこさんも話題になった。久しぶりに名前を聞き、懐かしさがこみ上げた。彼女はわれわれの学生時代、輝いた存在に写った。S氏がブリュッセルを訪れた時、カフェで完璧なフランス語で友人と話しているのを目撃したようだ。また彼女の叔父、堀米庸三 (1913 大正2 - 1975 昭和50) も学生時代によく名前を聞いた歴史学者であったが、彼が中世の専門家であることをY氏の発言で思い出し、最近中世にも興味が出てきているのでいずれ彼の著作にも触れてみようかという気になっていた。

最後のレクイエムはよかった。ミシェル・コルボ Michel Corboz (14 février 1934 - ) が地元ローザンヌで育て上げた合唱団もソプラノの谷村由美子さんも、トロンボーンも。経歴を見るとコルボは今年で72歳。最後まで現役でやっていける芸術家を羨ましくも感じる。

長い一日ではあったが、モーツアルトに引き合わされるような思いもよらぬ出会いを反芻しながら会場を後にした。

(version française et quelques photos)


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2006-05-30 ミハイル・カンディンスキーを聞く ECOUTER MIKHAIL KANDINSKY
2006-06-14 ミハイル・カンディンスキーさんのサイト SITE DE MIKHAIL KANDINSKY

コメント (4)
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