フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

ミハイル・カンディンスキーを聞く ECOUTER MIKHAIL KANDINSKY

2006-05-30 00:12:55 | MUSIQUE、JAZZ

先日の 「熱狂の日」 音楽祭で話題に上がったミハイル・カンディンスキーさん Mikhail Kandinsky (1973- ) が日立交響楽団のコンサートに出るという連絡がY氏から入り、日立市まで出かける。ミハイルは、このところ思いを馳せていたワシリー・カンディンスキーの家系で、モスクワ音楽院、ロンドンの王立音楽院で学んだピアニスト。ロンドンで出会った日本女性と結婚して2001年から日本に住んでいるという。

この日のコンサートは、ラフマニノフのピアノ・コンチェルト第3番。長身で細身の彼は、礼儀正しい几帳面なお辞儀をしてピアノに向かう。このようなお辞儀は日本の日常ではもちろん、コンサートでも見掛けたことがない。昔の日本の家にいるような気分にさせられる。

音楽的なことはわからないのだが、演奏する姿勢から感じるものはたくさんあった。まず体の派手な動きや表情の変化がほとんどない。自らの内なる世界との対話を楽しむかのように、淡々と弾いている。何事もないような穏やかな表情で。気負いや衒い、コマーシャリズムに乗ろうなどという色気など微塵も感じさせない。とにかくラフマニノフの音楽に打ち込んでいるだけという印象を受けた。そこにワシリー・カンディンスキーの 「内なる迸りなしには芸術は成り立たない。それこそが重要なのだ。」 という声が聞こえてくるようだ。

この曲はロシアの自然を思い浮かべて演奏するように、とミハイルさんは団員に話したそうだ。ロシアの自然にはまだ触れたことがないので何ともいえないが、うねるような音の流れの中にラフマニノフの特徴的な旋律も聞くことができた。

日本的な儀礼を日本人以上に身につけているせいか、最後の指揮者との挨拶では頭をごつんとぶつけ合っていた。額が赤くなっているのがオペラグラスではっきり見えた。その後拍手に答えてアンコールを2曲も弾いてくれた。残念ながら私には曲目まではわからなかったが、自然に出てくるサービス精神のようなものを感じ、ありがたく鑑賞させていただいた。

ミハイルさんはまだ30代前半である。これからゆったりと熟成して大成してほしいものである。演奏する姿を見ていると求道的なところも感じることができ、その継続が何かを生み出しそうな気がしてくる。今回の出会いは、元を辿るとLigueaさんが引き合わせてくれたようなものであるが、心が洗われるようなものになった。

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(version française)

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